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三章 17 『もうブチ切れですよ』


 太陽が顔を見せ始めた夜明けの時刻、クラウド家の扉が勢いよく開いた。今日が期限のセシリアとガウェンの婚約の儀が行われる日だった。


 「す、すいません!遅くなりました!」


 開かれた扉の奥には息を切らした進藤の姿があった。


 「進藤君・・・!どうしたんだい!?」


 いつ進藤が帰ってきても良いように準備をしていたリチャード達が慌てて進藤の元に駆け寄った。


 「はぁ・・はぁ・・良かった。ギリギリ間に合ったようですね。すいません、急いで皆さんにお話したいことがあります」

 「話・・・?」

 「ええ。今日のことについてです」

 「その様子だと何か思いついたんだね?」

 「・・・はい!」


 進藤は自信を滲ませて答えた。


 それから進藤はリチャード達を集めて自分の考えた作戦を説明した。リチャード達は進藤の話を黙って頷きながら聞いていた。


 

 ------------------------------



 

 「・・・・・というのが俺の考えた方法です」

 「なんということだ・・・そんなことが本当に出来るのかね?」


 進藤の話を聞いたリチャードは驚きを隠せないようだった。


 「そこは俺のことを信じてくださいとしか今は言えません・・・でも俺は絶対に失敗するつもりはありません!」

 「そうか・・・」

 「それでリチャードさん・・・図々しいんですが以前のお話で、いつかこの屋敷を建てなおした見返りの件なのですが・・・」


 進藤は少し言いにくそうにリチャードに言った。


 「ああ!もちろん覚えているとも!何か決まったのかね!?」

 「はい・・・すいませんがそのお願い今使わせてください!皆さんの力を頼らせてください!是非ご協力をお願いします!」

 

 進藤は深く頭を下げ懇願した。そんな進藤の肩にリチャードは優しく手をかけた。


 「ふっ・・・頭を上げてくれ。君がそんなことをしなくとも私たちは協力を惜しむつもりはなかったよ。しかしそう改めて頼まれてしまってはこちらもその誠意に答えなければならないな!良いだろう!進藤君!クラウド家当主の名に誓って君の力になろう!一切の出し惜しみはしない!君の為に我が一族の力存分に捧げようじゃないか!」


 リチャードは優しくも力強く言った。


 「はいはい!俺ももちろん協力するよ!任せてよ!」


 デミウスも嬉しそうに手をあげてくれた。


 「ありがとうございます・・・!それではさっそく行動に移りましょう!」

 「ああ!クラウド家の動かせる人員は総動員だ!進藤君の指示に従い行動せよ!」

 『おぉー!!』


 リチャードの号令に従いクラウド家の屋敷の人間は声を上げた。その光景は進藤にとってとても心強いものだった。


 急ぎ準備を整えて進藤たちが向かったのはシルヴェーヌ家の屋敷だった。まだ朝も早い時間で人の姿は少なかった。


 「まずはシルヴェーヌ家の屋敷に突入します!ここでシルヴェーヌ家当主のケイデスさんとセシリアさんを奪還できれば成功です!」

 「うむ・・・しかし明らかに見張りの数が少ないな」

 「そうですね。正直こちらは成功する見込みはあまりありません。しかし可能性は捨てたくなかったので。ここで成功すればそれに越したことはないんですが・・・」

 「そうだな。良し!皆の者!シルヴェーヌ家の中に入れ!当主ケイデスと花嫁のセシリアの姿を探すんだ!」

 

 リチャードの指示のもと屋敷の人間達がシルヴェーヌ家の中に流れ込んでいく。それを迎え撃つは少人数の衛兵だけだ。さしたる支障にはならなかった。


 シルヴェーヌ家の屋敷の流れ込みくまなく部屋を探す。しかし人の姿はなく、まさにもぬけの殻になっていた。


 「・・・やはりもう式が行われる教会に向かった後のようだな。誰もいない」

 「そうですか、やはりそう甘くはなかったですね。すいません俺のせいで無駄足をさせてしまって・・・」

 「いや、いいんだ。僅かな可能性があるのならそれに賭けるのは悪くない。進藤君の言うとおりここで決着をつけられるならそれに越したことはなかったからな・・・しかしこうなったら覚悟を決めるしかないな」

 「ええ・・・そうですね。もう覚悟は出来ていますよ!」

 

 屋敷の捜索は空振りに終わったがそこまで悲壮感はない。これはあくまでも計算の内だった。


 「それでは皆さん、教会の方に急いで向かいましょう!」

 「おーい!こっちに誰かいたぞ!部屋に閉じ込められていたぞぉ!」


 遠くの方から声が聞こえてきた。どうやら誰か見つかったようだ。進藤達は急いで声のする方に向かった。


 「こっちです!」


 男に案内された先は地下だった。階段を下った先にどうやら誰か閉じ込められていたようだ。もしかしたらセシリアかもと進藤は速足で向かった。


 外から強引に開けられてドアノブの壊れた扉を勢いよく開けて中に入る進藤。


 「大丈夫ですか!?・・・っ!?」


 中に入って進藤は目を疑った。そこにいたのはメイド服のまま片腕を鎖で壁に繋がれていたルイズの姿だった。疲弊しきっていて顔色は悪く壁にもたれかかっている。


 進藤は慌ててルイズの元に駆け寄って声をかけた。


 「ルイズさん!!大丈夫ですか!?どうしてこんな・・・!誰がこんなヒドイことを・・・!」

 「進藤さん・・・ですか?どうしてここに・・・?」


 進藤に気づいたルイズ。すっかり衰弱しきっている声だ。一体どれほどの期間ここに監禁されていたのか・・・


 「しっかりしてください!今助けますからね!」


 進藤はすぐに鎖を切るための工具を作り出してルイズの拘束を解いた。


 今にも倒れそうなルイズを抱きかかえる。


 「そうですか・・・セシリア様を助けに来てくれたのですね。あなたならきっと動いてくれると信じていましたよ」


 ルイズはそう言って笑顔を見せた。しかしそれも力が入らないのかたどたどしい。


 「これは・・・ガウェンの仕業ですね!?どうしてルイズさんまでこんな目に!?」

 「あの日・・・進藤さんにご相談した日です。あの日の私の行動はガウェンにバレていたようで私はすぐにこの部屋に閉じ込められてしまいました・・・」

 「あの日からだって!?それじゃあもうほぼ一週間じゃないか!」

 「こんな・・・汚らしいところをお見せしてしまい・・・申し訳ありません」

 

 ルイズは申し訳なさそうに顔を逸らして謝った。


 「そんな謝らないでくれ!ルイズさんは何一つ悪くないんだ!」


 そう言って進藤はルイズを力強く抱きしめた。


 「絶対に・・・セシリアさんは助ける!」

 「進藤さん・・・」


 そう呟きルイズは進藤の二の腕あたりを握った。


 「どうか・・・セシリア様をよろしくお願いします・・・!」

 「ああ!あとは俺に任せてくれ・・・!だからもう安心してゆっくり休んでいいんだよ」

 「ええ・・・あなたのことを信じています・・・」 


 ルイズの手を優しく握り返して進藤は力強く誓った。進藤の言葉に安心したのかルイズは目を閉じて寝息を立てていた。きっと今まで不安でロクに寝ていなかったのだろう。とういうかこんな環境で心休まるはずがない。


 ひとまず命に別状はないようだ。進藤は寝息を立てているルイズの姿を見て胸を撫で下ろした。ルイズをクラウド家の人間に預けて進藤はシルヴェーヌ家の屋敷を後にした。 


 婚約の儀が行われる教会へと向かった。



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