三章 4 『天使と女神』
王都から帰宅した進藤は数日ほど平穏に日々を過ごしていた。色々あってアイリス達と一緒に過ごす時間も減っていたので今まで手伝えなかった分を取り返すべく一生懸命家事の手伝いに精を出していた。
「こうして進藤お兄ちゃんと一緒にお手伝いするのもなんだか久しぶりだね!」
進藤と共に庭の草むしりをしていたアイリスが笑顔で言った。頬に土をつけている。
「おいおいアイリス、頬が汚れちゃってるよ」
そういって進藤はアイリスの頬を拭いた。
「あ、そう?ありがとう!」
「確かにアイリスの言うとおり最近は家にあんまりいなかったからな。その間アイリスには俺の分の仕事までさせちゃったな・・・俺もサボってた分早く取り返さないとな!」
「ううん!進藤お兄ちゃんは私達のために色々してくれてたの知ってるもん!そのおかげでお父さんも安心して王都に行ってるみたいだし、全部進藤お兄ちゃんのおかげだよ!」
相変わらずのアイリスの癒し効果は凄まじい。この笑顔の為ならどんな重労働も頑張れる気がする。
「そっか・・・シルバも色々大変だったもんな。まあクラウド家も二度としないって約束してくれたし大丈夫だろ!これからは俺もバリバリ働いちゃうぞ!」
進藤は腕に力を入れて気合をアピールした。
「アハハ、そんなにはりきらなくても大丈夫だよ!・・・あっ!そういえば進藤お兄ちゃんに言わないといけないことがあったの!」
突然何かを思い出したようなアイリス。
「ん?どうしたんだ?」
「えっとね、なんだか最近進藤お兄ちゃんの作ってくれた水道の調子が悪いみたいなの・・・なんだか勢いが少なったような気がして」
「え?水道が・・・?」
アイリスに言われ進藤は庭に立ち上げた水栓柱の所に行ってみた。確かに蛇口をひねると以前のような水圧が無くなっているようだった。
「ね?前はもっと勢いよく出てた気がするの!これってどこかおかしくなっちゃたの?」
「そうだな・・・これはあれだな。故障っていうよりヘソ曲げてるんだな」
「え?おへそ・・・?」
進藤の言うことがよくわからないみたいのアイリスは不思議そうな表情をした。
「そういえば約束の供え物持って行ってなかったな・・・よし今日は行くか!」
「進藤お兄ちゃんまたどこか行っちゃうの?」
アイリスが少し不安そうにいった。また進藤がしばらくいなくなってしまうのかもと心配しているようだ。
「ん?湖までちょっとね・・・って、そうだ!アイリスも一緒に行くかい?」
進藤はあることを思いついた。
「・・・!?!うん!アイリスも一緒に行く!」
「よし!そうと決まればさっそくお出かけだ!」
「やったー!!進藤おにいちゃんと久しぶりのお出かけだー!」
嬉しそうに軽快に飛び跳ねるアイリス。それから二人は準備をして馬に乗り湖に向かった。お決まりの赤ワインとパンを持って。
「なんだか久しぶりにこっちに来たような気がするよ!」
「そういえば水汲みしなくて良くなったからな。わざわざここまでくる必要もなくなってしまったもんな・・・でもこれからはアイリスも湖にちょこちょこ来るようになるかもな?」
「え?湖に・・・?」
「ああ。ちょっとアイリスにもいい機会だから紹介したい奴がいるんだ!」
「紹介したい人・・・?湖に誰かいるの?」
「それは湖に着いてからのお楽しみだよ!」
そんな会話をしながら湖を目指す進藤とアイリス。しばらくして湖に到着した。
「わぁー!!おっきい湖だね!」
目の前に広がる湖の大きさに感動しているアイリス。
「あれ・・・?進藤お兄ちゃん何してるの?ワインとパンを並べてどうしたの?」
「まあ見てなって、これが大事な事なんだ」
そう言って祈りを捧げる進藤。少しして湖の水面から勢いよくサラスが飛び出してきた。
「もう・・・おっそーい!!全然来ないから待ちくたびれちゃったわよ!」
予想通り進藤がお供え物を持ってこないのに対してご機嫌斜めの様子のサラスだった。
「悪い悪い、ちょっと色々あったんだよ。だからって水道の勢いを弱くしなくってもいいだろ?」
「だってー湖の女神の加護があってこそのお水なんだからね?それを忘れちゃってるんじゃないかなーって思って・・・あれ?」
アイリスの姿に気づいた様子のサラス。
「湖の中から女の人が出て来た・・・?」
アイリスも湖の中から姿を見せたサラスを見て驚いているようだった。
「ちょ、ちょっと!初めて見る子がいるじゃないの!聞いてないんですけど・・・!そうとわかってらもっと優雅に出て来たのに!もう一回やり直してもいいかしら!?」
アイリスの姿を見て慌てるサラス。
「いやもうやり直さなくてもいいから・・・この子は俺がお世話になってるお家の娘さんだよ。名前はアイリスって言うんだ」
「あ!アイリスです!初めまして・・・」
アイリスは進藤の言葉に続くように戸惑いながら自己紹介をした。サラスの方を不思議そうに見つめている。
「それで今湖の中から現れたこの女の人は、この湖の女神のサラスって言うんだ」
「湖の女神様・・・?」
いまいち状況が理解できていない様子のアイリス、無理もない。
「そうよ!私がこの湖の女神サラスよ!・・・ってなんだか調子狂っちゃうわよ。どういう風に
接したらいいのかしら?」
「別に普通で良いだろ?そんなに気張らなくても・・・アイリスびっくりしただろうけど、悪い奴じゃないから。良かったら仲良くしてやってくれよ」
「う、うん!女神様なんてすごい!!それにすごい綺麗な人!!こんなに綺麗な女の人初めて見た!」
サラスの姿を見てアイリスは興奮気味に言った。
「ちょっとこの娘、すっごいいい子じゃないのよ!っていうかよく見たらすっごい可愛い顔立ちしてるし!ああん!抱きしめたくなるよう可愛さね!」
サラスもアイリスのことを気に入ってくれたようだった。どうなるかと思ったけど強引にアイリスとサラスを出会わせて良かったと進藤は思った。




