四章 8 『衝撃の告白』
「え?なんなのこの空気・・・?」
突然変わった空気を感じたサラスが戸惑っている。
「サラス・・・!本当にサラスの家の名前はリーリッヒなのか!?」
「は?そうよ?いくら私でも自分の家名を間違えるわけないでしょ?どうしたのそんな怖い顔して・・・」
進藤がサラスに詰め寄り問い正した。どうやらサラスの勘違いや思い違いではないようだ。進藤はセシリア達の方を見た。セシリアが進藤の意図を理解してサラスに聞いた。
「すいません・・・今日初めて会ったのにこんなことを聞くのは失礼と思いますが、サラスさんの女神になる前の人間だったころの話を聞かせてもらえないかしら?」
「別に良いけど・・・どうしたの皆急に?私何か変な事言ったのかしら?」
サラスは状況がいまいち理解できていない様子だった。それも当たり前なのだが・・・
「悪いけどサラス・・・以前俺に聞かせてくれたサラスの過去をもう一度セシリア達に聞かせてやってくれ」
「う、うん・・・わかったわ」
サラスが湖の女神になった経緯は正直明るく話せるような内容ではない。進藤も出来ればサラスの嫌な過去を掘り返すようなことはしたくなかった。しかし事情が事情なのでやむを得ず頼んだ。サラスも進藤のただならぬ雰囲気を察して了承してくれた。
それからサラスは自分が湖の女神になった経緯を話してくれた。自分が湖で死んだ経緯や家の裏稼業のこと、父親の不思議な雰囲気の事も・・・それをセシリア達はただ黙って聞いていた。
サラスのつらい過去を聞いてアイリスは今にも泣きそうになっていた。そんなアイリスの頭を進藤は優しく撫でた。
「――というわけよ。どう?これで満足してもらえたかしら?」
「ええ・・・十分だわ、ありがとう。そのツライことを思い出させてしまってごめんなさいね・・・」
「ううん、それは全然構わないのだけどこの話が一体何になるの?」
「そうね、次は私が説明する番ね・・・」
「・・・?」
「実は・・・――」
次はセシリアが自分の身に起きた事件について説明した。ガウェンの事やその人を操るギフトのことなど、そしてガウェンの家名がリーリッヒということを・・・
「そんな・・・そんなのまるで・・・」
セシリアの話を聞いたサラスが動揺している。
「ええ・・・サラスさんから聞いた過去の父親の話と今回のガウェンの力は非情に似ているわ。これはとても偶然なんて言葉じゃ片付けられないわ」
「それじゃあやっぱりサラスとガウェンは・・・」
「おそらく同じ一族・・・リーリッヒ家の家系は滅んでいなかったというわけね」
「そんな信じられないわ!あの時確かに私の父は私の目の前で・・・!母だって・・・」
サラスはそんなこと信じられないと言った表情をしている。
「けれどサラスさんは最後まで見届けたわけじゃないのよね・・・?」
「確かにそうだけど・・・!でも・・・こんなことがあるの・・・?まさか私の家系がまだ続いていたなんて。しかもその子孫があなた達にとんでもないことをしていたなんて・・・私、なんて謝ればいいの・・・」
サラスは力が抜けたように地面に座り込んだ。そんなサラスにセシリアがそっと近づき目線をサラスと同じ位置まで下げるようにしゃがんだ。
「あなたが謝ることなんて何一つないわ。仮にあなたとガウェンが同じ一族だったとしても、その力を悪用しようとしたのはあくまでガウェンの責任よ。あなたがそんなに責任を感じる必要は全くないわ」
「うぅ・・・セシリアさん・・・でも・・・私・・・」
サラスが涙を流している。
「あらあら、せっかく綺麗な顔が台無しよ?もう良いから・・・私の事はセシリアって呼んで?私達もう友達でしょ?サラス?」
セシリアがサラスの涙を指でそっと拭い微笑みながら言った。
「うわぁあああん!セシリアーー!」
感極まったサラスがセシリアに抱きついた。
「フフ・・・やっぱり湖の女神様なのね。すっかり私もビショビショだわ」
「ご、ごめん・・・ヒグッ・・・なさい・・・ヒグッ・・・」
すっかり子供みたいに泣きじゃくるサラス。それをセシリアが優しくあやすようになだめていた。
「進藤お兄ちゃん・・・サラスお姉ちゃん大丈夫かな・・・?」
その様子を見ていたアイリスが進藤の手を握り心配そうに尋ねてきた。
「ああ・・・きっと大丈夫だよ。セシリアも言っていたけどサラスは何も悪くないんだ。だからアイリスもこれまで通りサラスと仲良くしてやってくれよな?」
「うん!もちろんだよ!サラスお姉ちゃんのこと大好きだもんっ!」
「ハハ、その言葉サラスに聞かせてやれよ。もっと大泣きするぜ?」
「もう進藤お兄ちゃんってば意地悪なんだから・・・でも言ってみるね!サラスお姉ちゃーん!」
アイリスがサラス達の方に駆け寄っていった。泣いているサラスに横からアイリスが抱き着いている。サラスが予定通り余計泣き出した。でもそれは悲しい表情ではないのは進藤にも伝わって来た。
「とりあえずは一件落着といったところでしょうか・・・?」
ルイズが進藤の側に近寄ってきた。
「そうだな・・・今回の事は本当にただの偶然だったんだ。だからルイズもサラスのことは悪く思わないでやってくれよ」
「もちろんですとも。あの女神さまがあのガウェンと同じ一族とは到底信じられませんが、とても優しいお方だというのは今日初めて会った私でもわかりますよ」
「そっか。ありがとうな」
「別に進藤さんにお礼を言われることではありませんよ。セシリアお嬢様本人が大丈夫だと言っているのです。ならば私がとやかく言う必要はありませんからね」
「まあ・・・それでもやっぱりありがとうって言いたいんだよ。今日二人をここに連れてきて良かったよ」
「私達も連れてきてもらって良かったです。こんな貴重な経験はそうそうできませんからね」
そう言ってルイズは笑った。
それからサラスが落ち着いたらセシリア達女の子全員でガールズトークで盛り上がっていた。すっかり仲良しになったみたいだ。その様子を進藤は少し離れた場所で見守っていた。
そして泣きつかれたのかサラスは畔で横になって眠ってしまっていた。すっかり幸せそうにアイリスのお土産のワインを抱きしめて寝ている。それをアイリスとルイズで優しく介抱していた。
「健一・・・ちょっといいかしら?」
サラスが眠った後にセシリアが進藤を少し離れた場所に呼びだした。何やら神妙な雰囲気である。
「どうしたんだ・・・?」
「話があるの・・・サラスのことで」
「え・・・?」
「これはもしかしたらだけど・・・サラスは人間に戻れるかもしれないわ」
「・・・何だって!?」
セシリアから聞かされた言葉は衝撃のものだった。




