第九章 うーちゃん
第九章 うーちゃん
凪を見ていたのは、五、六歳くらいの女の子だった。
小さな体で、ホームにぽつんと立っている。
周りを見渡しても、大人の姿はない。
凪は特別、子どもが好きというわけではなかった。子どもを見れば無条件に頬が緩むような性格でもない。
それでも、子どもの安全を守るのは大人の義務だと思っている。
電車が行き来するホームに、幼い子が一人。
どう考えてもおかしい。
凪は女の子へ近づいていった。
女の子は逃げもせず、声も出さず、こちらをじっと見ている。
凪が歩く間も、一度も目を逸らさなかった。
その視線が少し気になったが、怖がらせないように、女の子の前で腰をかがめた。
「一人なのかな? お母さんは?」
「うん。ひとりだよ。お母さんはいない」
女の子は、はっきり答えた。
「そっか。じゃあ、迷子かな?」
「ううん。うーちゃん、迷子違うよ」
「うーちゃんっていうの?」
「うん」
「うーちゃん、迷子じゃないんだね。どこに行くのかな?」
凪が尋ねると、うーちゃんはホームの先を指さした。
「お母さんが、乗るかもしれないから」
その方向は、先ほどまで凪が乗っていた電車の進行方向だった。
凪は線路の先へ目を向けた。
もう電車の姿は見えない。
お母さんが乗るかもしれない。
少し妙な言い方に聞こえた。
だが、幼い子どもの言葉だ。状況をうまく説明できなくても不思議ではない。
きっと、この子は母親と一緒に先ほどの電車に乗っていたのだ。
そして何かの拍子に、うーちゃんだけがこの駅で降りてしまった。
電車の中に残された母親は、今頃慌てているだろう。
次の駅で降りて、駅員に事情を話しているかもしれない。すぐに反対方向の電車で戻ってくるはずだ。
そう考えれば、うーちゃんが線路の先を見つめている理由にも納得がいく。
「お母さんと電車に乗ってたの?」
凪が聞くと、うーちゃんは首を傾げた。
「お母さん、電車に乗るの」
「これから?」
「うん。たぶん」
やはり、話がうまく噛み合わない。
凪は立ち上がり、もう一度ホームを見渡した。
近くに駅員の姿はない。改札へ行くには、階段を上がらなければならなかった。
うーちゃんをここへ残して、自分だけで呼びに行くわけにはいかない。一緒に連れていくべきだろう。
けれど、母親がすぐ戻ってくるなら、ここで待っていたほうが早いかもしれない。
ホームの中央には、先ほど見つけたベンチがある。
凪は自分を見上げるうーちゃんと、階段の方向を交互に見た。
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① すぐに駅員のところへ行き、女の子が間違えて降りたらしいと知らせる。
こちらを選んだあなたは、第十八章へ進んでお読みください。
② 母親は次の駅で降りて引き返してくると考え、ベンチで女の子と待つ。
こちらを選んだあなたは、第十九章へ進んでお読みください。
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