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二章 9 『異変』


 進藤たちは王都から無事に帰宅した。帰る間際にダリアにぶつかられてダメになったセリカへの土産の塗り薬も忘れずに再購入して持って帰った。


 「まぁ!?これを私に!?最近手が荒れてて困ってたのよね!ありがとう!助かるわ!」

 「えへへ、進藤お兄ちゃんと一緒に選んだんだよ!」


 アイリスからお土産の塗り薬を受け取ったセリカは上機嫌の様子だった。アイリスもセリカの喜びようを見て満足した様子だった。


 「そうなの!?進藤もアイリスに付き合ってくれてありがとうね!振り回されたりして大変じゃなかったかい?」

 「い、いや全然!そんなことはなかったよ!むしろこっちが色々案内してもらって助かったよ!」

 「そうかい?なら良かったわ」


 王都でのダリアの一件はセリカには話さないことにした。余計な心配をかけたくないとのことでシルバの提案だった。これを進藤もアイリスも承諾した。


 「ハハハ!母さん、それよりもアイリスを見て何か気づかないかい?」

 「ん?・・・あら?素敵な髪飾りね!?あまりに馴染んでて気づかなかったわ!良い物を見つけたようねアイリス?」

 「うん!これね!進藤お兄ちゃんがプレゼントしてくれたんだよ!私すっごい気に入っちゃったの!」


 アイリスはセリカの前で髪飾りを指差し笑顔を見せた。


 「あらあら!進藤に買ってもらったの!?こんな上等な物買ってもらっちゃって良かったのかしら!?」

 「俺は全然良いよ。むしろこの髪飾りをアイリス以外の誰かがつけているのが想像できなかったんだ。だからアイリスが喜んでくれるならそれで満足だよ」

 「フフフ、進藤もお上手ね!そういえば進藤は恋人とかいないの?」

 「・・・え?」


 セリカの突然の質問に進藤は思わず固まった。そういえば進藤の身の回りのことについて聞かれたのは初めてだったかもしれない。


 「・・・あら?もしかして聞いたらまずかったかしら?」


 進藤の様子を見てセリカはしまったっというような表情を見せた。しかし進藤が慌てて訂正した。


 「い、いやいや!そんな気を使わなくても全然大丈夫だよ!恋人なんてもうずっーといないよ!おかげでこの年まで独身だもん!アハハ・・・ハハ」


 自分で言ってて悲しくなった。少し言い方を濁したが進藤は生まれてからずっと恋人なんて出来たことはなかった。


 「あら?そうだったの?進藤は素敵だからモテそうだと思ったんだけどねぇ・・・」

 「そうだな・・私もびっくりだ」


 セリカとシルバが腑に落ちないというような顔を見せた。そんな表情をされると余計に傷つくからやめてくれと言いたくなる。


 「ハハハ・・・まあ、その・・・頑張るよ。色々と・・・うん」

 

 言葉を濁しながら進藤が言った。こういう時何て言ったらいいかわからなかった・


 「・・・そうだ!進藤さえよければうちのアイリスなんてどうだい!?」

 「・・・えぇ!?」

 「お、お母さん・・・!?」


 セリカの突然の発言に驚く進藤とアイリス。

 

 「ち、ちょっと、お母さん急にな、何を言い出すのよ・・・!」


 顔を真っ赤にしてアイリスがセリカに言った。 

  

 「だってアンタ進藤に懐いてるし丁度良いと思ったんだけどねぇ・・・?」

 「そ、それは・・・そうだけど!そんなこと言ったら進藤お兄ちゃんも困っちゃうでしょ!ね!?進藤お兄ちゃん!?」

 

 アイリスが慌てふためきながらも進藤に同意を求めて来た。こういう時の返事は余計に困る。肯定も否定も出来ない。そんな進藤が出した答えは一つ。


 「ハハハ・・・」


 苦笑いしかなかった。こういう時もっとうまく返せればいいのかも知れないが、それが出来てればきっと恋人も出来ていたに違いない。


 「まあまあ、母さん。そういう話はまた今度お酒でも飲みながらゆっくり話そうじゃないか。今日は王都から帰って来たんだし疲れただろう?早めにゆっくりするといいさ」


 シルバが上手くまとめてくれた。さすが家庭を持つ父は凄いなと進藤は変に感心した。


 そんな談笑をしながらいつものアイリス家の生活に戻った進藤だった。


 しかしそのいつも通りも少しづつ変化を見せたのだった・・・


 王都から帰ってきてから数日は、日課である手伝いなどに精を出した進藤だった。次はどんなアイリス家の改築をしようかなと考えていた矢先に変化に気づいた。


 それはシルバが定期的に王都に売りに持って行っていた牛が馬車に乗ったまま一頭も減らずに帰ってきたのであった。

 

  


 

 

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