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嫌われ者の世界征服  作者: 芋けんぴん
レッツ、世界征服!
6/8

嫌われ令嬢は石に名前を付けるタイプ

「…こうして鳥は、愛しい人を、静かに見つめるのでした」


オーリア様がそれを最後に、口を閉ざすと、自然と拍手が沸き起こった。

中には涙をながしている人もいたが、それを大袈裟だと思わないくらいに、話はよくできていた。

オーリア様が語ったのは、人間に助けてもらった鳥が、その人に叶わぬ恋をする話だった。

鳥は助けてくれたお礼に、人間に密かに恩返しをする。

しかし、それを奇跡だとしか思わない人間と、何も報われない鳥。

また、種族の違いや、その人間にも好きな人がいたこと。

多くの障壁による痛々しく複雑な心理描写は繊細で、また、鳥視点から語られる空を飛ぶ描写は、目に浮かぶようだった。

特に、娯楽の少ないこの村の人々にとって、彼女の話は新鮮だっただろう。


…まあ、それはそれとして。

皆が感想を言いにオーリア様を取り囲む中に突っ込んで、僕はオーリア様の前に立った。


「おー…リオ様、少し、お時間をいただけますか?」


出来るだけ当たり障りのない笑顔を浮かべてそう言うと、オーリア様は表情を変えず、ただ首を縦に動かした。

相変わらず、何を考えているのか分からない人だ。





村から少し離れた場所に、僕と同じ背丈くらいの神をかたどった像がある。

村の人たちは、毎朝そこでお祈りをするのが日課だった。

そこには簡素な椅子もあり、それに座るよう促した。

地味なワンピースの上に、薄汚れたフードを被っているが、座る所作は綺麗で、とても旅人には見えない。


「…貴族の所作が滲み出ていますよ、オーリア様」


自分は気付いているぞ、という宣戦布告のようなものだった。

誤魔化すか、逃げるか、見逃すよう命乞いをするのか。

無意識に肩に力を入れて、オーリア様の言葉を待つ。

しかし思惑に反して、オーリア様は得意げな表情で言った。


「私が誰か、気付いたみたいだね」


最初から己の身分を隠すことなく、寧ろ誇らしげに言うものだから、ドン引きだ。

こちらとしては話が進めやすいだけなので有難いが、この先のこの人の人生が不安で仕方がない。


「…………少しは、誤魔化すとかしてくださいよ」

「だって、かっこいいじゃん」


同じセリフを、過去にも聞いたことがあった気がする。

彼女の美的感覚が一般よりずれていることは分かったが、今はそこを深堀りしている暇はない。

気になることが、多すぎる。


「数日前から、ここにいらっしゃるとの事だったんですけど、パーティー会場からどうやってここに?」


王都から遠く離れたところにあるここは、馬を使っても1週間はかかる。

しかし、追われている彼女が、馬を調達するなど難しいだろう。

…そもそも、この人は馬に乗れるのだろうか。

乗馬の授業で、オーリア様を見かけた記憶がない。


「風で、私をここまで運んでくれたの」

「…でも、貴女は魔力が無いはずでは?」

「うん、無いよ」


質問に答えるその顔は、嘘をついているようには見えない。

けれども、穏やかな声で告げられる言葉は、矛盾だらけだった。


「でも」


するとオーリア様は、自分の首元を漁った。


「オタがいる」


そう言いながら、彼女は僕にネックレスを見せつけた。

金で縁どられたイエローの石が、太陽の光に反射して、キラキラと輝いている。

…なるほど、この人は、石に名前をつけるタイプだったのか。


「…アンタ、もしかして今、オーリア様のこと、馬鹿にした?」

「いやいや、まさか…………は?」


普通に会話を続けてしまったが、すぐに違和感に気付いた。

オーリア様とは全く別の声が聞こえたのだ。

いやでも、そんなはず。

僕は恐る恐るオーリア様に問いかけた。


「…………さっきの、オーリア様が、言いました?」

「ううん。オタが言った」

「その、オタって…?」

「だから、アタシのことよ!この鈍感モブ!!」


キンキンとした高い声が、耳に響く。

今度はオーリア様が口を開いていないところを、しっかりと見た。

オーリア様が、落ち着いて、と石に語りかけているのを見て、僕は嫌でも悟ってしまった。


「石が、喋ってる…?」



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