↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
34/177

第34話 古い工場にも、仕事が増えた

 月曜日の昼、注文していた充電ケーブルを枕元へ引いた。


 二メートルある。


 寝返りを打っても抜けない。起き上がって、スマホを机に置くところまで届いた。


 袋を捨ててから、頭の中のゲームを開く。


 こちらは、ケーブルも充電も要らなかった。


【所持キューブ:約1,230兆】


 昼の十二時。


 待っていた設備が、買えるようになっていた。


【増殖中枢】

【価格:1,200兆キューブ】

【基礎生産:10億/秒】


 一週間前に見たときは、残り四百兆以上あった。


 寝て、店へ行って、歌っている間に貯まった分だ。


 途中でほかの設備を買わなかったので、予定どおり届いた。


 購入する。


【増殖中枢:1基】

【生産速度:8,722,864,256/秒】


 毎秒七億ほどだった数字が、八十七億を超えた。


 所持キューブを見ていると、減ったばかりの桁へ、もう次の数字が入っていく。


 一秒待つ。


 さらに八十七億。


 俺は椅子へ深く座り直した。


 (いいな、これ)


 同じ数字を眺めているだけで、しばらく動きたくなくなった。


     *


 増殖中枢の下に、新しい改良が出ていた。


【複製接続】

【価格:600兆キューブ】

【複製プラント1基につき、増殖中枢の基礎生産に50%を加算】


 説明を開く。


 プラント一基なら一・五倍。二基なら二倍。


 中枢が増えても、すべてに効果がある。


 俺の複製プラントは、今、二基だった。


 つまり、これを買うだけで、さっきの中枢が二基分になる。


 値段は半分。


 (先にこっちだな)


 所持キューブは、まだ三十兆ほどしかない。


 それでも、生産速度が上がったので、明日の昼には買える。


 改良の説明を閉じかけ、もう一度、複製プラントの欄を見た。


 三基目は、二千五百六十兆。


 高いので、しばらく後回しにしていた設備だった。自分の生産だけでは、そこまで貯めて買いたい値段ではなかった。


 でも、接続したあとなら、中枢の生産も増やせる。


 中枢一基の半分に、今の全体倍率をかけて、毎秒四十億。それに、プラント自身が作る分も足される。


 俺は机のメモを取った。


 上位の設備を買うと、前の設備は押さなくなることが多い。


 このゲームでは、残してある二基が、また役に立ちそうだった。


 次の中枢は、三万八千四百兆。


 そこまで一気に待つより、先にプラントを増やしたほうがよさそうだ。


 明日、接続。


 そのあと、プラント三基目。


 書き終わり、ようやく昼飯を作るために立ち上がった。


     *


 火曜日の昼には、七百八十兆以上になっていた。


 複製接続を買う。


【複製接続:有効】

【増殖中枢への加算:+100%】

【生産速度:16,722,864,256/秒】


 毎秒、百六十七億。


 ここまで来ると、昨日の八十七億へ戻るのが遅く感じそうだった。


 設備一覧の中で、二基のプラントと一基の中枢に、小さな同じ印がついた。


 それだけの表示なのに、つながった感じがした。


 俺は一覧を少し下へ送った。


 この先も、別の設備同士をつなげられるのだろうか。


 今はまだ、それらしい説明はなかった。


 指で操作しているわけでもないのに、もう少し下へ送れないか試してしまった。


 スマホの通知が鳴った。


 ゲームを閉じて、机の上へ手を伸ばす。


     *


 宮田さんから、伴奏の確認が届いていた。


 送った四曲は、すべて用意できるそうだった。キーも、原曲のままで問題ない。


 曲の長さは、メモしたものと同じだった。


 『帰り道』は四分四十秒。


 『四月の傘』は四分十秒。


 『晴れたら遠回り』は三分三十秒。


 『駅まで五分』は三分五十秒。


 確認用の音を、最初と最後まで聞いた。


 練習したところと入り方も終わり方も同じで、別の場所に急に間奏が増えることはなさそうだった。


 添えられた案内には、賞状を持った俺の写真が載っている。


『歌唱コンテスト優勝 久瀬凪』


 その下に、一時と三時の開始時刻。


 出演者は俺だけなので、写真の隣にほかの人はいなかった。


 拡大して、名前を確かめた。


 間違っていない。


 写真も、先日見せてもらったものだ。


 しばらく見てから、二人のグループへ送った。


『案内ができました』


 それだけ書いた。


 本当は、どう見えるか聞きたかった。


 藤崎さんから、ほどなく返事が来た。


『ちゃんと歌う人のポスターになってる!』


 俺は写真をもう一度開いた。


 (そうなんだよな)


 文字も飾りも、自分では何も作っていない。それでも、この顔で歌う人として載っているのは嬉しかった。


     *


 木曜日の夕方、食事の前にゲームを開くと、三千四百兆を超えていた。


 複製プラントの三基目を購入した。


【複製プラント:3基】

【増殖中枢への加算:+150%】

【生産速度:21,042,864,256/秒】


 百六十七億から、二百十億へ。


 プラントの生産だけなら、こんなには増えない。中枢へつなぐ改良を取った分が、きちんと加わっていた。


 買った設備の数は三基。


 前の二基も、ずっと動いている。


 古い欄へ戻って買い足すのが、少し楽しかった。


 次はどうするか、値段を並べる。


 四基目のプラントは四万九百六十兆だった。次の中枢も、まだ遠い。


 ひとまず、貯める。


 実績の欄を見ると、累計一京までの数字がかなり減っていた。


 今の速度なら、出演する日の朝には届く。


 報酬は、十二ポイント。


 今持っている六点と合わせれば、十八点になる。


 歌唱を八にするには、二十一点必要だった。


 あと三点。


 (そこ、端数でまけてくれないかな)


 購入ボタンは、当然、灰色のままだった。


 でも、七になった声で四曲を歌うのは、まだ二回しか通していない。


 日曜日は、それを客の前で聞いてもらえる。


 俺はゲームを閉じ、スマホに届いた案内をまた見た。


 一時から。


 三時から。


 自分の名前の下に並ぶ二つの時間を確かめてから、夕飯のご飯をよそった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。