エールの想い
「そういえばさ、フォレン」
後ろから声を掛けてきたので少し驚きつつもゆっくりふりかえる。
そして今、俺は丁度このエール武具店でバイト中なのだが、今日は北門攻略会議が行なわれているので全く客は来ていない。なので基本的に話しかけてくるのは雇い主であり、この店のオーナーであるエール=エストハイムだけにかぎられていた。
「どうしたんですか?」
俺はそう尋ねると今日の雇い主は神妙そうな顔でこちらを覗いてきた。
「あの…フォレンさ…えっと、その…」
その顔にはあきらかに迷っている時の顔だった。
「エール、どうしたんだ?」
と声を掛けても返事は返ってこない。
「魔導師認定会で使ったあの魔法…」
突然、いつものエールは出さないようなテンションだった。
「どうしたんです、エールさん、元気出しましょうよ!」
俺はそう声をかけるがエールの顔にかかった不穏な空気は一向に晴れる気配がない。
「あのね、フォレン、話を聞いて…」
ますます空気は重くなっていくがエールは話すのを止めようとしない。
「魔導師認定会で使ったあの魔法、あれは精製魔法っていうの。古代西方に伝わる古代魔法の一つ。当然難易度ランクはSに分類されてるんだ… でもあの時私は見てて怖かった。フォレンが魔力を抑えきれなくて自己破滅しちゃうんじゃないかって…」
店の中にはか細く、少し潤った声が響いていた。
「あの時のフォレンは……ううん…きっとフォレンはこの後もあの魔法を使う時が来ると思う、けど一つだけお願いして…」
エールの俯向きかけだったその顔は今、真っ向に俺の顔を見つめている。その顔は紅葉のように赤くなって、頬には目元からの一筋の跡が残っていた
「絶対、無茶はしないで…魔法は心弱き者を取り込む…だから、お願い、必ず毎日元気に帰ってきて……」
彼女はそう呟くとその顔をこちらの胸にうずめてきた。
「ごめん、フォレン…ちょっとこのままで居させて…」
「ごめんなさい、エールさん、心配かけて…でも約束するよ、俺は絶対に笑顔で帰って来るって」
俺はただ一人今、俺の胸に顔をうずめている彼女にだけ聞こえるように呟くと、その頭にそっと手を乗せ、撫でるようにあやした。
こんにちは、遊星歯車です。
最近外に出る時間が多くなって暑さをしみじみと体感します。
私事ですが、この小説を書くときは大抵ゲームミュージックを聴きながら書いてます。今回の話は「good-bye my earth」を聴きながら書いてました。曲の雰囲気と文章の雰囲気は全く一致しませんね(笑)
それでは、また次回




