第160話 二曲が、同じところに並ぶ
木曜日の二時、制作室でほぼ完成した二曲を続けて聞くと、『休みの日』の最初には、俺が弾いた鍵盤が残っていた。
家で聞いていた静かな入り方のまわりに二人の音があり、次の『ひと駅ぶん』が始まると、四つの音の下に低い音も聞こえた。
最後の繰り返しまで聞いてから手を上げると、石倉さんが音を止めてくれたので、俺は重ねた声のところを指した。
「ここへ入れた高い声、もう少し後ろにしたいです」
主な言葉より先に少し聞こえていた声を、言葉のあとに伸びる音として聞きたくて、そう伝えた部分をもう一度流してもらった。
石倉さんが位置を変えると、下の声の言葉が先に聞こえ、そのあとへ高い音が付いてきたので、俺はうなずいた。
「こっち、好きです」
「じゃあ、こっちを残そう」
そこで録り直さず、一か所だけ、最後に同じ言葉が戻るところへ、短い返事のような声を足すことにした。
長く歌った声を短く切るより、初めからその短さで歌いたかったので、マイクの前に立ち、明るい声と柔らかい声を二度試した。
伴奏へ合わせてもらうと、二つ目のほうが後ろへ収まって、前の言葉も聞けたので、そちらを使うと決めた。
含まれていた一時間の録り足しはそこで使い終わり、三時までに、俺は二曲をもう一度続けて聞いた。
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全部で三分四十八秒だった。
公演で歌った『手のひらのつづき』の長い版より二秒長いだけなのに、こちらでは途中に、もう一曲の始まりがある。
家へ帰って座る歌から、電車を降りて歩く歌へ移ると、両方とも好きで作ったのを、最後の音まで聞いて確かめられた。
「これで、お願いします」
「二曲とも?」
「はい」
音が止まってから答えると、石倉さんも譜面の二曲へ印を付けた。もっと細かく探せば、何か変えたくなるかもしれない。
でも、今は人にも聞いてほしかったので、そこを先に決め、残りの二万八千円を支払うことにした。
最初の分と合わせて五万六千円の控えを受け取ると、二曲の名前も並んでいて、俺は紙を鞄の中へ入れた。
(減った数字のほうも、今日は少し見やすいな)
帰れば自分でまた聞ける音ができたので、支払いの表示を何度も開かず、今度は表紙の見本を見せてもらった。
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俺が撮った鍵盤の端とノートに、二つの曲名と久瀬凪の名前が重なっていて、写真の中の鍵へ目を向けた。
顔写真も役の服もなく、何度も始まりを弾いた家の机が見えたので、初めて聞く人にも、この一枚で出したかった。
「これで、出したいです」
販売ページと公開する案内にも使うと聞いて了承し、予告を出す今度の日曜と、その一週間後の発売を予定へ入れた。
販売開始は日曜日の午後六時。それまでに紹介文や題名を確かめればよく、今日の録り足しのために追加料金はかからなかった。
手元の写真で表紙までできたのが少し嬉しくて、俺は見本の画像も受け取り、音と一緒にしまって制作室を出た。
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家で完成した二曲を聞き、最初に録った鼻歌のファイルも開くと、四十二秒の音にはまだ言葉がなかった。
それが一分十二秒になり、今日の録音へ続いているので、昔のほうも消さずに残し、俺はもう一度完成した音をかけた。
二曲目の四つの音と、小野さんに足してもらった低い音まで聞いてから、前の公演で尋ねられたときのことを思い出した。
今度は、どこで聞けるかを答えられる。日曜日の予定を開き、そこへ付ける案内の言葉を考え始めた。




