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二章 15 『横暴』


 王都の城門をシルバが潜り抜け、その後を見失わないように適度に距離を保ちつつ進藤は後を追った。


 シルバは市場の方へと馬車を走らせていた。市場に近づくにつれて人の量が増えていく。


 少しして王都の中の市場に到着した。その広さはかなり広くどこまで続いているのか見た感じではわからないほどだった。市場の中の様々な場所でセリが行われているようだった。活気の良い声があちこちから聞こえてくる。


 その中でシルバはある場所で止まった。どうやらそこがいつも牛などを降ろしている場所のようだ。シルバ以外にも牛を連れている人の姿が見える。


 進藤はシルバに気づかれないように注意を払いシルバと少し小太りの商人の会話が聞こえる場所まで近づいた。


 「ここでいつも牛を売っているのか・・・ん?どうしたんだ?」


 なにやらシルバと商人の様子がおかしい。


 「今日こそは値段をつけてもらえるんだろう?」

 「シルバか・・・悪いがあんたの所の牛を買うわけには行かないんだ。タダって言うなら引き取ってもいいが・・・」

 「タダだと!?そんな馬鹿な話があるか!一体この前から何だというんだ!?」


 声を荒げているシルバ。どうやら商人から牛の買取拒否をされているようだった。


 「すまないな・・・私にはどうすることも出来ないんだ」

 「なんだと?それは一体どういうことだ?」

 「おいおい、なんだぁ?市場でトラブルを起こしてもらっては困るなぁ?」

 「・・・あいつは!?」


 シルバと商人の背後から声をかける人物がいた。進藤にも見覚えのある顔のそいつは以前アイリスにぶつかりロクに謝りもしなかった貴族を名乗るダリアだった。相変わらずの憎たらしい表情で取り巻きを連れていた。


 「お前は・・・あの時の」


 シルバもダリアのことを覚えていた。


 「お前だぁ?どうやらまだ自分の立場を理解してないようだなぁ?」

 

 勝ち誇ったような表情を見せるダリア。


 「これはこれは、ダリア様!本日はどうしましたか?」


 小太りの商人がダリアにペコペコしている。


 「フン・・・なーに、我が一族が取り仕切る市場で問題が起きていないか見周りをしていたところだ!何か問題があったか?ん?」

 「いえいえ、問題など滅相もありません・・・ダリア様のお手を煩わせることなどありません!」

 

 商人はこれでもかというほどダリアに頭を下げている。


 「・・・そうか。これはお前の仕業だな?」


 シルバが状況を察したようだ。


 「なんのことかなぁ?」


 わざとらしくとぼけるダリア。


 「お前が私の持ってきた牛を買わないように指示をしていたのだな?」

 「さぁ?知らないね。俺は問題のある商品を買わないように徹底させているだけだ。貴族である俺に喧嘩をうる人間が育てた牛など不味いに決まっている!マズイ牛に値段をつけることなど出来るわけがないだろうが!」


 ダリアがシルバを挑発するように言い放った。この前のシルバに圧倒されていた時の様子が嘘のようである。


 どうやら貴族の立場を利用して商人に圧力をかけていた様子のダリア。立場の優位性でシルバに対しても強気でいるようだ。


 「もっともタダというならもらってやってもいいがな!ハハハ!」

 

 取り巻きと共に高笑いするダリア。どうやら進藤の勘は当たっていた。


 今回の一件にダリアが関わっていた。


 「そうか・・・そういうことか。実にくだらないことだ」

  

 ダリアの挑発的な態度にも冷静な様子のシルバ。


 「く、くだらないだとぉ!?貴様まだそんな態度をとるかぁ!」

 「ああ、何度でも言おう。実にくだらない!貴族の名前を使っての仕返し・・・まるで子供だな。お前のような人間が仕切る市場などこちらから願い下げだ!私の大事に育てた牛をお前のような奴に渡す気にはなれん!」


 シルバはダリアに対しても一歩も怯む様子無く堂々と言い放った。


 「き、貴様ぁ!!もう絶対許さんぞ!貴様のカルバート一族は永遠にこの市場で商売出来ないようにしてやるからな!!」

 「好きにするがいい」

 「俺に歯向かったことを後悔するがいい!!おい、いくぞ!」

 

 そう言い残しダリアは取り巻きを連れて行ってしまった。


 「お、おい・・・シルバ。あんなこといって大丈夫か?今からでも謝った方がいいんじゃないか?」


 商人がシルバに心配そうに声をかけた。


 「悪いがあの男に頭を下げるわけにはいかない。私が頭を下げれば娘になんて顔して会えばいいかわからないからな・・・」

 「そうは言ってもなぁ?私もシルバの所の牛を買いたいのは山々なんだが・・・私にも生活がかかっているんだ・・・すまない」


 商人は申し訳なさそうにシルバに頭を下げた。


 「いや、いいんだ。君には私たちのことでいらん苦労をかけたようだな。さっきはあの男にああ言ったが、今日のこの牛たちはタダで引き取ってくれ。迷惑をかけたお詫びだ」

 「そ、そんな!そんなこと出来ない!」

 「いいんだ。そうしなければ私の気が済まない、受け取ってくれ」

 「シルバ・・・」


 シルバは強引に商人に牛を降ろして帰って行った。


 「・・・あの野郎!どこまで腐った野郎なんだ!」


 シルバの帰った後、進藤は一人ダリアに対しての怒りを募らせていた。

 


  

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