私ってば、上手くまとめるのは苦手なのよね。
かなりお休みさせてもらってました、すみません!
色々と、コンテストへ応募して、自分を試したりしています。
また、お楽しみ頂ければ、幸い。
「ババー! 朝飯!」
いつものように、リビングへくるやいなや、母親であるアムリタにキツイ言葉を投げかける長男。
が、その日はいつもと違った。いつもなら毛布にくるまって長椅子で寝ているはずの母親がいない。
舌打ちしながら辺りを見回すと、テーブルに書置きがあった。
【今まで、家族の時間をありがとう。
私に出来る精一杯の愛情を注がせて貰いました。
けれど、もう、あなた達も立派に育ち、私の役目はそろそろ終わりかと思います。
食事をするのにも、つきっきり手拭いで口を拭いたあの日から、
初めておしめの取れたあの日から、日々、健やかに育ってくれました。
家事も、幼い頃は良く話を聞いて手伝ってくれましたね。
きっと、私がいなくとも、覚えている事と思います。
私も、私の思う所をしたい。
母も、一人の人間です。
あなた達が、自分の事を自分で出来る年まで、側に居させてくれて、ありがとう。
戸棚にパンの残りがあります。
覚えていると思いますが、瓶詰は戸棚の一番下。その上に干し肉。その上に干し葡萄があります】
「は?」
几帳面に整った字で、びっしり書かれたメモをもう一度読む。
「っはぁあああぁあ?」
長男の大きな声に、次男と父親も起きだしてきた。
三人雁首揃えて、メモを回し読む。
「え、なにこれ、つまり母さん出てったの?」
次男がショックを受けた顔で、ババー呼びから昔のように母さんと戻っていた。
父親は、黙り込んでずっとメモを見詰めている。長男はため息をついて、朝食の用意を始めた。
「とにかく、飯食って親父と俺は仕事。お前は学校。ほら、さっさと手伝え」
なんだかんだと要領の良い長男が、難なく朝食を用意して各々いつもの日常を始めた。
昼食時、長男は仕事場の裏で、一人遅めのランチをとっていた。適当に露店で買ったサンドイッチは、それなりに美味しい。
だけど、母親の隠し味が入ったソースが、一番美味しい。子どもの頃から馴染んだ、好きな味。おふくろの味。
おふくろ、もう戻ってこないだろうな。
そんな事を、冷静に考えていた。
午前中、ずっと考えていたのだ。そして、妙に納得もしていた。
そら、出てって当然だわ。
自分達の日頃の行いを思い返して、むしろよく見捨てずにここまで育ててくれたなと思った。
小さい頃は違った。けれど、いつからだろう。少し年の離れた弟が生まれてからだろうか。それまで母親を独り占めしていたのに、急にお兄ちゃんだとアレコレ厳しくなって、母親への反抗心がむくむくと沸き起こってきた。丁度、俗に第一反抗期と言われる年頃だったのもあったかもしれない。
それが、気付けばそのまま。悪ぶってみせても、何をいっても、母親は仕方ないわねと言わんばかりに、男三人をかいがいしく世話し続けた。
それに、いつの間にか慣れ切ってしまった。当たり前にしてしまった。少し考えれば分かった筈なのに。
少し困った笑顔で、仕方ないわねと呟く母。その裏ではどれだけ傷付いていたのか、考えなくても分かるだろう。
母だって一人の人間だと、そんな当たり前の事も、言わせないと分からない程バカだったのか。
いや、母、という存在を特別視しすぎていたのか。母親なら、何をしようと子どもを愛して当たり前だとでも慢心していたのか。
ホント、救いようがないな。俺も、親父も、弟も。
母の出て行ったショックと、自分たちの行いを振り返り当然だと冷静に思う気持ちと、妙に頭は冷え切っていた。
いつも調子良く陽気な親父が、今朝は一言もしゃべらないままだったと気付いて、思ったよりも親父はショックを受けているのかもしれないと思った。
けど、一番ひどかったのは親父だろ。
食べ終わった包み紙をくしゃくしゃにして、長男は仕事へと戻っていった。




