第3話 つぶやいた先の神様
線を越えたその船を、助けに向かう。
50トン近くありそうな、隣国の底引き網船の座礁。
船底から、もわっと海水が湧き出ている。
湧き出る海水は、中心から外へ、獲れた魚を蹴散らしていく。
乗組員は無事救助して本船へ。
残った私たちの乗る小型ボートを、底引き網船に横付けする。
頭の中をよぎる、怒号のような声。
「排水準備!」
1メートル四方にも満たない消防ポンプを乗り込ませた。
ホースを船底に投入。
そこから、ポンプでの排水任務へと切り替わる。
「できるわけないじゃないか。タンクの破損場所も確認できず、海水の浸水のほうが早いに決まっている」
頭の中で思うだけ。
揺れる船体、目に入る波しぶき。
足元も覚束ない。
「ポンプを起動せよ!」
逆らうわけにはゆくまい。
右手でスターターロープを引っ張り、始動を開始する。
ブルンッ……?
かからない。回らない。
何度やっても、かからない。
「撤収!」
上官の声が、荒波に揉みくちゃにされながらも聞き取れた。
「ポンプはこのままでいい、皆ボートへ!」
全員退避。
底引き網船から、10メートルも離れただろうか。
ブッシュー、チュドーン。
船首を天に向けて、ズブズブと沈んでゆく。
間一髪だった。
あのままだったら、船もろとも……。
上官も青ざめた顔で、
「いるのかな、神様とか」
とつぶやいている。
本船に着くと、皆が無事でよかったと迎えられた。
隣国の乗組員は、沈んでゆく船を見ながら、フ〜ッと息を吐いている。
よかった。
燃料コックを開けなくて。
【次回予告】第4話『卵泥棒』
次回は、のどかな村で起きた「たかが卵3個」の泥棒事件。しかし、一番怪しい男をかばう警察官。犯人は誰?




