私はここで生きていきます
「おめでとう!君は自由市民として生きることを許可されました。」
「その奴隷解放宣言みたいなの止めて。」
サフランイエローの髪をした外見だけ若い男は両眉を上げると、本当に適当なしぐさで私に向かって証明書を投げつけた。
「うわ!これって大事なものなんでしょう!」
バラバラっと何枚もあるうちの何枚かが私の手から零れ落ち、私はサマエルを罵りながら拾い上げた。
「あれ、まだ結婚していないけど苗字はグレインはいいとして、この区分が女王って何それ。ふざけているの?」
「え、女王様だし。これから再生されるシルフィードの民はグレイン馬鹿局長の管理星に収容でしょう。君はそこの管理者になるの。」
「えぇ。勝手に仕事を決めるなよ。私は昔の女だからさ、新婚さんでハードワーカーしたくない。」
「俺が決めたんじゃないよ。決めたのはローブを羽織るようになった君の旦那。いつも君と一緒にいたいのだってさ。ちょっと重たいけどね、服を着ることを覚えたなんて部下としてうれしいからさ、言う事を聞いてあげて。そして、次はパンツこそ履かせてくれ。」
私は贈り物としてエセルにローブを作って渡した。
彼はローブの適当な所に小さくアザミや四葉のクローバーなどを刺繍してあることに気が付くと大いに喜び、完全全裸の時間が少なくなってもいる。
昨日などは、お疲れさまって上着を脱がしてあげる奥さんに憧れていたんだ、とエセルに言ったら、夜になってからスーツを着てソファに座っていた。
サマエルの言う通り、彼はパンツと一緒に脳みそを捨てて来たのかもしれない。
「ねぇ、そういえば、あなたは知っている?」
「何が?」
「一つだけ思い出せないの。彼が私に杖を渡してくれたって言ったけれど、彼は見習いで杖のないドルイドだったし、今だって杖を持たない人だし。」
サマエルは肩を竦めると、居間にある大きな本棚から適当な分厚い本を取り出して私に手渡した。
「開いて見て。」
訝しがりながらも適当に開くと、ページの隅に猫が転がったりしている絵が描かれていた。
彼は大した画伯になっていたのだ。
「パラパラ漫画だ。この猫ちゃんがミミだったのかしら。」
「え、猫も犬もアヒルのヒナも、全部ミミだよ。」
「そう。子供が出来たら私が名前を考えることにする。」
「うん、俺もそう思うから頑張って。桜原咲里さん。ほーんと、どこからミミだったんだろうね。いいの?あんなおバカさんで。」
「いいの。私も彼も愛し合っているのだから。」
結局妖精の女王になった私ならば、ドルイドと永劫の時間を歩いて行けるのかもしれないし。




