はじまりのおはなし
あるところに、じっけんじょうがありました。
ヒトのかたちをしていながら、ヒトとはちがうものをもつイキモノについてしらべる、じっけんじょうがありました。
そこでは、くにのいろんなばしょから、『ヒトのかたちをした別のイキモノ』があつめられ、いろいろなじっけんをされていました。
いたみのじっけん。イキモノのちからのじっけん。おくすりのじっけん。せんのうのじっけん。
いろいろなじっけんが、『イキモノ』にされてきました。
じっけんじょうにあつめられた『イキモノ』は、みんな子どもでした。
『イキモノ』はぜんぶで十体。
それぞれ、じっけんじょうに来たじゅんばんに、番号でよばれてました。
一番目は、ヒトを情慾にまどわすイキモノでした。
二番目は、ヒトを石にしてしまうイキモノでした。
三番目は、ヒトを意のままに操るイキモノでした。
四番目は、じざいに天候をかえるイキモノでした。
五番目は、じざいに地形をかえるイキモノでした。
六番目は、あらゆる才能をしょうかするイキモノでした。
七番目は、あらゆる怪我がすぐになおるイキモノでした。
八番目は、どんな影もかたちにかえれるイキモノでした。
九番目は、どんな物も壊すちからをもつイキモノでした。
十番目は、どんな嘘もホントにかなえるイキモノでした。
イキモノはその場所ではヒトではなく、『ひけんたい』としてあつかわれ、まいにちいたみをあたえられながら、そだてられました。
やがて大きくなったイキモノからじゅんばんに『おしごと』があたえられ、じっけんじょうにくる大人たちのためにりようされるようになりました。
イキモノはかたみをよせあい、力をあわせて、いたみとくるしみのなかでそだっていきました。
ある日、イキモノのうち一体がほかのイキモノをかばって、とてもひどいけがをしてしまいました。
しんでしまいそうなけがでした。
かばわれたイキモノが、そのばにいたイキモノがみているなかで、そのイキモノはみるみるうちにつめたくなっていきました。
イキモノをさした女がいいます。
「たかだか一人減るだけでしょ。さっさと片付けなさい」
女は、やってはいけないことをしてしまったのです。
よこたわるイキモノは、十体のイキモノのなかで一番やさしい子でした。
いつもほかのイキモノたちを大人たちからまもっていた、ゆうかんな子でした。
つめたいそのばしょで、ほかのイキモノたちにあたたかさをおしえてくれた子でした。
女は、やってはいけないことをしてしまったのです。
彼女は、そのイキモノたちのなかで、もっとも大切にされていた子を傷付けてしまったのです。
イキモノたちはかなしみました。
イキモノたちはなきました。
イキモノたちはぜつぼうしました。
イキモノたちはいかりました。
イキモノたちはにくしみをしりました。
そして――――イキモノたちはこわしたのです。
女を、じっけんじょうを、そこの大人たちを。
なにもかも、こわして、ころしたのです。
そのようすを、たまたまとおりかかった商人がみていました。
かんじょうのままに、力をふるうイキモノたちをみました。
これまでじっけんしてりようしてきたイキモノたちに、ふくしゅうされる大人たちを見ました。
そしてつめたくなったイキモノを見て、商人はこころのそこからわらったのです。
「嗚呼っ! なんて素晴らしきかな現世の、愛憎溢れるヒトの形と運命かな!
こんなに面白い因果応報は初めて見た!」
ヒトのなきがらをふみながらわらいころがる商人は、ヒトではありませんでした。
気がとおくなるほどのながい時をいきてきた商人は、イキモノたちがこれから先さらにおもしろいものを見せてくれるだろうとおもい、十体のイキモノたちをまとめてひきとることにしました。
ですがヒトではない商人は、十体のイキモノたちをそだてるにはのうりょくがたりませんでした。
そこで商人はイキモノたちをそだてるのうりょくがありそうなヒトを一人つれてきて、イキモノたちをそだてさせることにしたのです。
そのヒトがどのようにイキモノたちをそだてるのか。
それすらも、たのしみにしながら。
こうして、十体のイキモノたちは商人により『キョーダイ』となり。
つれてこられたヒトによって、『ヒト』としていきるほうほうをしっていくのでした。
――――これは原典に至る、とあるキョーダイの話。
<終>




