二章 19 『制裁』
今すぐにでもダリア達の所へ突撃したい衝動を抑えて進藤は天井裏を這いずり回りりダリア家の屋敷を調べた。
「せいぜい今夜は最後の晩餐を楽しんでいるがいいさ。明日には絶望を思い知ることになるんだからな。フフフ・・・!」
暗闇の中で進藤は不気味な笑みを見せていた。
翌朝――
朝日が昇り快晴の空。
ウォーン!ウォーン!ウォーン!!----
ダリアの屋敷中にけたたましい音のサイレンのような警報音が鳴り響いた。
「なんだ!?何の音だ!?」
「一体何が起きた!?」
鳴り響く音に驚いた屋敷の人間がぞろぞろと外に出て来た。執事やメイド、料理人などの様々な姿の人間が出てくる。この屋敷に仕えていた人間達だろう。その中にダリアの姿もあった。
「まったく・・・朝から一体何の騒ぎだ!?」
寝起きなのか不機嫌な様子のダリア。
「ハッ、ダリア様。なにやら不思議な音が屋敷に鳴り響いてまして、現在原因を調査中です。ダリア様は安全な場所に避難してくださいませ」
執事の服装をした男がダリアに報告していた。
「早く何とかしろよ!・・・ん?これはなんだ?」
「わかりません・・・庭やあちこちに置いてあるのですが、看板のようなものですかね?」
ダリアの屋敷の庭に無数に置かれた看板。看板には『➡この先避難場所』『↑このまま直進』などかかれていた工事看板が置かれていた。
「何なんだこれは!?一体誰の仕業だ?このうるさい音も一体なんなんだ!?
「はーい、お前らはここで行き止まりでーす」
ダリアの前に進藤が工事看板の裏から赤く光る誘導棒を振りながら姿を現した。
「お前の仕業か!このうるさい音も!この意味不明な看板も!」
「これはな、本来危険を知らせるための警報音なんだよ!そしてこの看板は人を避難させるために俺が用意した工事看板だ。もっともお前は行かせないがな?」
「お前・・・!」
ダリアの前に進藤が工事看板の裏から赤く光る誘導棒を振りながら姿を現した。
「よう、また会ったな。昨日は随分盛り上がっていたみたいだな?気分はどうだ?」
「一体どこから入ってきた!?おい!こいつを捕まえろ!」
「お、おう!!」
取り巻き達に指示を出すダリア。取り巻き達が進藤を捕まえようと走ってきた。
「ふん・・・ほらこっちだよ!」
「待ちやがれ!」
進藤は振り返り走り出した。向かった先はダリアの屋敷の庭にある木が無数に植えてある森のような場所だった。
「何処に行くつもりだ!」
「そんなに慌てなくても逃げやしねーよ」
「何・・・?」
森に入り込んだ進藤。少しして何かが森から出て来た。
「な、なんだこれは・・・?」
森から出てきたものを見て驚くダリアとその取り巻き達。
「さてと・・・ここからが本番だぜ!覚悟しな!」
森から姿を見せたのは進藤の作り出した大型重機。ショベルカーの先の部分がクレーンゲームのアーのような爪の形をしている機械だった。キャタピラを回転させながら木をなぎ倒し進んでいく。その見たこともない機械と巨大さにただ見上げるだけのダリア達。
ビィイイイイ!!ビィイイイイ!!
