2話『王太子の一言』
ー闇の月 水の日 2日
今日は急遽王太子によってお茶会が開かれることになった。
お茶会には若いご令嬢からその付き添いの夫人たち、それぞれがいろんな欲望を抱えながらそのお茶会に参加している。
私、カンディティーネ・ルアトアは公爵家の者として一人で参加することになった。
他の家族の人達の都合がつかなかったのだ。
私は園庭の隅っこのテーブルに座って花を眺めていた。
着々と集まってくる貴族たちを隅から観察しながら昨日の領民の言葉を思い出す。
『っ、もしかしてお貴族様ですか?なぜ私達などにお声がけを....実は、各地の領地が不作になってしまったんです、もしこのままの状況が続けば...』
そう、このまま不作が続けば病気になる人が増え、多くの国民の命に危険が訪れてしまうかもしれない。
どうにかこの問題を解決できないだろうか、と私が考えあぐねているところで王太子がやってきた。
王太子がやってくるとみんな立ち上がって礼をとった。
「面を上げよ」
そう言われて私は顔を上げた。
ブロンドの綺麗な髪に綺麗な青い瞳をした人がそこに立っていた。
...いつ見ても彫刻のように顔が整った人ね。
と私がそう思っていると彼はまた口を開いた。
「今回集まってもらったのは私の婚約者について、だ」
彼がそう言うと周りがざわついた。
王太子はまだ婚約者を決めていなかったのだ、辺りにいた貴族のご婦人たちが自分の娘を王家に嫁がせようと目を光らせて次の言葉を待っていた。
「私の婚約者は皆にも昨日伝えられた領地の不作問題を解決した者にする、今回はそれを伝えようと思った」
と彼が言うと周りはさらにざわめきだした。
「領地の不作問題なんて聖女様しかできないじゃないの」
「っ、ということは婚約者は聖女様に決まるということだわ」
「でも、聖女様と殿下ならお似合いだと思うわ」
「確かに、お似合いよね!いつも儚げな聖女様に完璧な王太子殿下、誰も文句は言えないわ」
と口々に勝手なことを言っているが私は完全に上の空だった。
なぜなら王太子が来た時も領地の不作問題の打開策を頭の中で考えていたから話すら聞いていなかったのだ。
はっと我に返るともう王太子はその場から去っていたので私は用もなくなったと思い、急いで家に帰る馬車に乗って家に帰った。
一方その頃、王太子の婚約者の話を聞いた聖女は嬉しさのあまり顔が大変なことになっていた。
しかし、祈りの部屋にすぐに行ったのでその顔が誰かに見られることは無かった。
「王太子様が私と婚約?!なんてことなの...さすが私、この国の尊さの高嶺にいるだけあるわね。早速ウエディングドレスを選ばないと!こんなお祈りなんてしている暇はないわ!」
と言って祈りの部屋を飛び出して、急に出てきた彼女に驚いたメイドたちはすぐに姿勢を正して彼女に聞く。
「聖女様、どうされました?お祈りは終わられたのですか?」
「...ええ、終わりました。これで領地の不作は改善されることでしょう。...ああ、もうそろそろ新しい服に変えたいわ...」
彼女はどこか演技めいた仕草で独り言という名の頼みを聞いてくれそうな言葉を使った。
「服、ですか?...そうですね、その服は着始めてから既に2週間は経過しているのですよね...でしたら、新しいものを発注させましょうか」
「...いいのですか?本当に?」
彼女は控えめにそう聞いた。
「ええ、もちろんです。そうと決まればデザイナーを呼びましょうか。ではアン、申し訳ないのだけど呼びに行ってくれるかしら?」
「ありがとう」
顔だけはいい彼女はその顔を笑顔にしてメイドを見た。
それを見たメイドは自分が騙されていることにも気付かずに彼女に笑いかけた。
とりあえず自室に戻ることになった彼女は後ろを歩くメイドに気付かれないように本当の独り言を言う。
「ふふっ.....作戦成功、さすが私ね。私は聖女だからなんでも願いが叶うのよ」
『聖歴3764年 闇の月』コンプリート率:2/10




