慕われ殿下、苦悩する
「現在、捜索範囲を広げて活動を続けてますが、未だに行方を掴むどころか、手がかりもない状態っす」
「そうか…ありがとう、ミネフ」
トージャー皇太子殿下は、俺に力なく笑いかけてから、深いため息をついた。
ここのところ、殿下は浮かない顔をしていることが多い。
学園にいた頃は、忙しかったものの、その表情が曇ることはなかった。
人より体力のあった殿下は、病気をすることもなかったし、成績も上位で、学園の生徒たちからの信頼も厚かった。
しかし、卒業パーティの日を境に、状況は一変する。
全ては、彼の元婚約者、オーリア・カインノーラの逃亡が始まりだった。
魔力も体力もないはずのオーリアは一向に見つからず、捜索は難航。
貴族たちからは、何故令嬢1人に手こずっているのかと、避難の声が寄せられている。
また、オーリアがヒエナ様に対する嫌がらせを行った、というだけで幽閉までの重い罰を下すのは、私情によるものではないのかとも言われていた。
彼が今、どんなに酷い重圧に耐えていることも知らず。
「ミネフ、引き続き捜索を続けるように、騎士団長に伝えておいてくれないか?」
「了解っす…しっかし、なんで教皇様はオーリアをご所望なんすかね?」
言いながら、チラリと殿下を見ると、彼はまたため息を吐いた。
どうやら、知らされていないようだ。
「それを教えてくだされば、私だって苦労していない…ヒエナにだって、隠し事をしなくて済むというのに」
オーリアを幽閉することは、教皇の命令だった。
この国において、王族よりも権力を持つ教皇には、殿下でさえ、逆らえない。
どんなにこちらの意に沿わなくとも。
「…ヒエナは、どうしている?」
「専属のメイドによると、まだ塞ぎ込んでいるご様子だと。妃教育はお受けになっているようですが、それ以外は部屋に籠りっきりだそうで」
「そうか…」
彼の婚約者となったヒエナ様は、学園を殿下と共に卒業した後、王宮で暮らしていた。
しかし、殿下は今、ヒエナ様に避けられている。
学園にいた頃は、殿下とヒエナ様は仲が良かった。
しかし、卒業パーティーをきっかけに、ヒエナ様は殿下への信用を無くしてしまったらしい。
ヒエナ様は、我々が思った以上に、オーリアのことを大事に想っていたようだ。
学園の頃より、ヒエナ様を想っていた殿下は、一番それに堪えているようだった。
「ミネフ、こういう時は女性に、何て言ったらいいだろうか?お前、そういうの得意だろう?」
「そういうのは自分で考えるものっすよ、殿下」
言いながら片目をつぶって見せると、殿下は、その通りだな、と言って穏やかに笑った。




