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勇者です。冒険者ギルドの場所が知りたいです


『リリルの街』


 入り口前の看板には大きくそう書かれていた。

 『はじまりの街』こと『リリルの街』は小さいながらも城壁に囲まれた城塞都市である。


 北側には俺たちが出会った空の洞窟がある小さな森。

 東側と西側には大きな街道があり、商人や旅人が来るのでそこそこ賑わいのある街だ。


「城塞都市ってもっと入るの厳しいと思ったんだけどなぁ」


 『リリルの街』に入るのにボディチェックもなければ許可証とかも不要だった。

 門番が俺たちの恰好をみて『よし』というだけ。ホントに大丈夫かこの街。


「ここは『はじまりの街』。来るものも出るものも拒まず、ゆるーい街なのよ」

「にしても緩すぎないか? 俺たちの前にいた奴なんて明らかにカタギじゃない人相してたのに普通に通れてたぜ」

「あんたねぇ、冒険者になりたいって人にマトモな人がいると思うわけ?」

「……さ、さいですか」


 たしかにそうだ。

 一部の有名冒険者ならいざ知らず、底辺冒険者はなんというか結構アレな人が多い。

 俺の村に来る冒険者は大体、キラキラしたいい奴ばっかだったから忘れてたぜ。


「よし、じゃあ。俺も冒険者登録するかな」

「なに言ってるの。まずは腹ごしらえに装備を整えて宿を探して寝て、明日から頑張る……でしょ」

「いやいやなんだよそのダメな人な発想は。それに俺の所持品、このサビた棒と服だけだよ。腹ごしらえも装備も宿もお金がなければ何もできないよ」


 俺を勇者に選ぶ前にせめて、家で準備くらいさせてほしかったよ。

 貧乏だけど、無一文ってわけじゃなかったし。村にいるひざに矢を受けて冒険者を引退したおっちゃんに頼めば剣の1本くらい融通してもらえそうだし。


「甲斐性なしねハヤトは。ま、仕方ないわね……まずは冒険者ギルドに行きましょうか」

「冒険者ギルド?」


 はて? なんのことだ?

 疑問に思っていると冒険者についてさっぱりな俺にラピスが説明してくれた。


 冒険者を管理するためのギルドで登録しないと冒険者として認められないらしい。

 あと、登録することによっていろんな恩恵を受けたりすることもできる。


 冒険者ギルドってすごいな。


「さっそく行くわよ」

「よし、ようやく冒険者らしくなってきたな」

「冒険者じゃなくて勇者よ、勇者。私の勇者ならもっと自信もって勇者って言いなさい」


 と言われても俺が勇者なんて実感なんて全然ない。

 俺が勇者ならもっとチートな能力とか武器とかくれよ。


「挙げたじゃない聖剣」

「いや、これただの鉄の棒でしょ! しかもサビてるよ!」


 お金さえ手に入ればこの棒ともおさらばなのになぁ。

 道で手ごろな木の棒でも拾うべきだったかな?

 ラピスは「私があげたんだから十分でしょ」とか言ってるけど、不安しかないよ。


 まぁ、サビていても鉄の棒であることは間違いないのでスライム潰すのにはことかかない。

 当分はこいつで頑張るしかないな。

 そう、もう何度ついたかわからないため息をこぼした。


「んで、その冒険者ギルドってのはどこにあるんだ」


 この街は意外と広い。俺が住んでいた田舎村より数倍以上の広さはありそうだ。

 そんなところに迷子スキル保有者であるラピスとこのあたりの地理なんてまったく知らない俺。

 前途多難だよ。


「さぁ?」

「いやいや、地図まで用意しといてそれかよ」

「地図っていうけどコレ、世界地図よ。ワールドマップ」

「だとしてもこの街の冒険者ギルドの場所くらい調べとけよ」


 ったく、なんでこんなにこの大精霊様は無能なんだ。

 迷子になるわ、聖剣がサビた棒だったり……俺が冒険者だったらもう見捨ててるぜ。


「聞こえてるわよ。無能で悪かったわね無能で」


 俺の心の声を読み取ったらしいラピスはぶすっとふてくされる。

 黙っていれば美少女なんだよなこいつ。


「仕方ない。とりあえずはその辺の人に聞いてみるか」




「おーい、ちょっといいかな」


 入口でいかにも案内してくれそうな若者がいたので声をかけてみる。

 レッツコミュニケーションだ。


「うっせぇ! ぶっ殺すぞ!」

「WHY!?」


 ブチ切れながら、門前払い。トカイ怖い。


「何やってんのよあんたは」

「だって……ウチの村だったら普通に答えてくれるし」

「いや、あんたの村だからでしょ」

「でも元冒険者でひざが悪いおっちゃんが。街の入り口にいる奴はだいたい案内してくれるって言ってたんだ」

「それなら、あんたの頼み方が悪いのね。いいわ、私がやってあげる」


 おっ。それならもしかしたら成功率高いかも。

 ラピスの見た目は美少女だ。

 美少女なら答えてくれるはず。


「ちょっと、そこのあんた」

「……」

「あんたよ、あんた。道案内してくれない? 私この街はじめてなのよ」

「うっせぇブス! イネやゴラァ!」

「NOOO!」


 ダメだったか。


「びえ、ぐっすん。トカイ怖い」


 しかし、ラピスを見てブスとは……あの兄ちゃん何者?


「よし、こうなったら拝み倒すしかないな」


 レッツトライ!


「あのぅ」

「……」

「お忙しいと存じ上げますが少しお時間よろしいでしょうか」


 村長のおかげで敬語もバッチしだぜ。

 

「わたくし、不肖ながら冒険者を目指しておりまして、冒険者ギルドを探しているところなんです。よろしければ場所をご教授していただけないでしょうか」

「……」


 なっ……無視だとっ!?

 俺の渾身の低姿勢アタックが無視だとぉ!?

 もうこうなったらあの技を繰り出すしかないな。


「ハヤト……あんたまさか」


 どうやら、ラピスもこの技をご存じみたいだ。

 村にやってきた冒険者から教わった極東に伝わる秘奥義。

 

 いざ――


「迷子なんです! 道を教えてください!」


 DO・GE・ZA。

 地面に額をこすりつけ全面降伏する技だ。

 熱した鉄板の上で行うのが最も美徳とされているが、事前準備のないこの場ではこれしかできない。


「んー、おぃい! お前らがうるさいせいで負けちまったじゃねーか! って何やってんだあんた」


 若者がキョトンとした顔で俺をみていた。

 え? なにどゆこと?

 急に態度が変わった若者を見上げながら俺はハテナマークを浮かべた。

 

 

 

 どうやら、若者は冒険者カードで賭けをしていたらしい。

 仕組みはよくわからないが冒険者ギルドで発行される冒険者カードには身分を証明したりする以外にもいろいろ機能があるらしい。

 あ、若者は意外と親切な人だった。賭け事をしているときは人が変わってしまうそうだが普段はいい人みたいだ。


 冒険者カードの機能についても教えてくれたし、冒険者ギルドの場所も教えてもらった。


 よし、これで……冒険者になれる。

 若者と別れた俺とラピスは冒険者ギルドの門をくぐった。

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