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二章 20 『クラウド家』


 「さてと勢いで殴り倒しちまったけど、このままこいつをほっとくわけにはいかないよな・・・とりあえず叩き起こしてシルバが市場で商売できるようにしてもらわないとな」


 白目を向いて倒れているダリアを進藤が起こそうとした。そのとき声が聞こえて来た。


 「これは一体なんの騒ぎだ!?」

 

 声のする方を振り返るとそこにはシルバと同じくらいの年齢の男が立っていた。黒いタキシードを着こなしたダンディな男だった。その後ろには若い男がいた。まるでダリアを痩せさせてスッキリさせたイケメンがいた。


 二人の男は進藤の所に近寄ってきた。

 

 「これは・・・君の仕業か?」

 「ええっと・・・まぁ・・・そんなところですね」


 タキシードの男は進藤に向かって顔をしかめながら言った。鋭い眼光で進藤を見つめている。


 「わぁ・・・ダリア見事に気絶しちゃってるね。屋敷も跡形もなくなっちゃってるよ!これ全部君がやったの!?」

  

 若い方の男はなんだか楽しそうにしていた。

 

 「全部俺がやったことだ」

 「へぇ!すごいねぇ!一体どうやったのさ!?」

 「デミウス・・・今は私が話をしているのだ」

 

 楽しそうに話をしている若い男を制止するタキシードの男。


 「はーい・・・それにしても凄いな。僕らの屋敷が見事に無くなってるよ」

 「・・・と、父さん!!それにデミウス兄さんも!ど、どうしてここに!?」


 目を覚ました様子のダリア。二人の姿をみて驚き叫んでいる。どうやらこの二人はダリアの父と兄らしい。


 「気づいたかダリア。これは一体何があったのだ?」

 「こ、こいつが全部やったんだよ!いきなり乗り込んできて屋敷をぶっ壊し始めて俺のことも殴りやがったんだよ!」

 「いきなりじゃねーよ!お前がシルバの商売を邪魔しやがったからその話をしに来たんだよ!まあここまでしちまったのはあれだけどよ・・・」

 「商売の邪魔だと・・・?ダリア一体どういうことだ?」


 進藤の言葉に何か引っかかったのかダリアの父がダリアを問いただす。


 「え!?いや・・・その・・・それは」


 父の質問に冷や汗を流しながら言葉を濁すダリア。


 「ダリア、父さんに隠し事したって無駄な事くらわかるだろ?正直に話した方がいいぞ?」

 「これは違うんだ!そのちょっと市場の取引を制限したっていうか・・・」

 「制限しただと?お前に一体なんの権限があって市場の決まりを変えることができるのだ?いつからそんなにお前は偉くなったのだ?」

 「ヒィ・・・!」


 

 ダリアを厳しく睨みつけるダリアの父。その様子にダリアは委縮しきっている。以前の威勢がどこに行ってしまったのか・・・


 「君は・・・名を何というのかね?」

 「俺は進藤って言います」

 「進藤君か・・・私はこのダリアの父で現クラウド家当主、リチャードという。すまないが今回の経緯を私に教えてくれないだろうか?」

 「はぁ・・・まあ別にいいですけど」


 進藤はこうなった事の顛末を説明した。アイリスとの一件のことからシルバが市場で牛を売れなくさせられてしまったことなどを出来るだけ詳しく話した。それをダリアの父リチャードははただ「うむ」「なるほど」などと相槌をうちながら聞いていた。


 「・・・そうか、おおよその内容は理解した・・・ダリア」

 「は、はいっ!!」

 「お前・・・自分が何をしたか理解しているのだろうな?」

 「・・・・はい」

 

 正座でうつむき震えながらダリアが返事をしていた。


 「私が留守の間に庶民に横暴なふるまいをしただけではなく、権力を乱用して本来平等であるはずの市場の在り方を損なわせたその罪どう償うつもりだ?」

 

 低く淡々とリチャードが言った。その振る舞いは威厳に満ちていた。


 「か、返す言葉もありません・・・」


 今にも消え入りそうな声のダリア。

 

 「まさかこのような事態になっているとはな・・・嫌な予感がしたのだが、どうやら予定を切り上げて帰ってきて正解だったようだ。ダリア、お前を我がクラウド家から追放することとする!二度とクラウド家の名を名乗ることは許さぬ!」

 「そ、そんな!!この通り反省しておりますのでどうかそれだけは・・・!!」


 そう言いながら地面に頭をこすりつけるダリア。


 「無理だってダリア。父さんが一度命令したことは絶対だよ?それがクラウド家の掟だったでしょ?諦めるしかないよ」

 「デミウス兄さんまで・・・!そんな・・・ヒグッ・・・!ヒック・・・」


 鼻水を垂らしながら泣きじゃくるダリア。貴族として威張り散らしていた姿はもう何処にもなかった。


 「さあ、はやくこの敷地から出て行け!」

 

 リチャードは泣きじゃくるダリアを見ても態度一つ変えることはなかった。そんなリチャードの姿を見て観念したのかダリアはフラフラと力無く立ち上がり屋敷の外の方へ歩いて行った。


 「そして進藤君だったね。どうやらうちの馬鹿が迷惑をかけたようだね?どう謝罪をして償えばいいか・・・」


 リチャードは進藤に対して頭を下げた。その頭を下げる姿は誠意にありふれた姿だった。なぜこの父からあんな息子が育ったのか不思議でならなかった。


 「い、いえ!そんなお父さんが謝ることはありません!自分も正直やりすぎたと思っています・・・その・・・すいません!」


 リチャードの姿を見て進藤も慌てて頭を下げた。怒りが収まり冷静に考えて屋敷をぶっ壊したのはやりすぎたことだと反省した。


 「フッ・・・面白い男だな。ここまで大胆なことをした君のことだ。何かもっと要求してくると思ったが・・・」

 「そんなとんでもない!その、屋敷を壊したことは謝ります」

 「まあ屋敷のことはどうでもいいさ。壊れたものは直せばいい、しかしそんな君にここまでのことをさせたのは愚息の行為だ。どうかそのシルバという男性とアイリスという少女にも謝罪をしたい」

 「そんな!そこまでしてもらわなくても・・・!俺はまたシルバが普通に市場で商売が出来るようになればそれで満足ですから!」

 「それでは私の気が済まないのだ。クラウド家の当主として末代まで恥を残したくない。どうかこの通りだ」


 そう言ってリチャードは再び頭を下げた。


 「進藤君、父は一度口にしたことは絶対やり通すんだよ。ここは父の頼みを聞いてくれないかな?」

 

 デミウスが少し笑いながら言った。


 「・・・はぁ。わかりました。それじゃあシルバとアイリスを紹介します。そのかわり俺の頼みも聞いてもらってもいいですか?」

 

 リチャードの頑固さに折れた進藤。


 「なんだい?私にできる範囲で良いなら聞こう」

 「この壊れた屋敷を俺に建て直させてください!」

 「屋敷を・・・?それが君の頼みなのかい?」


 進藤の言葉を聞いて少し驚いた表情のリチャード。


 「ええ!そうです!元の屋敷よりも立派なものを作って見せます!」

 「ほう・・・そこまで自信満々にいうのなら是非、君に屋敷の再建をお願いしてみようじゃないか!」

 「ありがとうございます!必ず良い物を作りますので!」

 「ああ。期待して待つとしよう・・!」


 そう言って進藤とリチャードは握手を交わした






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