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二章 8 『父親』


 「シルバ・・・!?」

 「お父さんっ!?」


 突然のシルバの登場に驚く進藤とアイリス。シルバはダリアに向かって頭を下げようとしていた進藤に向かって顔を横に振った。


 「事情は周りの人に聞いた。進藤、君が頭を下げる理由は無いよ。さあ立ち上がるんだ」

 「でも・・・」

 「良いんだよ・・・」


 シルバは優しく微笑んでくれた。


 「なんだお前は!?こいつらの関係者か!?お前も俺に楯突く気か!?」

 「・・・だったら何だというのだ?」

 

 シルバは声の調子は静かだが威圧感たっぷりだ。こんなシルバは進藤も見たことがない。ダリアもシルバの威圧感にたまらずたじろいでいる。


 「ひっ・・・!お、お、お前!俺が貴族だと知ってその態度か!?どうなっても良いのか!?」

 「だから私が楯突いたら何だというのだ?」


 シルバがゆっくりダリアの方に近づいていく。その様子を見てダリアとその取り巻きは後退りした。


 「私はこの子たちの父親だ。君がどこの貴族は知らないが、私は悪いこともしていない子に頭を下げさせるようなことは絶対にさせない!それが我がカルバート家の方針だ!何か文句があるかね?」


 貴族相手でも少しも怯む様子もなく毅然とした態度で言い放つシルバ。その堂々した姿を進藤はただ見守ることしか出来なかった。


 「こ、このぉ・・・・!」


 シルバに完全に圧倒されているダリア。そんなダリアにシルバは鋭い眼光を向けている。


 「お、お前らの事覚えたからな!?俺に楯突いたこと絶対に後悔させてやる・・・!覚えてろぉ!!」


 ありきたりな言葉を吐き捨てダリアは取り巻き達を連れてその場から逃げるように去っていった。


 「やれやれ・・・逃げて行ったか」

 「お父さんっ・・・!」 


 ダリア達が逃げて行ったのを見てアイリスがシルバにすぐに抱き着いた。シルバはアイリスを優しく抱きしめた。


 「アイリス、怖い思いをさせたね。怪我はなかったかい?」

 

 微笑みながら聞くシルバ。もう先ほどまでの威圧感はすっかり消えていた。


 「ううん!私は大丈夫!」

 「そうか。良かった・・・ん?アイリス素敵な髪飾りだね?どうしたんだい?」

 「これ!?うん!これは進藤お兄ちゃんに買ってもらったの!」

 「そうか、それは良かったね。進藤がせっかく買ってくれたんだ大事にするんだよ?」

 「うん!もちろん!」


 シルバが現れたことによってアイリスはすっかり安心したようだ。いつも通りの笑顔を見せていた。


 「それと進藤、君にも嫌な思いをさせてしまったようだね・・・・大丈夫かい?」

 

 シルバは進藤にも優しく声をかけてくれた。


 「・・・シルバ、ごめん。俺が情けないばっかりにアイリスに怖い思いをさせてしまったよ」


 進藤は己の不甲斐なさを謝った。


 「・・・!?進藤お兄ちゃんは何も悪くないよ!アイリスの為に怒ってくれたんだよ!?」


 アイリスが慌ててシルバにフォローを入れてくれた。シルバは理解しているといったように笑って答えた。


 「ハハハ、わかっているよ。進藤さっきも言ったが君が謝ることは何一つないさ。君はアイリスの為に怒ってくれたんだ。むしろ私が礼を言うべき立場だよ!」

 「で、でも・・・!俺がもっとしっかりしてれば!シルバが来てなかったら俺はあいつにきっと頭を下げていたよ・・・」

 「しかしそれもアイリスを思っての行動だったのだろう・・・?」

 「・・・え?」


 シルバの言葉に驚く進藤。


 「君は怯えるアイリスを見てあの騒ぎを早く終わらせようとして、下げたくもない頭を下げようとした。君は娘の為に自分のプライドを捨てて行動したのだ。だからそんなに自分を卑下することはない・・・・君はアイリスの身を案じて行動してくれたのだ。だから謝らなくても良い」

 

 まるで全てを見ていたかのようなシルバ。進藤は何も言えなかった。


 アイリスが立ち尽くす進藤にそっと近寄り抱き着いた。そして進藤を見上げながら言った。


 「進藤お兄ちゃん私の為に怒ってくれてありがとうね!私、凄い嬉しかったよ!進藤お兄ちゃんが一緒にいてくれて良かった!」


 アイリスの素直な気持ちをぶつけられ進藤は思わず照れ顔を逸らした。


 「・・・今度はもっとしっかりアイリスの事守ってみせるから」

 「うん!信じてるよ!」


 進藤も素直な気持ちを照れながらも伝えた。


 シルバもアイリスも優しく応えてくれたが、あの時シルバがいなかったら進藤は情けない姿をさらしアイリスにも嫌な思いをさせたままだったに違いない。


 もっとしっかり・・・強くならないと。進藤はひそかに心の中で決意した。


 「・・・さぁ、あんまり遅くなると母さんに怒られるぞ!進藤、アイリス、そろそろ帰ろうか!」

 「うん!」

 「そうだね。帰ろうか!」


 こうしてトラブルに見舞われながらも進藤は初めての王都を後にした。


  

 

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