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どうやら裸族の男に召喚されたようです  作者: 蔵前


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おまけ 丸裸の男が逮捕されない理由設定

「どうして人様のイベントごとを台無しにするかな。」


 私は金髪の外見だけ若い男に小声で文句を言った。


 しかし、サマエルは私が彼に対して不信や悪意を抱く事に関しては、コバエが飛んでいるぐらいな物らしく、軽く鼻を鳴らしただけで私の淹れた茶を上品なしぐさで口に運んだ。

 私はそんな彼にいまいましいと、お茶うけに出してあったエセル特製のエビせんべいを掴むと、一気にむしゃむしゃと齧りだした。


 エセルは自分が探していたクッキーがただのせんべいという日本のお菓子だと知るや自分で作り出し、さらにそれらを彼の持っている食品会社の一つに開発もさせて市場に売り出して大金を稼いでいる。


 区分が女王という名ばかりの私と違い、彼はこの世界の云たら支局長に昇りつめるだけの男であったようなのだ。


 愛した男が大金持ちの男性だった。


 なんだか、美女と野獣の野獣バージョンにこそ惚れたのに、勝手に王子様に変化してしまわれた時のヒロインになったような気持ちだ。

 だからこそ、誰かに自分の鬱憤をぶつけたいのかもしれない。


「あぁ、もう。あの身分証明書がグレイン苗字だったってとこで私は気付くべきだった。私達が既に結婚してしまっているってことにね。」


「おや、いやなの?愛し合っているのでしょう。」


「ふ、た、り、で、決めた日に、ふ、た、り、で、登録に行くってイベントは大事じゃないの?二人で決めた日に新たな門出の一歩を踏み出すのよ。」


 サマエルがメンドクサイ女と呟いた気もするが、ここで怒りのまま大声で彼を怒鳴りつけたくはない。

 私の怒りを聞きつけた秘書がエセルに連絡を入れて、エセルが私の部署に駆け付けたらもっと面倒だ。

 この支局で一番偉い彼は、公私混同を積極的に自分に奨励している。

 そのことを誰よりも知っている目の前の男は、私が大声を出せないと知っているからか、勝利感にあふれた顔で歌うようにして私に言い聞かせてきた。


「ま、る、だ、し、の男を市庁舎に入れたくないという、市庁舎で働く人々の希望を俺は優先しただけだよ。」


「丸出しではありませんでした!ちゃんと、エセルはスーツを着ていました!」


 あ、ちょっと大声が出てしまった。


 だって、私はこの日の為に総レースの白いスーツを作り、小さなブーケまでも持ち、そして、そんな私の隣に立ってくれたエセルだって、私の為に新しく買った灰色のスーツを着てくれたのだ。

 筋肉質だが太くはないすらっとした彼には固い生地のスーツはとても似合い、私は彼という人物を知らなくても一目で恋に落ちただろう姿だったのだ。


 まぁ、あのボロボロローブ姿の時も見惚れたくらいのいい男だ。


 全裸で床でゴロゴロしていても、可愛いと思ってしまう自分もいるのだから、スーツは彼の魅力には必要ないのかもしれないが。


 でも、世界中に見せびらかしたくなるほどに、彼は本当に素敵だったのだ。


「わぉ、凄い。でもね、君が自由市民になる手っ取り早い方法がそれだったのだから仕方が無いでしょう。シルフィード民を保護居留地に押し込めるって話になったら、それこそ君達は結婚どころじゃ無くなるよ。」


「正論はわかっているわよ。」


 サマエルが動いてくれたおかげで私はエセルと結婚できたのだし、私という実例が出来た事で、今後再生されるシルフィードの民達と現在の人間達との自由恋愛や結婚が成立することが出来るというのだ。

 シルフィード号解放に必死だったのは、少ない人間で繁殖したがために同じ遺伝子が重なってしまったという現在の状況の打破が目的だった。


 にもかかわらず、遺伝子操作された人間と機械による再生だろうが人間そのものの遺伝子を持つ者同士のブリードを認めて良いものだろうかという議論が起こりかけたのだそうだ。


 このまま死んだ人間を再生だけして、偶然による子供の誕生を望んではどうだろうか、というシルフィードの存在無意味な議論だ。


 しかし、サマエルの勝手ともいえる私とエセルの結婚が、その議論をすること自体無意味な状況にしてしまったとそういう事だ。


「そう。わかっているのよ。あなたが正しいって。でも、……。」


「いいじゃない。俺なんてグレインのせいであいつが生きている限り延々と再生させられる上に、息子や孫にも会えない身の上なんだよ。大体さ、俺の死亡原因があいつなんだからね。これぐらいの嫌がらせぐらい流しなさいよ。」


「やっぱり、嫌がらせもあったのか!」


 私はとうとう大声を出してしまっていた。


 この世界が機械で死んだ人間を再生できるにもかかわらず、死んだ人間を召喚士でもって召喚しようとした理由は、再生された人間が死んだばかりの人格では無く、大昔の前世の記憶を持つ別人が多く生まれたからだ。


 そして、エセルはもちろんそうであるのだが、前世の記憶を持つ人達は前世の記憶通りの生活スタイルに固執するらしい。


 そこで、この世界の知識階層の人達は、失われた地球の思い出をそういった人達の存在で保とうと考えたらしいのだ。


 彼らを現在の人々の社会生活に無理やりになじませるのではなく、現在の人々が彼らになじむという生活様式へのチェンジである。


 つまり、何が言いたいのかと言えば、前世の記憶を持つ人のその時代が石器時代だったり古代だったりした場合、エセルのような丸出しで外を歩いてしまうだろうが、彼らが公然わいせつで逮捕されることはないというルールだ。

 なんでも口利きが出来るサマエルは、実は最初に死んだ時は召喚獣管理局を立ち上げた伝説の長官様だったのだとエセルに聞いた。

 そんな伝説の彼は、召喚士であるエセルを部下にした時に、エセルの破天荒な行動と丸出しのせいで胃潰瘍を患って死んだのだという。


「わぁ、ロ―グ!来ていたんだ!今夜は我が家に泊ってくれ!」


 やっぱりエセルは呼び出されていたようだが、彼は今や裸族ではない。

 私が他の女達に、この素晴らしい男の裸体を見せたいと望むだろうか。

 私は彼にそう伝え、彼は家以外では服を着ている。

 私の最高の召喚士は私だけのものなのだ。

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