一章 15 『これは水には流せない』
アイリス達の見つめる先で蛇口から勢いよく溢れてくる水。水は途切れることなく出てきている。
「え・・・!?これお水なの?綺麗な・・・水?」
アイリスが驚きを隠せない表情で訪ねた。
「ああ!もちろん!触ってみてよ!」
「う、うん・・・」
アイリスは蛇口から溢れている水にそっと手を触れた。
「・・・冷たっ!お水だ!」
両手で水を受け止め手のひらに水を溜めるアイリス。水は透き通っていてアイリスの白い肌が水越しに良く見える。
「冷たいだけじゃないんだよ?ほら見てて!」
進藤もアイリスと同じように両手で水を受け止め手のひらに溜まった水を口に運んだ。
「・・・ふぅ。ちゃんと飲めるんだよこれ。しかも凄い冷たいんだぜ!」
さすが女神のお墨付きの水だ。通常の水道水よりもキンキンに冷えている。まるで氷を溶かしたばかりかのような冷たさだ。そして味も文句ない。この水なら都会なんかでペットボトルに入れて販売できるレベルだろう、女神の加護恐るべし・・・
アイリスもすぐに進藤の真似をして水を口に運んだ。
「・・・美味しいっ!凄い!このお水まるで川で汲んだばかりのような冷たさだよ!」
水の美味しさに感動している様子のアイリス。シルバとセリカも同じように水を口に運んだ。
「うまいっ・・・!味も冷たさも申し分ない!」
「ホントっ・・・!こんなおいしいお水は初めてかも!」
アイリスと同じように興奮している様子のシルバとセリカ。いつもは川から運んできた水を使っていたので飲用する場合は火で沸かして紅茶なのに使用して飲むのが当たり前だった。水をそのまま飲める場合などは川などに行ったときに限られた時しか飲めなかったアイリス達には衝撃だったようだ。
「これ進藤お兄ちゃんがしてくれたの・・・?」
「まあね。今度からこの蛇口をひねればいつでも新鮮な水が出てくるからね!」
「・・・そうなの!?いつでもこの美味しいお水が飲めるの!?」
進藤の言葉を聞いてさらに驚いたアイリス。
「そうさ。これでもうわざわざ川まで水を汲みに行く必要もないよ」
「凄い・・・まさかこんな日が来るなんて。私今まで水汲み行くの辛くはなかったけど、もっと川が近かったらなぁとか考えたりもしたことあったの。でもこんな風にお水が手に入るなんて思いもしなかったわ!」
「少しでもアイリス達の負担を減らしたくてね・・・今度からこの水を遠慮せずに使ってくれよ!」
「うん!ありがとう進藤お兄ちゃん!!」
アイリスは満面の笑みで進藤に抱きついた。心の底から感謝してくれた様子だった。
「ありがとう進藤。これでアイリスにキツイ水汲みをさせることもなさそうだ。本当にありがとう
「ホント・・・ありがとうね」
シルバが進藤に頭を下げた。やはり必要なこととはいえ自分の子供に重労働をさせていたことをどこか負い目を感じていたのかもしれない。それはセリカも同様のようだった。
「いえいえ!そんなとんでもない!感謝しているのは俺の方なんですよ!みんなが俺を受け入れてくれなかったらきっと俺は今頃どこかで野垂れ死にしてたと思うんだ!だからこんなことしか思いつかなかったけどこれからもよろしくお願いします」
進藤がアイリス達に向け頭を下げた。嘘偽りのない言葉だった。
「ぜひこちらこそこれからもよろしく頼むよ・・・!」
「ええ!もうあなたは私達の家族みたいなものなんですから!」
「うん!これからもよろしくね進藤お兄ちゃん!」
みんな進藤の言葉を温かく受け入れてくれた。
「ありがとうみんな・・・!まだ俺が考えていることはこの水だけじゃないからね!もっと色々するつもりだから期待して待っててね!」
「まだほかにもこんなサプライズがあるのかい・・・?それは楽しみだな!」
「そうなの!?次はどんなこと考えてるの!?」
目をキラキラさせアイリスが尋ねた。それに対して進藤は少し意地悪っぽく答えた。
「それはな・・・その時までの秘密だよ!」
「もう・・・!進藤お兄ちゃんの意地悪っ!」
進藤の言葉を聞いて拗ねた様子のアイリス。しかし本気で怒ってるわけじゃない。すぐに皆で顔を見合わせ笑顔が絶えることなく溢れてきた。まるで蛇口から溢れてくる水のように・・・




