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私ってば、甘いものは程々にね。

 どうしよう。


 守衛さんから渡された、抱える程の花束に、私は困った笑顔を浮かべた。夕食後に食堂から部屋へ戻ろうとした所、珍しく守衛さんに呼び止められたのだ。


 修道院の守衛さん曰く、アムリタの旦那だ! という男から押し付けられたとの事。お手間増やして申し訳ない。本当に。


 どうやら、なんとか私の居所を見つけた夫が、花束持って会いに来たらしい。とはいえ、当然簡単には入れない。散々門前で言い合って、渋々花束を押し付けて帰っていったんだとか。恥ずかしいわ。ごめんなさい、守衛さん。


 気の良いおじいちゃんな守衛さんに何度も頭を下げて、私は花束を持って自室へ戻った。飾ろうとして、こんなに飾る花瓶は無いと気付く。


 困ったわね。そうだ、雑務をされている方にどこか備品のあまりが無いか聞いてみよう。テーブルに花束を置くと、それだけで一杯になってしまう。


 花瓶を二つ程借りてきて、花束を分けて水切りする。うん。良い感じね。綺麗だわ。一つはテーブルに。一つは窓際に飾った。

 飾りっ気のなかった部屋が一気に華やいで、まるで特別な日みたい。


 ベッドに腰かけると、ベッドサイドに置いた可愛い籠が目に入る。グリムワルド伯爵様から今朝頂いた物だ。中から、愛らしい包み紙を一つ摘まむ。カサリと開けば、砕いた木の実が入ったチョコレートが出てきた。それをコロンと口へ入れる。


 口の中一杯に甘さが広がって、鼻から抜けるのはカカオとお酒の豊潤な香り。足をぷらぷらさせて、考える。


 何かしらね、今まで十分過ぎる時間があったのに、側にいた時は道端のタンポポ一本摘んできた事も無い。それが、居なくなった途端にコレ? あらまぁ、随分なものね。


 もう一つ、籠へと手を伸ばす。今度はオレンジの皮の砂糖漬けが入っていた。


 何かしらね、私にも良くない所があったのかもしれないわ。そんなの、私だって完璧じゃないもの。不出来な所だってあったでしょう。それでも、あなたとの結婚生活はあんまりだったと思うの。


 もう一つ、籠へと手を伸ばす。今度はさくらんぼの酒漬けが入っていた。


 何かしらね、もうあの人が何を考えているかなんて、知らないわ。分かりっこないもの。私は私。今まで十分子育てもしたわ。これからは、私は私の思うようにいきたいの。自由には責任がつきものね。だから、自活出来るように働き口を探さなきゃ。


 もう一つ、籠へと手を伸ばす。今度は、キャラメルと混ぜ合わせられた柔らかいチョコだった。


 うん。聖女としてとかお役目を果たしてご恩返しをする。その後は、自分で自分の食い扶持を稼げるよう、ここに居る間に出来る事をしよう。ここで下働きをしている人みたいに、私も下働きとして雇ってもらえないだろうか。どのくらいの期間を聖女としてお役目務めさせてもらえるか、はたまた、やはり違ったとなるかもしれないけれど。


 聖女としての教育というか育成も、今は自主学習だ。仮にも当代の聖女がおり、まだまだ健在という建前もあって、私は一人で書物から学んでいる。


 グリムワルド伯爵からの素敵な贈り物を頂いて、夫が押し掛けてきたという事への気落ちも少し浮上してきた。


 うん。とにかく、今出来る事を一つずつ。それしかないわ。


 もう、私とあの人との人生は、随分前に分かたれているのだと、理解してもらうしかない。幸い、守衛さんしか夫の訪問は知らない。


 聖女として、認定をされる事。それから、教会で正式に離婚を認めて頂く事。そうして、お役目を務めさせて頂く事。


 やる事は決めたんだ。そのチャンスも与えられた。頑張るぞ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 花束持って来られましても、今までと何が変わるのか? なにも変わらないのでは?
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