「ほらほら!ボケっと突っ立てると巻き込まれちまうぞ!」
クラクションを鳴らし運転席から拡声器を使いで進藤が叫んだ。
「ふ、ふざけんな!!なんだこれは!?降りてきやがれ!」
「はいはい、どいてねー。死にたくない人は離れてねー」
ダリアが叫んでいる。そんな言葉には耳も貸さず進藤はダリアの屋敷に向かって機械を進めていく。
機械のアームが屋敷に届く場所までたどり着いた。そして進藤がダリアに向かって拡声器を向けた。
「おいダリア!最後の忠告だ!シルバとアイリスに土下座して謝れ!そして二度と姿を俺らに見せるな!そうすればここで辞めといてやる!」
「なんだとぉ!?なぜ俺が謝る必要がある!貴様らが貴族である俺に平伏すのが当然だろうが!お前こそ、今すぐここに降りてきて土下座しやがれ!」
進藤の忠告にもダリアは態度を改めようとはしなかった。
「・・・そうかい。じゃあ仕方ねーな!これでも喰らえ!」
進藤は機械の爪を大きく開きダリアの屋敷の壁を掴んだ。屋敷の壁は爪に押しつぶされるように粉々に崩れ落ちて行った。
「なっ・・・!?お前!俺の屋敷に何しやがる!」
「何って、見ての通りぶっ壊してんだよ!お前のような勘違い貴族の屋敷なんて俺が跡形もなく粉々に解体してやるぜ!オラぁ!」
続いて屋敷の壁を解体していく進藤。屋敷の壁が崩れ落ちて行って中の部屋の様子が外からも見えるようになっていった。
「中にいる皆さーん!速やかに外に逃げてください!この屋敷はまもなく潰れますよぉ!」
ダリアの屋敷の中にいるかもしれない人間にクラクションと拡声器を使い避難を促す進藤。ダリア以外の人間に被害を出すわけには行かない。そのために入念な下調べをして解体するのにも人がいない場所を選んで手を付けていた。
「お、お前ら!あいつをさっさと止めろ!」
「止めろって・・・一体どうすればいいんすか!?」
「知るか!!何でもいいから止めろ!俺の屋敷が壊されちまうだろうが!」
「へ、へい!」
取り巻き達が進藤の機械の運転席の所に近づいてきた。
「おい!出てきやがれ!」
「おらぁ!やめろぉ!!」
運転席の窓越しに群がってくる取り巻き達。扉を開けようとするが内側から鍵がかかっているのでもちろん開かない。窓をバンバン叩くが強化ガラスなので割れるはずもない。
「おいおい、動いてる重機に近づくなんて命知らずなだな・・・作業範囲内立ち入り厳禁だぜ!オラ!」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
そう言って進藤は重機の運転席をグルグル旋回させた。運転席に群がっていた取り巻き達は遠心力によって吹き飛ばされていく。
投げ出された取り巻き達が地面に叩きつけられノビている。
「く、くそぉ!この役立たず共が!」
「さーて、続けますか!よいしょっと」
ダリアの屋敷の屋根がバリバリと剥がされていく。立派な豪邸は次第に見る影もなくなっていく。
「やめろぉ・・・やめてくれぇ!!俺の屋敷がぁ!!」
崩れ行く屋敷を見て泣き叫ぶダリア。
進藤は淡々とダリアの屋敷を解体していく。もはや廃屋のような姿に変わり果ててしまったダリアの屋敷。
「ふぅ・・・こんなもんでいいかな」
屋敷の解体の目処が立った進藤。重機を止めて運転席から降りた。屋敷が崩れ落ちていく姿を見て打ちひしがれた様子のダリアの元に行く。
「お、俺の・・・屋敷が・・・」
「どうだ?これで自分の物が壊される気持ちがわかったか?その気持ちがお前がアイリスに与えた気持ちなんだよ!」
「こ、このやろぉ・・・よくも、よくも俺の屋敷を!」
「因果応報ってやつだな。ただ俺の気持ちはこんなもんじゃ治まんねーけどな・・・!」
「ふざけるなぁ!この無礼者がぁ!」
ダリアが進藤に泣き叫びながら殴りかかってきた。
「お前のようなガキ一人なら・・・これで十分だよ!」
進藤の渾身の右ストレートがダリアの頬を打ち抜いた。
「ぐへぇ!!」
何とも言えない叫び声と共に白目を向き倒れるダリア。
「おぉ・・痛ってぇ・・・殴るって思いのほか痛いんだな」
ダリアを殴り倒した右手を振りながら進藤が言った。
「・・・まあ、お前を思いっきりぶん殴れて少しはすっきりしたけどな」
白目を向いて倒れているダリアを見て溜飲が少しは下がった進藤だった。




