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【日給5万】番長の俺、生徒会長に雇われて異世界ダンジョンへ行くことになった  作者: 竹屋 兼衛門


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第六話:休憩所

主道。


軍が管理する、

ダンジョン内部の軍用道路だ。


生徒会長は歩きながら、

右側の通路を指差した。


「このまま真っ直ぐ行くと、

 ゴブリンの養殖場と第二階層への門があるわ」


その先は、

暗闇の奥まで長く続いている。


「待て待て」


俺は思わず足を止めた。


「さらっと流せねぇ情報を、

 二つも出すんじゃねぇよ」


生徒会長は楽しそうに笑う。


「まあ、見ることないわ」


そのまま先へ歩き出した。


「途中の支道を通って、

 第二階層へ行くから」


「おい。

 俺が前を歩くって言っただろうが」


俺は小走りで追い抜き、

先頭へ出る。


そのまま歩きながら、

さっきの話を問いただした。


「まず、

 ゴブリンの養殖場って何だよ」


「軍人さんのレベル上げ用よ」


「……は?」


生徒会長は平然としている。


「新人兵士の訓練用として――

 軍で飼育してるのよ」


……じゃあ、

俺が最初に殺したゴブリンは、

脱走した奴だったのか?


「そんな事してんのかよ……」


背筋が、ぞわっとした。


「世界中、

 どこの国でも似たような事はしてるそうよ」


世界規模。


そこまで聞くと、

冗談には思えなくなってくる。


強い兵士を育てるため。


そう考えれば、

合理的なのかもしれない。


……気味は悪いが。


「じゃあ、

 第二階層への門ってのは?」


「下層から強いモンスターが上がって来ないようにする防壁ね」


「そんなヤバい奴が居るのかよ」


「ゴブリン程度なら、

 餌にされるだけの相手ね」


さらっと言う。


つまり、

ゴブリンの群れを餌に出来るような奴らが、

下には居るって事か。


「つまり、

 下層ではもっと強いモンスターを飼育してるって事」


「おいおい……

 そんな場所へ行って大丈夫なのかよ」


「あら?」


生徒会長はくすりと笑う。


「ビビっちゃった?

 番長なのに?」


「はっ?

 ビビってねぇし」


俺は鼻を鳴らす。


「俺は雇い主の心配してんだよ」


生徒会長は少し目を丸くしたあと、

肩をすくめた。


「それなら平気よ。

 今回はアナタのパワーレベリングだから」


「……日本語で言え」


「簡単に言うと、

 アナタを強くするってこと」


俺じゃ護衛するのに力不足って事か?


そう聞きかけたが、

飲み込んだ。


日給五万。


それだけ払ってくれてるんだ。


文句を言う筋合いはない。


◆ダンジョン第一階層・休憩所


それから三十分ほど歩くと、

前方に建物が見えてきた。


「おい。

 アレ何だ?」


「休憩所ね」


「休憩所ぉ?」


ダンジョンに?


生徒会長は呆れたようにため息を吐く。


「軍が管理してるんだから、

 そのくらいあるでしょ」


まあ、

言われてみればそうだ。


近づいてみると、妙に見覚えがある簡素な施設だった。


道の脇にはタンクに繋がれた蛇口。


隣には小さなトイレ。


それだけ。


まるで建築現場のトイレと水飲み場のようだ。


「……人、居ないよな?」


軍人に見つかったら面倒なはずだ。


「ええ、無人よ」


生徒会長は軽く手を振る。


「トイレと水飲み場があるだけの、

 簡易施設だから」


そう言うと、

生徒会長はトイレの方を指差した。


「私、

 トイレ行きたいんだけど」


「お、お前……

 そういう事さらっと言うなよ」


「何よ」


生徒会長は不満そうだ。


「ダンジョンで私を守るのが、

 アナタの仕事でしょ?」


……それはそうだ。


「こういう時こそ、

 ちゃんと護衛しなさい」


「くっ……」


反論できねぇ。


生徒会長は楽しそうに笑った。


「そもそも、

 ダンジョンなら普通にある事よ?」


「あー分かった分かった。

 早く行ってこい」


「ふふふ。

 これ、お互い様だからね」


「はいはい」


……そうか。


つまり、

俺がトイレに行く時は、

こいつが警戒するって事か。


こんな事で、

この仕事を受けた事を後悔するとは思わなかった。


……。


生徒会長がトイレへ入っている間、

俺は周囲を見回す。


そこで、

妙な箱が目に入った。


足の付いた金属箱。


開けてみると、

中には缶詰が入っていた。


魚肉缶。


鶏肉缶。


配給飯しか知らない俺には、

それだけで宝箱みたいに見えた。


軍用食料だろうか。


腹の奥が、きゅうっと鳴る。


俺が缶詰を手に取り眺めていると――


「ダメよ」


背後から声が飛んだ。


「うおっ!?」


情けない声が出た。


いつの間にか、

生徒会長が戻ってきていた。


「こういうのって、

 ちゃんと数が管理されてるの」


生徒会長は俺の手元を見る。


「減ったら、

 すぐバレるわよ」


「べ、別に盗ろうとしてねぇし」


……ちょっと怪しかったけど。


生徒会長は、

俺の顔を見て小さく笑った。


「なら良いわ」


そう言って、

また先へ歩き出す。


俺は缶詰を箱へ戻しながら、

小さく息を吐いた。


……危なかった。


もう少し腹が減ってたら、

多分持って行ってた。

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