四章 4 『ギャップ』
「それじゃあ、気を付けて行ってくるんだぞ?アイリスあんまり進藤君をわがまま言って困らせないようにな?」
「うん!わかってるよ!」
「ハハ、アイリスはわがままなんて言わないもんな?それじゃあ行ってくるよ」
「ええ。精一杯楽しんでおいで!」
今日はセシリア達と約束した三日後を迎えていた。外はこの上なく快晴でまさにお出かけ日和だ。玄関先でシルバとセリカに見送られ進藤はアイリスと共に王都のセシリアの屋敷に向かって馬車で出発した。
「王都っ♪王都っ♪進藤お兄ちゃん楽しみだねっ!」
アイリスが進藤の隣でご機嫌でフリフリの付いた薄いピンクの服を揺らしながら跳ねている。綺麗に整えられた赤毛の髪には以前進藤が買ってあげた髪飾りもあった。
「そうだな!今日は思いっきり皆で楽しもうな!」
「うん!」
心地良い風を受けながら王都を目指す進藤達。しばらくしてもうすっかり見慣れた城壁を潜り抜けてセシリアの住む屋敷に向かう。
「さっ、着いたよ。ここがセシリア達の住む屋敷だ」
「わぁー・・・・!すっごいおっきいお家なんだねぇ!」
目の前の豪邸に赤い瞳を丸くして口を大きく開けて驚くアイリス。そういえば貴族の屋敷を見たりするのは初めてだったかもしれない。たくさんの建設現場に携わった進藤でもこの世界の貴族の屋敷の大きさには驚いたほどだ。アイリスが驚くのも無理はない。
進藤達が到着してすぐに屋敷からセシリア達が姿を見せた。その姿を見て進藤は息を呑んだ。
綺麗に手入れされた芝生の上を歩いてくるセシリア。日傘を差して白いワンピースに身を包んだその姿はまるで美術館に飾られているような絵画を見ているようだった。まるでそこだけ別世界で時間が過ぎているような優雅さを感じさせる一瞬。艶やかな長い髪を風になびかせてセシリアがやってきた。
「・・・綺麗」
その姿にはアイリスも思わず呟いていた。
「お待ちしてました。さっ、行きましょうか!」
ニッコリと笑顔を見せるセシリア。その表情に思わず進藤もドキッとしてしまう。
「あ・・・ああ!そうだな!それじゃあ行こうか!って、あれ?ルイズ・・・その格好は・・・?」
セシリアに見惚れていてさっきは気付かなかったがルイズの服装に違和感を感じた。
そこにはいつものメイド服ではないルイズがいた。青いノースリーブ姿に紺色の膝までのスカート姿のルイズ。気恥ずかしそうにセシリアの後ろに隠れている。
「セ、セシリアお嬢様・・・!やっぱり私はいつも通りの格好の方が・・・!」
「あら、そんなのダメよ。今日のルイズは私の付き人としてじゃなくて私の友人として一緒に王都に出かけるんだから」
「だからってこんな肌の露出の多い服を選ばなくっても・・・!」
「ほら、そんなに隠れてないで健一に見てもらって!」
セシリアが後ろに隠れようと抵抗するルイズを引っ張り出した。
「きゃっ・・・!」
進藤の前に引っ張り出されたルイズがもじもじしながら進藤の方を見た。恥ずかしさからか頬が少し赤い。
「あ・・・その・・・変じゃないでしょうか・・・?」
「ううん!とっても似合ってるよ!」
進藤は正直な感想を述べた。
「あ・・・ありがとうございます」
恥ずかしそうに顔をそらすルイズ。いつもと違いなんだか新鮮だった。
「フフフ、良かったわねルイズ?」
セシリアが満足そうに勝ち誇った言い方をした。
「セシリアお嬢様・・・今日の事は忘れませんからね?」
ルイズは悔しそうに言った。 おそらくセシリアに無理やりこの服装を着せられていたのだろう。この借りはいつか返すと言わんばかりである。
「ねぇねぇ?進藤お兄ちゃん、私はどうかな・・・?」
隣にいたアイリスも少し恥ずかしそうに進藤に尋ねた。
「うん?どうしたんだアイリス?もちろんアイリスもその服に合ってて可愛いぞ?」
「・・・そっか!良かった!」
進藤の答えを聞いて満足そうなアイリス。
「あー!アイリスちゃん!今日は一段と可愛い格好ね!思わず抱きしめたくなっちゃうわ!」
アイリスの姿を見て興奮気味にセシリアが抱きついた。さっきまでの上品な感じはどこ消えたのか・・・
「セ、セシリアさん・・!?」
「はぁ・・・可愛い」
うっとりしながらアイリスに頬擦りしている。まるで子猫でも抱いているかのようだ。
「セシリアお嬢様・・・アイリスさんが困っていますよ」
「あら!?ごめんなさいね!あまりの可愛さについっ・・・!」
「ハハハ・・・いえ、大丈夫・・・ですっ!」
セシリアに抱きつかれ硬直しているアイリス。
「アハハ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ?私の事はお姉ちゃんとでも思ってくれると嬉しいわ。今日は一日宜しくね!」
「は、はい!こちらこそです・・・!」
「そんなに固くならなくても大丈夫だよアイリス。セシリアはアイリスの事食べたりしないからな」
「ちょっと健一?その言い方は酷いんじゃないのぉ?」
「ハハハ、冗談だよ。それじゃあ行こうか!」
「ええ!行きましょう!」
「うん!」
「よろしくお願いします・・・」
こうして賑やかなメンバーをそろえて進藤は王都の繁華街のほうへ馬車を走らせた。




