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三章 5 『疑念』

 

 湖の畔で進藤を挟むようにサラスとアイリスが対面した。

 

 「驚いただろうけどアイリスの家の水道がちゃんと出るのはこのサラスの女神の加護ってやつのおかげみたいなんだ。だからその加護を受けるためにこうして定期的にお供え物を持ってくる約束をしてたんだよ」

 「そっか・・・それで進藤お兄ちゃんが全然お供え物を持って行かなかったから水道の勢いが弱くなっちゃんだね!」

 「うん、まあ・・・そんなところ」

 

 無邪気に真理をついてくるアイリス。


 「そうなのよ!この男ったら釣った魚には餌をやらないタイプよきっと!アイリスちゃんだっけ?あなたも気を付けた方がいいわよ?」

 「へ、変なこと言わなくていいんだよ!俺も色々立て込んでいたんだよ・・・だから今度からそうならないようにアイリスを今日は連れて来たんだよ」

 「私・・・?」

 「うん、もしかしたらまたここに来れなくなる時があるかもしれないからその時はアイリスが俺の代わりにサラスにお供え物を持ってきてくれるか?」

 「うん!良いよ!!まさか女神様に会えるなんて思ってもみなかったもん!私で良ければいつでも持ってくるよ!」

 

 アイリスは進藤の申し出にも一切嫌な顔もせずに承諾してくれた。進藤の不思議な力を見せた時もそうだがアイリスはこういった事態への対応力はずば抜けているのかもしれない・・・まあそのおかげでスムーズに話を進めることが出来るのだけど。


 「ほっっんと優しくて良い子ね!こんなかわいい子が持ってきてくれるのなら私も嬉しいわ!改めてこの湖の女神をしてるサラスよ!よろしくね」

 「はいっ!アイリスです!こちらこそよろしくお願いします!」


 アイリスとサラスは笑顔で握手を交わした。


 「ほらサラス、いつもみたいにワイン一気飲みしても良いんだぞ?」

 「ちょ、ちょっと!私、神聖な女神よ!?そんなはしたないことするわけないじゃないの!もう変なこと言わないでよぉー!?」

 

 そう言ってサラスはワインをグラスに注いで上品に飲んで見せた。


 「・・・おい、手つきが不自然だぞ」

 「んん?何のこといつも通りじゃない?ちょっと進藤君、あんまり変なこと言うと水道止めるわよ?」

 「・・・すいません、調子に乗り過ぎました」

 「アハハ、進藤お兄ちゃんもサラスさんも仲良いんだね!」

 

 夫婦漫才さながらのやり取りを見てアイリスが笑う。


 それからもアイリスとサラスは親しくなるのに時間はかからなかったようだ。すっかり姉妹のように仲良くなっていた。サラスが姉でアイリスが妹と言ったところだろう。サラスも同性の話せる相手が出来て嬉しそうだった。


 「よし、お供え物も渡したことだし今日はそろそろ帰ろうか?」

 「うん、サラスさんまた来るからね!」

 「そう・・・楽しみに待ってるわ」


 別れの時間が来て寂しそうなサラス。


 「・・・そんな顔するなよ。またすぐ来るからさ!」

 「そうだよ!私も忘れずに来るからね!またたくさんお話しようね!」

 「そ、そうね!また従順な信徒を一人増やしてしまったわ!私って罪な女神なのよね・・・!」


 少し顔を赤らめ強がるサラス。


 「フッ・・・この調子で信徒を増やしていこうな?」

 「もう!なんだか人に言われると恥ずかしいじゃない!」

 「ハハ、悪い悪い・・・そうだ!サラスに聞きたいことがあったんだよ」

 「え?私に?何なの?」


 進藤は思い出したようにサラスに尋ねた。


 「サラスって『ギフト』って聞いたことあるか?」

 「ギフト・・・?何それ?」


 サラスは『ギフト』という言葉に思い当たる様子は無いようだった。


 「俺も詳しくは知らないんだけどさ・・・聞いた話によると貴族の生まれた人間に多く現れる特別な力みたいなんだよ」

 「そうなんだ・・・ごめんなさい。正直私も貴族に生まれた娘だけどそんな話を聞いたことはないわね。ただ・・・」


 そう言ってサラスは何か思い出したようだった。


 「ただ・・・?」

 「そう言われればなんだけど私の父はどこか不思議な人だったと思うわ」

 「不思議?どんなところが?」

 「その・・・うまく説明できないんだけど、父が屋敷で何かお仕事の話をしてたのを見たことがあったの。そしたらやたら父の話し相手は聞き分けが良いのね。相手の表情はまるで父に心酔しきっているみたいな。父に反論するような人を見たことはなかったわ、あの日まではね・・・」

 「サラスさん・・・?」

 

 そう言ってサラスの表情が曇った。アイリスもその変化に気づいたようだった。


 しまった・・・サラスの嫌な思い出を思い出させてしまった。後悔する進藤は慌てて話を逸らす。


 「そ、そっか!変なこと聞いて悪かったな!・・・そうだ!また近いうちに王都に行こうな!今度はアイリスも一緒にな!」

 「王都!?うん!行くわ!アイリスちゃんも一緒なんて最高ね!むしろアイリスちゃんだけで良いくらいかも!」

 

 曇っていたサラスの表情が王都の単語で一気に晴れやかになった。


 「おいおい・・・それはあんまりだろ?」

 「私もサラスさんと一緒に王都に行くの楽しみ!」


 アイリスも喜んでくれた。


 「よし!それじゃあ近いうちに三人で行こうな!三人でな!」


 大事な事なので二回言った。


 「うん!」

 「そうね!」


 サラスの機嫌も直ったところで湖を後にした進藤たち。サラスが名残惜しそうに手を振ってくれていた。それにアイリスも笑顔で手を振り返していた。


 「どうだ?サラスとは仲良くなれそうかい?」

 「うん!あんな綺麗な女神さまがいるなんてびっくりしたけど、とっても良い人みたいだし会えて良かった!」


 どうやらアイリスもサラスのことを気に入ってくれたようで何よりだった。


 しかし進藤の中でサラスの発言が気になっていた。サラスの父親の不思議な力・・・おそらくはギフトが関係しているだろうと考えた。この不思議な力『ギフト』についてはまだわからないことが多すぎる。


 ・・・リチャードさんが言っていた占い師のリサって人に会いに行くか。


 このギフトについて少しでも知るために占い師リサのもとを訪ねることを決めた進藤であった。 




  

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