ギルド設立
「お前たち、初心者か……?」
騎士の第一声である。
それを限界まで低頭して聞く、僕とサミー。
「頭を上げろ。まるでわたしが虐めているみたいだろ」
頭を真っ二つにされてしまう可能性もあったのだが、それでもさすがは騎士というべきか、それとも頭を上げて説教を加えて上で真っ二つにしてしまうのか、なんとも言えない緊張感とともに、僕たちは顔を上げる。
その騎士は女性だった。いやはや女性プレイヤーの多いゲームである。もちろんリアルの性別がどうであるかは分かったものではないが。
「本当ならばPKを仕掛けてきた奴など返り討ちにするのが常識なのだが、幸いなことに、人を探していてな」
「人、ですか……。でも僕たちはご覧の通り、始めたばかりの初心者でありますので、人探しなどのお手伝いはできないかと……」
僕は限りなく下手に出て、怒らせないようにやんわりと断った。だが騎士は、そうではなくて、と首を振る。
「わたしはギルドを立ち上げたいんだが、それには人数が必要なんだ。だからお前たち、さっきのことは無かったことにしてやるから、わたしのギルドに入れ」
ギルド……。その程度でさっきのPKを無かった事にしてくれるというのならば、悪くない提案だと思う。
「仮に――もし断ったらどうなるっていうの?」
サミーは少しだけ強気の口調で言う。基本的にそういう性格なのかもしれない。
「なにもしない――が。しかし、わたしも人間だからな。知り合い全てにお前たちの情報を流して、見つけたらみんなでPKしましょう、くらいのことは、腹いせでやるかもしれん」
「Oh……」
なぜか僕が、アメリカ的反応を示していた。
「ちなみに腹いせで情報を流す、なんてことは本来言う必要のないことなんだが、お前たちが可哀想だったから、あえて言ってやったんだ。親切だろう?」
その親切心は脅しと同じだ、騎士様よ。
だが、しかし――断るわけにはいかないし、そもそも断る理由もない。
「僕は別に問題ないけど、サミーはどうするんだ?」
「ええ、私も問題ナッシングよ」
意外とあっさり了承を口にしたサミー。
……しかし、その日本人が使いそうな英語の使い方は、どう考えても英語圏の人間の言葉とは思えないのだけれども、もしかしたらサミーはアメリカ出身という設定を楽しんでいるだけなのかもしれない。
そして――
「よし、それならばこの3人で、ギルド・ジャスティスブレイカーの設立をここに宣言する!」
騎士様は、そう力強く宣言したのである。
ジャスティスブレイカー……?
いや、うん。もちろんギルドの名前は、ギルド設立者である騎士様が決定すべき事柄なのだろうけど、ジャスティスブレイカーとはいかがなものだろうか。名乗る度に恥ずかしい思いは、できればしたくないのが本音だ。
何とかして、その格好良すぎるギルド名を変えさせなければなるまい。
でも、立場的に言うと僕たちは完全に下であり、騎士様は上にある。今、僕たちが生きながらえていることすら、騎士様の温情であるのだ。それに、もしまかり間違えば、僕たちは騎士様の知人友人全てを敵に回すことになる。
よし、ここはサミーの意見を聞こうか。
「サミー、英語圏出身の君から見て、ジャスティスブレイカーという名前はどんな感じだ?」
僕の横に正座しているサミーに小声で話しかけた。
「ちょ、ちょっと! こっちに振らないでよ!」
わたわたと慌てて、かの騎士に聞かれていないかと盗み見る。どうやらサミーもこのギルド名に関しては思うところがあるらしいが、こちらが弱みを握られている以上、すべてを受け入れるしかないと分かっているようだ。
「よし、それでは早速広場に戻って、ギルドルームを手に入れるぞ。ついて来い!」
僕たちがついて来るのを確認せずに、颯爽と歩きだす騎士。
「ふう、それじゃ行くか。サミー」
立ち上がり、サミーに手を差し伸べる。しかし――、
「ダメ。脚が痺れて立てない。私のことはいいから、あなた達だけで行って」
「嘘をつくな! そして、お前も一緒に来るんだ!」




