三章 13 『いざ』
「それで今セシリアさんはどこにいるんだ?」
落ち着きを取り戻したルイズに尋ねた。
「セシリア様は現在お屋敷の中に幽閉されています。今は私でも会うことが出来ません・・・」
「幽閉!?一体どうして!?」
「これもケイデス様のご指示なのです・・・婚約の儀までの誰とも会わせないと。ケイデス様ご自身で実の娘を閉じ込めてしまいました」
「絶対そんなのおかしいよ!一体何を考えているんだ!?」
声を荒げる進藤。
「落ち着いてください進藤さん。これはあくまで私の予想なのですが・・・すべては屋敷にリーリッヒ家当主ガウェンが来た日からおかしくなりました。すべての原因はガウェンという男にあると思われます」
「それじゃあそのガウェンという男に会うしかないのか・・・」
「ええ・・・しかし気をつけてください。ガウェンという男、謎が多すぎます。きっとあの男には何か特別な力のようなものが・・・」
ルイズの表情が曇る。
「それってギフトって呼ばれる力のことかい?」
「っ!?ギフトをご存じだったのですか?」
「まあ、何となくなんだけど・・・話を聞く限りやっぱりガウェンという男を調べるのが一番の近道みたいだな」
「進藤さん・・・お願いした立場で言うのもあれなんですが、無茶だけはしないでください。進藤さんに万一のことがあればセシリア様にも会わせる顔がありません・・・」
セシリアのことを心配しているのにその上で進藤の身まで案じている。どこまでやさしい子なんだろうと進藤は思った。
進藤は不安そうなルイズの頭を軽く撫でた。
「俺なら大丈夫だよ。ルイズさんは優しいんだね」
「っ!?な、な、な、何を!?」
進藤に撫でられ慌てふためくルイズ。
「あ、ごめん・・・つい」
「ま、まったく・・・あまり驚かさないでください。私は・・・進藤さんに何かあればセシリア様が悲しむから気をつけてくださいと言っただけです!か、勘違いしないでください!」
いつものルイズの憎まれ口だ。まあ全然嫌な気持ちはしないんだけど・・・セシリアもこんな気持ちだったのかもしれない。
「フッ・・・はいはい。気を付けますよ」
「・・・何を笑っているんですか?」
「ううん、なんでもないよ」
「そ、そうですか。なんだか腑に落ちませんが・・・私はそろそろ屋敷に戻らないとなりません。私も何かあれば再び連絡します。進藤さん、どうかよろしくお願いします」
「ああ!約束だ!これが終わったらまた三人で王都にでも行こうな!」
「そうですね。それはきっとセシリア様も喜ばれると思います。では・・・」
そう言い残しルイズは屋敷へと戻っていった。
「さてと・・・それじゃあさっそく行動しますか!」
一人になった進藤は気合を入れた。
クラウド家の屋敷に戻りリチャードの元を尋ねた。進藤はさっきルイズから聞いた話を伝えた。
「なるほど・・・そのようなことがあったのか。私も考えていたがやはり今回のシルヴェーヌ家の対応はいささかおかしすぎる。やはり相手となるリーリッヒ家当主ガウェンと話をするしかないようだ。ただ進藤君から聞いた話から察するにガウェンが持つギフト・・・おそらく他人の意思に何らかの形で干渉する類のモノなのかもしれないな・・・」
「そんなことが出来るんですか!?」
「不可能・・・とは言えないな。過去にもそういった事例があったのは聞いたことがある。もしかしたら突発的に生まれたギフトなのかもしれないな。進藤君・・・君と同じようにね」
「俺と同じ・・・」
リチャードの言葉でふと考え込む進藤。
ギフトと呼ばれる力は使いようによって善にも悪にもなる。俺のこの力だって使いようによっては大勢の人を傷つけることにだってなるんだ・・・それだけ俺の力の使い方にも責任があるってことか。
改めて自分の特別な力について考えさせられた進藤。
「まあ、それもガウェン本人に会えばわかるだろう。さっそく明日、朝からガウェンに会いに行くとしよう。場所はもう調べてはついている」
さすがリチャードだ、仕事が早い。
「それじゃあ俺も一緒に行きます!」
「ああ、君の助けを待つ人がいるのだろう?一緒に頑張ろうじゃないか!」
「ええ!」
リチャードの差し出した右手を握り返す進藤。二人は硬い握手を交わした。
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翌朝、予定通りリーリッヒ家当主ガウェンに会うために出発する進藤とリチャード。馬車に乗りガウェンの屋敷を目指す。
ガウェンの屋敷は貴族区域の中でも外れの方にあった。広い敷地の奥にひっそりと大きな屋敷が建っている。
「さあ、行こうか」
「はい・・・」
リチャードの後を少しばかり緊張しながらついていく進藤。屋敷の入口に立っている衛兵に話を通す。
「クラウド家当主のリチャードという者だがリーリッヒ家当主ガウェン殿に会いにきた。話を通してもらえるかな?」
「はっ・・・少々お待ちください」
衛兵の一人が屋敷の方に走っていき、少しして戻って来た。
昨日の出来事が思い出される。ここでもシルヴェーヌ家と同じように追い返されるんじゃないだろうか?そんな不安が脳裏をよぎった。
「中でガウェン様がお待ちです。どうぞお入りください」
「・・・そうか。ありがとう」
衛兵の答えは予想外。意外にもあっさり面会を許可された。これには少しリチャード自身も驚いた様子だった。
しかし、このあっさりな感じが逆に進藤にとっては嫌な感じだった。不気味さすら感じる。
これは余裕の表れなのか?俺たちと会ったところで結果は覆せないとでも言うのか?
進藤は少し不安になりそうな気持を奮い立たせるように力強く拳を握りガウェンの屋敷の中に入って行った。




