↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
選択肢ーーあなたが選ぶ、十六の結末  作者: もちむぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/31

第十二章 憧れのかたち

第十二章 憧れのかたち


「体の毒素を抜く、デトックス効果のある薬草茶よ」


 玲奈は自分のカップを見ながら続けた。


「味は、まあ不味いけど」


 凪は思わず吹き出しそうになった。


「自分で出しておいて、不味いって言うんですか?」


「だって、おいしいって嘘をついても仕方ないでしょう?」


 玲奈は涼しい顔で、もう一口飲んだ。


「良薬口に苦しって言うし。不味いものほど体にいい気がするじゃない」


「気がするだけなんですね」


「ちゃんと効能はあるわよ。でも、味については保証しない」


 凪はカップの中を見つめた。


 色も不思議なら、香りも味も独特だ。


 それでも、二口目は最初ほど飲みにくくなかった。


「どう?」


「……慣れたら飲めるかもしれません」


「それ、一番困る感想ね。お店で出していいのか、やめたほうがいいのか分からない」


 二人で笑った。


 会ったばかりの人の店に来て、よく分からない色のお茶を飲んでいる。


 少し前の凪なら、そんな自分を想像もしなかっただろう。


 店内には穏やかな香りが漂っている。


 棚に並ぶ小瓶には、凪の知らない植物の名前が書かれていた。壁には小さな額に入った資格証がいくつか飾られている。


 どれも玲奈が、この店を始めるまでに積み重ねてきたものなのだろう。


「このお店、一人で始めたんですか?」


「ええ」


「すごいですね」


「小さい店よ。まだまだ大変なことばっかり」


 玲奈はそう言ったが、その声は楽しそうだった。


「でも、自分でやりたかったの。香りも、店の内装も、出すお茶も、全部自分で決めたかったから」


「怖くなかったですか?」


「怖かったわよ。今も怖い」


 玲奈は迷わず答えた。


「お客さんが来なかったらどうしようとか、来月も家賃を払えるかなとか。毎日考える。でも、やらなかったら、ずっとやりたかったって言い続けることになるでしょう?」


 凪は黙って玲奈を見た。


 同じくらいの年齢。


 それなのに、玲奈は自分の好きなものを選び、自分の店を持ち、その中に立っている。


 髪も化粧もきれいに整えて、何でも迷わず決められる人に見えた。


 けれど、怖くないわけではないらしい。


 怖くても、自分で決めて前へ進んだのだ。


 格好いい。


 素直にそう思った。


 同時に、この人ともう少し話してみたいと思った。


 今日だけお茶を飲ませてもらって、それきりになるのは惜しい。


 玲奈が何を好きで、どうしてこの仕事を選んだのか。店を始めるまで、どんなことがあったのか。


 もっと聞いてみたい。


 親しくなれたらいいな、と凪は思った。


「凪さんは?」


 突然尋ねられ、凪は瞬きをした。


「私?」


「そう。看護師の仕事、好き?」


 凪はすぐに答えられなかった。


 嫌いではない。


 人の役に立てたと感じる日もある。看護師になってよかったと思う瞬間も、確かにある。


 けれど、好きなものを仕事にしたのかと聞かれたら、少し違う気がした。


「難しいですね」


「そっか」


 玲奈は答えを急かさなかった。


 凪は両手でカップを包み、その温かさを感じた。


 玲奈のように、自分の好きなものを仕事にしたい。


 そう思う一方で、凪には仕事にしたいほど好きなものが何なのか、まだ分からなかった。


 それなら、この人のようになりたい。


 自分で選び、怖くても前へ進める女性になりたい。


 二つはよく似ているようで、少し違う。


 自分が本当に望んでいるのは、どちらだろう。


⸻


① 自分の好きなものを見つけ、それを仕事にしたい。

こちらを選んだあなたは、第二十四章へ進んでお読みください。


② 玲奈のような、格好いい女性になりたい。

こちらを選んだあなたは、第二十五章へ進んでお読みください。


⸻


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。