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真夏の蜃気楼  作者: HAL10
2/6

少年はまだ帰らない

遠くで蝉の声がかすかに聞こえる────


照りつける暑さに俺は目を覚ました。

「あ、あれ?」

そこは見たことのあるような住宅街だった。

空からは太陽が照りつけており、俺は汗だくになっていた。どうやら道の真ん中で眠っていたらしい。


どういうことだ?俺は死んだんじゃないのか?

こんな普通の街が天国なのだろうか。


だが、あることに気づく。

俺は目を疑った。

なぜなら自分の服装はそれまでのものとは近い、

まるで…いや、確実に中学の制服だった。

横腹にナイフの跡は無く、

そして何より、その倒れていた場所。

それが、実家近くの良く知っている道だったのだ。


俺は一人で都会に出た。かなり安いアパートを買って住んでいた。

ナイフで刺された場所も住んでいた所の近くだ。

だから、こんなところにいるはずがない。

それになぜ制服…

状況が全く掴めていなかったが、すぐそばに放られたカバンを手繰り寄せ、開いた。

そこには教科書の類がズラリ。

と、その中のクリアファイルが目に付いた。

その中には手紙やプリントが入っていて、

俺はそのいくつかを引っ張り出した。


それは、家庭訪問の確認の手紙だった。

それはともかく、渡された日にちであろう日付が

右上に書いてあり、俺はそれを見た。


平成26年 7月10日


それは俺がちょうど中二の頃の年だった。

まさか、とは思っていたがそれと同時に

ある考えが頭をよぎった。


手紙をしまい、少し歩いた所にあるコンビニに入ってトイレにいき、鏡を見た。

そこには、それまで酒を飲んだくれていた小汚い男の姿はなく、

全てが楽しかったあの頃の少年が驚きの表情を浮かべて立っていた。


タイムスリップ。

あったら面白いかもとは思っていたけど、

そんなものを心から信じてはいなかった。

だけど、俺はそのタイムスリップとやらを

体験しているみたいだ。

そう割り切れる話ではなく、俺はトイレを出た。

ポケットになぜか200円があったので、三ツ矢サイダーを買って外に出た。


よほど喉が乾いていたらしくあっという間に中身はからになってしまった。

店を出る前に見た時計は6時くらいを指していた。

外はまだ十分明るかったが、

家に帰ろうと思った。

学校帰りだったらしかったし、ただ単に

帰りたかった。


家までの道。

知っている道の筈なのにそれはどこか遠く、

まるで別の世界のように思えた。

懐かしいのに、本当に懐かしいのに。

大人になった世界ではマンションなんかが建った所も空き地だらけだった。

無くなった公園もしっかり残っていた。

全ての時間が巻き戻ったんだと、

何度も何度も確かめた。

それと同時に、この記憶だけが未来のものということが嫌に気味悪い感じがした。


家の前に着く。

心臓が激しく高鳴る。

俺は少し深呼吸した後、玄関の扉を開いた。



「ただいま。」



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