第4話 卵泥棒
彼は「わからない」と答えた。
昔、生きている頃の爺さんから「『わからない』と答える人は正直で、いい人が多い」と耳にタコができるほど聞かされた。
3日前、署に電話が入った。
養鶏場のパークストンさんだ。
「どうしましたか!」
「卵が盗まれたんです!」
よくよく話を聞くと、卵が3個盗まれたのだと捲し立ててきた。
田舎だからそう大した事件ではないが……。
被害にあったパークストンさんの養鶏場の卵が、たしかに3個盗まれたのだ。
息子さんと奥さんがしっかりと数えていたと言うのだから、信憑性はある。
パークストンさんの近所への聞き込みを、イヤイヤながら始める。
皆が口を揃えて言うのは、「レイ」の仕業だと。
レイはその日、家にいなかった。
いつもは家でゲームをしたり、買ってきた酒に溺れていた。
よく泥酔して歩いていたり、庭の陰で用を足す姿を目撃されたことはある。
しかし、これといった証拠はない。
任意の質問をしてみた。
「3日前の朝、お前は家にいなかったな。どこにいたんだ?」
「わからない」
彼は正直で、いい人だ。
実際、3日前の朝に泥酔して道脇の庭に寝ているところを、私は見ている。
3日前の朝食は、私が作った。
婆さんと娘2人はハムエッグ、私と妻はハムだけ。
朝の巡回中にとってきたのだが、3個しっかり数えられているのは予想外だった。
この村の治安を守ってるんだ、たかが3個くらい。
婆さんや娘のためだから、いいようなものを。
レイは正直で、いい人だ。
【次回予告】第5話『ライオンの夢』
次回、いよいよラストです。
ベッドの上で静かに微笑み、まだ自分の「試合」を諦めていない老人。彼が見ている夢とは──。




