第四章 向かいのホーム
第四章 向かいのホーム
帰ろう。
凪はバッグを抱え直し、開いたドアからホームへ降りた。
足元の硬い感触に、少しだけ目が覚めた気がした。
寝過ごすなんて、余計に疲れるだけだ。ここで引き返せば、まだ午前中には布団に入れる。
頭の上の案内板を見上げる。
反対方向の電車は、向かい側に来るらしい。
凪はホームを横切り、行き先の表示を確かめた。今度は間違いない。これに乗れば帰れる。
そこまで確認したところで、あくびが出た。
片手で口を覆う。目の端に浮いた涙を指先で拭っても、まぶたは重いままだった。
立っていれば眠くならない、というわけでもないらしい。
ベンチ、ないかな。
凪は駅を見渡した。
電車の中からなら何度も見たことがあるはずなのに、降りてみると知らない場所だった。柱の位置も、階段の場所も分からない。
さっき目にした駅名だけが、ここを知っている気にさせていた。
ホームの中央付近に、ベンチが見えた。
空いている。
というより、ほかに誰もいない。
凪は左右に目を向けた。階段の近くにも、ホームの端にも、人影は見当たらなかった。
乗ってきた電車は、背後でまだ停まっている。
この駅で降りたのは、自分だけだったのかもしれない。
凪はベンチに向かって歩き出した。
バッグが肩に食い込む。荷物が増えたわけでもないのに、朝になるといつも重くなる。
座ったら、また寝そうだ。
でも、次の電車が来るまでなら。
背もたれに寄りかからなければ、きっと大丈夫。
そんなことを考えながら、数歩進んだ。
ふと、誰かに見られている気がした。
足が止まる。
何か言われたわけではない。名前を呼ばれたわけでもなかった。
ただ、背中に視線を感じた。
誰もいないと思ったけれど、見落としていただけだろうか。
凪は振り返った。
そこにいて、凪を見ていたのは――。
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① 乗ってきた電車の車掌さん。
こちらを選んだあなたは、第八章へ進んでお読みください。
② 五、六歳くらいの、一人の女の子。
こちらを選んだあなたは、第九章へ進んでお読みください。
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