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選択肢ーーあなたが選ぶ、十六の結末  作者: もちむぎ


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第七章 いつもの商店街

第七章 いつもの商店街


「……少し休んでいけば?」


 そう誘われて、凪は返事に詰まった。


 ぶつかったばかりの、名前も知らない相手だ。


 親切に声をかけてくれたことは分かる。顔色を心配して、腕まで支えてくれた。名刺に書かれた店も、ここからすぐ近くらしい。


 それでも、いきなり自分の店で休めばと言われれば、さすがに驚く。


 いくら夜勤明けで頭が働いていなくても、少し怪しいとさえ思った。


 目の前の女性は、髪も化粧もきれいに整っている。服装にも清潔感があり、話し方もしっかりしていた。見るからに悪い人、という印象はない。


 けれど、悪い人かどうかは見た目だけでは分からない。


 それに今の自分は、何かあったときに素早く判断できる状態とも思えなかった。


 凪は手の中の名刺へ目を落とした。


「あの、誘ってくださってありがとうございます」


 なるべく失礼にならないよう、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「名刺もいただきましたし、今度またぜひ伺わせてください」


 女性は一瞬、黙った。


 断られたことを不快に思ったのだろうか。


 凪がそっと顔を上げると、女性は凪の顔を見つめていた。


「そうよね」


 少し間を置いてから、女性は頷いた。


「あなた、すごく疲れているみたいだし。早く、ゆっくりできるところに帰ったほうがいいわね」


「あ……はい。ありがとうございます」


「気をつけて帰ってね」


 女性はそれだけ言うと、凪に背を向けた。


 細いヒールの音が、朝の歩道を遠ざかっていく。


 その姿が人の流れに紛れるまで見送ってから、凪はほっと胸を撫で下ろした。


 悪い人ではなかったのかもしれない。


 本当に、ただ休ませてくれようとしただけかもしれない。


 それでも、ついていかなくてよかったと思った。


 凪は名刺をバッグの内ポケットへしまい、駅へ向かった。


     *


 改札を通り、ホームへ下りる。


 ちょうど入ってきた電車に乗り込み、空いている席へ腰を下ろした。


 先ほどの出来事で、幾分目が冴えていた。


 あの女性は、どうして見ず知らずの自分を店へ誘ったのだろう。


 顔色が、それほど悪く見えたのだろうか。


 凪は窓にうっすら映る自分の顔を見た。


「……悪いな」


 思わず呟く。


 これなら心配されても仕方がないかもしれない。


 それでも今度こそ眠らないように、凪は何度も駅名を確認した。


 電車の揺れは相変わらず心地よかったが、目を閉じることはなかった。


 やがて、いつもの駅名が車内に流れた。


 凪はバッグを持ち、電車を降りた。


 見慣れたホーム。いつもの階段。毎日のように通る改札。


 それだけで、ようやく帰ってきた気がした。


 改札を抜けると、駅前の商店街が目に入った。


 朝の商店街は静かだった。


 ほとんどの店はシャッターを下ろしている。昼になれば人が行き交う通りも、今は自転車が一台通り過ぎただけだった。


 凪は家へ向かって歩き出す。


 けれど、並んだ店の中に、一軒だけ開いている場所があった。


 こんな時間から営業している店なんて、あっただろうか。


 凪は足を止めた。


 開いていたのは――。


⸻


① 朝早くから営業しているパン屋。

こちらを選んだあなたは、第十四章へ進んでお読みください。


② いつもは閉まっているのに、なぜか「OPEN」の札が掛かっている本屋。

こちらを選んだあなたは、第十五章へ進んでお読みください。


⸻


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