二章 1 『次の標的はお前だ』
進藤が水道を開通させてからアイリス家の生活は大きな変化を見せた。水の量を気にすることがなくなったので洗濯やお風呂なども一回に使える量の制限が解除された。もはや備蓄の目減りを気にすることはない。
飲用としても優秀な水が出てくるので食卓には冷たい水が並べられた。紅茶も悪くはないがやはり汗をかいた後などは冷たい飲み物で喉を潤したくなる。
またアイリスの日課であった毎日の水汲みがなくなったので一日の行動にも余裕が出来た。最近はよく進藤の手伝いを進んで求めるようになった。どうやら進藤が次はどんなことをするのだろうと興味があるようだ。
「ねぇ、進藤お兄ちゃん。今日は何するの?」
「うん?そうだな・・・次はこれかな」
そういって進藤が向かった先にあったのはトイレだった。
アイリス家のトイレは住まいの家から少し離れにあった。ここのトイレはもちろん水洗ではない。小屋の中に深く掘った穴があり、その上に木で造作した形だけのトイレだ。わかりやすい言い方をすればボットントイレという奴である。今の日本でもその姿はおそらく田舎の方でしか見かけないであろう。
家から離れている理由は簡単。臭いがするからである。穴に蓄積された排泄物が放つ異臭はなかなかにつらいものだ。とても食事の際に嗅ごうものなら食欲は一気に無くなるであろう。
「そのトイレをどうにかするの・・・?」
アイリスが少しトイレから少し離れた場所に立っている。どうやら中にはあまり入りたくないようだ。
「まあね。アイリスはこのトイレ正直どう思う?」
「うーん・・・正直あんまり好きじゃないかな。しょうがないことだけどこの匂いとか嫌な気持ちになっちゃうし、一秒でも早く出たくなっちゃうもん」
まあ当然の反応だろう。こんな悪臭のする場所誰も好き好んで居座ろうとは思わないだろう。
「それが普通だよな。じゃあさアイリス、もしこのトイレが座った瞬間リラックスできるような空間になったら素敵だと思わないかい?」
「え?まあ・・・そうなったら凄いと思うけど、そんなこと出来るの!?」
アイリスはそんなこと想像もつかないといった表情だ。
「ふっふっふっ・・・見てなアイリス。俺がこのトイレをみんなで取り合いになっちゃうような空間にしちゃうから!」
進藤の自信満々な表情。どうやら脳内でプランが決まったらしい。
「そんなこと出来るの!?でも進藤お兄ちゃんが言うなら出来そうな気がする!今度は私も出来ることはお手伝いするからね!!」
「ああ。一緒に頑張ろうな!」
進藤の次のすべきことが決まった。このトイレを劇的に変身させることだ。
この異臭を放つトイレをどうにかするには解決しなければならない問題がある。それは用を足したあとの汚物をどうするかだ。これを改善してやれば臭いはなくなる。
それが一番の改善の重要ポイントだった。しかしアイリス家の周辺・・・いや、この世界に下水処理場のような施設はおそらくないだろう。だからといってこの家一軒のために処理場を建設するのはあまりに大がかりすぎる。
「まず何からするの?」
アイリスが進藤に尋ねた。
「そうだな・・・やっぱり最初に必要な物は浄化槽だろうな!!」
進藤の中で答えはすでに出ていたようだった。




