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三章 12 『主従と信頼』


 闇夜に薄っすらと浮かび上がるメイド服姿。進藤の口を手で塞ぎながら周りを警戒している素振りを見せるルイズ。誰もいないことを確認して進藤の口から手をどける。


 「突然の無礼失礼しました・・・時間があまりないので申し訳ありません」

 「い、いや、全然良いんだけど・・・どうしてここに!?」

 「ここにいればもしかしたら再び会えるかもと思いお待ちしていました。まさか本当に会えるとは・・・やはりこれもセシリアお嬢様のご加護のおかげでしょう」

 「え?なんて?」

 「いえ・・・こちらの話です」


 見たところいつも通りのルイスの様子を見て進藤もとりあえず一安心した。


 「そっか・・・そうだ!さっきセシリアさん達に会う為に屋敷に行ったんだけどみんな忙しいから会えないって断られて帰って来たところだから会えて良かったよ!」

 「屋敷に・・・ですか?一体どうして?」

 「どうしてって・・・セシリアさんが急に結婚するって聞いて、なんかその・・・気になってというか、なんというか・・・」


 ルイズの問いに進藤は上手く答えれなかった。まさか写真のセシリアの表情が気になったからなんて気恥ずかしくて言えなかった。


 「そうだったんですか。もうご存じだったのですね・・・それなら説明の手間が省けます。進藤さん、私がここであなたを待っていたのもそれに関係することなのです!」

 「セシリアの結婚と・・・?」

 「こんなことをあなたにお話するのはお門違いかもしれません・・・これはきっと私の一方的なわがままです。しかし今の私にはあなたしか頼れる人がいないのです!」


 ルイズのただならぬ様子。


 「・・・わかった。俺に出来ることがあるのなら言ってくれ!」 

 「わたしの・・・話を聞いてくれるのですか・・・?」

 「ああ!俺だってここで道に迷っているときに助けてもらったんだ。困った時はお互い様だよ!」

 「ありがとうございますっ・・・!」


 進藤の言葉を聞いてルイズは安心した表情を見せた。


 「それで・・・話っていうのは?やっぱりセシリアさんの結婚の話に関係してることなんだよな?」

 「ええ。おそらくもう知っているかもしれませんが、今回の縁談は決して望まれたものではありません。この婚約は絶対に阻止しなければならないのです!」

 「やっぱりそうだったのか・・・一体何があったんだ?」 

 「ある日突然その男は屋敷にやってきました・・・リーリッヒ家当主ガウェン、その男は面識もなかったのですが『セシリアを嫁に欲しい』と要求してきたのです」

 「そ、そんな要求ありえるのか!?」


 驚く進藤。いくらなんでもそんな求婚方法聞いたこともない。


 「もちろんあり得ません。ただセシリア様はその容姿もあり婚約を求めてくる人間も多いことは事実でした。今回もその類の人間が少々過激な方法でセシリア様と婚約を求めてきたのだと思っていました。軽くあしらわれて終わりだと・・・」

 「少々過激ってレベルじゃないと思うけどな・・・でも、それがどうして婚約するに至ったんだ?」

 「それがわからないのです・・・なぜかそのガウェンという男はどういう方法を使ったのか、セシリア様のお父様であるケイデス様に取り入りセシリア様との婚約を取り決めてしまったのです!」

 「それはセシリアさんは了承してないんだよね・・・?」


 ルイズは顔を縦に振る。


 「もちろんです。今回の話はセシリア様の意思とは無関係に進んでいったものです」

 「その、ケイデスさんってそんなに強引な人だったりするのかい?」

 「いいえ!ケイデス様はとてもお優しく私達、使用人にも対しても分け隔てなく接してくれる方です。セシリア様の意思を無視して話を進めるなんてあり得ません!ガウェンという男が現れてケイデス様は変わってしまいました・・・何かに取り憑かれたかのように無表情になりセシリア様の話も聞かずに婚約を決めてしまいました」


 無念そうな表情を見せるルイズ。それだけケイデスに対しても信頼をしていたのだろう。


 「そしてとうとう一週間後に婚約の儀が開かれてしまいます・・・そうなってしまってはもう取り返しがつきません!だから進藤さん!どうかそれまでにセシリア様の婚約を止めていただけませんか!?このままではセシリア様は不幸な人生を送ってしまうことになります・・・!」

 

 ルイズの決死の表情、瞳にはうっすらと涙のようなものが見えた気がした。


 いつもセシリアに対してツンツンしていたルイズの姿はどこにもない。ただ心の底からセシリアの心配をしているのが伝わる。


 進藤に対して頭を下げるルイズ。


 「お願いします・・・!無理を言っているのは重々承知しています!しかしこのようなことをお願いできるのは貴方しかいないのです!私に出来ることならなんでもしますっ!貴方が望むなら私のこの身を一生捧げても構いません・・・!なので・・・セシリア様をどうか・・・助けてください・・・!」

 

 涙ながらに懇願するルイズ。何をおいてもセシリアの身を案じているのだろう。そのためなら自分がどうなっても良いと覚悟をしている。


 「・・・ルイズさん、顔をあげてください」

 「進藤さん・・・」

 「わかりました!俺に何が出来るかはわかりませんが・・・セシリアさんの結婚なんとしても阻止して見せます!」

 「ほ、本当ですか!?」

 「ええ。こんなに身近な人が悲しんでいるんだ。やっぱり結婚って言うのは周りからも望まれてするのが一番良いはずです・・・って結婚もしたことない俺が言うのは変ですけどね。ハハハ・・・」

 「ありがとうございます・・・!なんてお礼を言えばいいか・・・」

 「そんなお礼なんていいですから・・・だからもう泣かないでください」


 そう言って進藤はポケットからハンカチを取り出してルイズに渡した。


 「な、泣いてなんていません!これはきっと進藤さんの見間違いですっ・・・こんなに暗いから勘違いなさったのですね!けど・・・一応それはお借りしておきます」


 強がりながらも進藤のハンカチを受け取るルイズ。


 




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