第170話 俺の二曲で、買ったもの
木曜日、二曲の代金が初めて入り、入金された一万二百四十円を明細と比べると、三十二セット分の数字と同じだった。
石倉さんへ受領の返事をして、入る予定と書いたところに印を付けた。制作費全部は戻っていなくても、この分はもう使える。
そのまま気になっていたゲームのページを開くと、港へ来る船から、倉庫を通して店まで荷物を運ぶ町が動いていた。
前に買った工場のゲームとは違い、道の横へ家も置けるので、どこへ並べようかと見てから、四千八百円の表示へ戻った。
買っても、今日入った分の半分以上は残る。歌のために払ったお金を、今度も歌だけに使わなくてよいと思い、俺は購入した。
(俺の歌が、港になった)
少し変な考えだったが、画面へ最初の船が来るとわかりやすく楽しくて、荷物を置く倉庫をいくつも並べた。
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船から入る荷物は増えたのに、運ぶ道が足りず、小さい車が交差点で詰まったので、俺は町の動きを一度止めた。
視界の工場で三段の塔を作っても、こちらの道は増えない。画面の端で住民の数が減っていて、俺はつい、その表示へ指を寄せた。
(待て。歌の売上で作った町から、出ていくな)
まず道を一本足して倉庫を一つ移すと、止まっていた車が流れ始めたので、今度は少し離れたところへ家を置いた。
川に向いた窓のある建物にして、しばらく新しいものを買わずに町を見ていると、さっきの交差点も流れていた。
昼の前、植田さんから次の歌の会を相談したいと連絡が来たので、俺は映画の十日間の撮影予定を先に送った。
撮影を終えた次の月で考えると返事が来て、二曲を買って聞いた人からも、会の問い合わせがあったと教えてもらった。
前の会の案内には今も二曲への場所を載せてもらっていて、そこから次に会って聞きたい人もいると知り、俺は少し座り直した。
(今度は、二曲とも歌えるな)
まだ出演が決まったわけではないが、次に相談するときには、その希望も話したいと、映画の予定の外を確かめた。
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午後も町を動かし、別の港を作れるところまで進むと、もう五時近かったので、保存して台所へ立つことにした。
木曜日は勤務がなく、今日の夕方にも別の仕事を入れていない。もう少し遊びたい気持ちを残したまま、先に夕飯を作った。
台所で二曲を流すと、最初の鍵盤で自分の指を思い出し、あの七十二秒を聞いて、代金を払ってくれた人がいたのだとわかった。
その人たちの顔は全員分わからないが、今日選んだゲームを始められた分は、ここへ届いていて、俺は歌の続きを聞きながら作った。
食後、藤崎さんへ初めて入金があったとだけ知らせると、おめでとう、次も作れそうかという返事が来た。
はい、と打ってから、途中まで作った音をいくつか思い出したが、どれを歌にするかはまだ決めず、今日は町へ戻った。
倉庫の前の道が詰まっていないのを見て港を一つ増やし、今度はその隣に、小さい公園も置くことにした。




