二章 21 『ギフト』
すぐにでもリチャードが謝罪をしたいというのでクラウド家の馬車に乗せてもらいアイリス達に会うべく進藤は帰宅した。
馬車の道中でリチャードとデミウスと共に様々な話をした。
「俺も一緒に乗せてもらって申し訳ないっす・・・」
「全然構わないさ。君とは色々と話を聞いてみたかったんだ」
「話・・・ですか?」
内心何を聞かれるのだろうとドキドキした進藤。さまざまな理由はあったにしろ屋敷を壊した張本人だ。せめて何を聞かれても正直に答えようと、それが今の自分にできる誠意だと考えた。
「ああ。まず君が私達の屋敷を壊したと言っていたが---」
「すいませんでしたぁ!!」
リチャードが言い終わる前に謝る進藤。
「ハハハ、それは別に良いんだよ。それで私が聞きたいのはその方法なのだが・・・」
「壊した方法ですか?」
「ああ。屋敷を一人で跡形もなく壊すなど常人には到底無理な話だ。しかしそれを君はやってのけたという。一体それはどういう方法だったのだい?」
「えっと・・・それはですね、ある機械を使ったのですが」
「それってあの庭にあった巨大な奴のことかい!?」
目をキラキラさせながらデミウスが聞いてきた。進藤の話に興味津々のようだ。
「そ、そうです。あれを使って屋敷をその・・・なんというか・・・壊させてもらいました」
「そんなに委縮する必要はないさ。しかしあの巨大なものは一体何だったんだ?あんなものは今まで見たことはないのだが?君の発明したものなのかい?」
「発明ってわけじゃないのですが・・・作り出したのは俺です。その変なことを言っているとお思いかもしれないですが・・・俺には不思議な力があるみたいなのです」
「不思議な力・・・?」
リチャードとデミウスは不思議そうな表情をしている。進藤は思い切って自分のこの不思議な力について話してみることにした。
「ええ・・・とりあえず見ててください」
そう言って進藤はリチャード達の目の前で工具を作り出して見せた。それはこの世界にはない電動工具の電動ドライバーだった。
「おお!?これは・・・!」
「へぇ!凄いね!!」
進藤の能力を目のあたりにした二人が驚いて感心したように声をあげた。
「こんな力が俺にはあって・・・あの巨大な機械もこの力で作り出したんです」
「なるほど・・・それなら君が屋敷を一人で壊したというのも納得がいく。君はそれがどういう類の力か理解しているのかい?」
「いや・・・正直自分でもよくわからないまま使ってるんですよ」
「そうか。おそらくそれはギフトというものだろう」
「ギフト・・・?」
リチャードの口から出た単語にキョトンとする進藤。リチャードはさらに続けた。
「そうだ。この世界には生まれつき特別な力を宿す人間達がいる。その力のことを神から贈られた力・・・『ギフト』と我々は呼んでいる。主に貴族と呼ばれる家系に多いんだ」
「貴族・・・それじゃあリチャードさんもそのギフトと呼ばれる力をお持ちなんですか?」
「ああ。我がクラウド家では代々ギフトを受け継ぐ習慣があってな。それぞれの当主がギフトを所持している。私のギフト名は『経済把握』と呼ばれるものだ。このギフトがあれば経済の流れを正確に察することが出来る。どうすればよい方向に経済が動くかを知ることができるのだ」
「そんな力が・・・」
進藤はリチャードの説明に驚きを隠せなかった。
「この父のギフトのおかげで僕たちは予定を速めに切り上げて帰って来たんだよ」
デミウスが補足を入れるように言った。
「ギフトのおかげ?」
「そうさ。本来はまだ屋敷に帰るつもりはなかったのだが、王都の市場でなにやら不穏な流れがあると脳内で感じることができたのだ。それでその理由を確かめるべく帰ってきたというわけさ。まあ不穏な動きの正体がまさか自分の息子だとは思わなかったがね・・・」
リチャードは苦笑いしていた。
「そのギフトってやつをそのデミウス・・・さんも持っているんですか?」
「デミウスで良いよ!残念だけど僕はまだギフトは持っていないんだ。僕がギフトを持つのは父がクラウド家当主を僕に譲る時だからね」
「ギフトって人にあげたりできるんですか?」
「それはギフトの種類によるな。さっきも言ったがクラウド家では当主しかギフトを所持できない。当主を引き継ぐときに代々語り継がれている儀式を行うことでこの『経済把握』を次の当主に渡すことができるのだ。おそらくほかの家系でも同じようなギフトを受け継いでいる貴族は多いと思うが・・・その実態はよくはわかっていない。ギフトを公にすることはその家系の強みをばらすことになるからね」
「え?それって俺に話すこともまずかったんじゃ・・・!?」
慌てる進藤。
「ハハハ、私の場合は別に良いんだ。クラウド家のギフトは割と有名だし、そのおかげで市場の管理を任されているという面もある。このギフトのおかげで庶民も安心して市場で商売が出来ているというわけなのさ」
「なるほど・・・しっかり経済の流れを知る力をもっている人が管理しているのなら変にぼったくりをされるような心配もないってことですね?」
「まあ簡単に言えばそんなところだね。だからこそ・・・今回のダリアがしたことは許されることではないのだよ。」
リチャードの声が深刻さを増した。
「ダリアのしたことはクラウド家を信用して市場を使ってくれていた庶民に対しての裏切りだ。到底許されることではない。だからこそ私は直接謝罪をする必要があるのだ・・・!」
リチャードの目は真剣そのものだった。それはデミウスも同じだった。それだけクラウド家は市場の管理に情熱をもって向き合っていたのであろう。ダリアに対してのリチャードの行動もこの話を聞けばうなずけた。
「そうだったんですか・・・きっと二人が話してくれたらシルバもアイリスも絶対に喜んでくれるはずですよ。みんな良い人ですから」
「そうだとありがたいがな・・・それで進藤君、君はどこかの貴族の生まれなのかい?」
「いや別にそう言うわけではないんですが・・・」
「そうか。まれに貴族の家系以外でも突然ギフトを持って生まれる人間もいると聞く。もし君が自分の力について知りたければ王都の中にいる占い師をしている女性を訪ねると良い」
「女性の占い師ですか・・・?」
「ああ、彼女の名はリサ。彼女は他人のギフトがどういう物か詳しく教えてくれる力を持っている。それが彼女のギフトなのだろう。もしその気があれば私が会わせてあげよう」
「是非願いします!!」
進藤は力強く返事をした。まさか自分のこの不思議な力について知れるかもしれないチャンスがくるとは思わなかった。
「わかった。いつでも言ってくれるといいさ。私もしばらくは王都にいるつもりだから」
「まあうちの屋敷はなくなっちゃったけどね!」
デミウスが悪戯っぽく言った。
「す、すぐに屋敷は直しますから!」
「ハハハ、冗談だよ!王都の宿を抑えたからそんなに焦んないでも大丈夫だって!」
「デミウス・・・あまり進藤君を困らせるなよ。さて、そろそろ到着したようだな?」
そんな会話をしているうちに進藤たちはアイリス家の到着した




