夜の逃避行
夜は昼間よりも危険度が高かった。
大きな薪が燃える事で煌々と灯り、兵士達は昼間の倍に見える程の数である。
いや、昼間よりは少ないが、彼らの障害物にも成り得る石を積む人達がいなくなったがために、兵士の機動性が高くなった気がするのだ。
「数は減っている。俺が犬になって混乱させている間に。」
ぺちん。
私がファーディアの額を叩いた音だ。
「お前はいい加減に成長しろよ。」
一五五センチ無い私が育ち切った一八〇センチ以上の大男にいうセリフでは無いが、いい加減にファーディアの冗談にもならないセリフは聞き飽きた。
頭に来たので、とりあえず鞄からスマートフォンを取り出すと、乾電池式の充電器も取り出した。
そして、それを繋いで充電状態にしてからイヤホンのコードで離れ離れにならないように括り、それをファーディアに手渡した。
「どうした?これはなんだ?」
「妖精の国の最終兵器。」
「これをどうする?」
「これをあの一番大きな薪に投げ込んで。もし、爆発しなかったら、明日私達は別の方法を考える。爆発したら、混乱した隙をついてあの壁を走って突破する。私は走るのは得意だ。はぐれても目指す場所は一緒だ。だから、私達は一緒に走っている。いい?」
彼は私をぐっと引き寄せて、そしてなんと、私に口づけた。
それも、舌を入れてくる奴だ。
一瞬だけれども濃厚なキスで私を走れなくした男は、ローブを脱いで私に巻き付けると、私が言った通りに私のスマートフォンを薪へと投げ込んだ。
バシュウン!
大した爆発では無かったが、破片が近くにいた兵士の目に刺さったのか、彼は大きく叫び声をあげた。
兵士達は敵襲だと騒ぎ始め、だが、私の隣のファーディアは私のホイッスルを吹いて、大きく大きく長く長く辺りに煩い音を響かせた。
そして、第二の小爆発だ。
パアン!
私はファーディアのローブをはためかせながら走り出し、そして、なんと、途中でファーディアの背中に乗せ上げられたのだ。
「うわ。大きくなっている!」
ファーディの大きさはいつもの倍以上となっていた。
これならば逃げられる。
私は彼の背中にしがみ付いた。
ああ、なんて彼の背中は大きくてふわふわで、空を飛んでいるみたいに爽快なのだろう。
「ずっと一緒、ずっと一緒だね。」
私は彼の毛皮にしがみつき、彼は私を乗せて自由の地へとひたすらに走った。
私は友人でも彼の傍にずっといる。
彼に恋人が出来て私が邪魔になっても、私達は誓ったじゃないか!




