一章 10 『そうでした・・・ここは異世界でした』
「はぇー・・・ここがアイリスの言っていた湖か、凄い広さだなぁ。湖の反対側が見えないぞ」
目的の湖に到着した進藤。そこには巨大な湖があった。アイリスの話だとロマリス国でも1.2を争うほどの大きさの湖とのことだ。
進藤もこんな広さの湖をみるのは初めてだった。
「こんな場所があるなんてすごいな・・・うお?つめたっ!」
湖に片手を入れてみた。水質は冷たく、水に濁りもなく透き通るような綺麗さだった。
「うん!これなら問題ないな。さてと・・・・」
湖の水質に満足した進藤。湖のほとりに先程アイリスの家から持ってきたワインとパンを並べた。
そして祈りを捧げるように両手を合わせて目を閉じる。
昔から水があふれる所には水神様がいると言われていた。この水神様の怒りに触れると祟りがあると言われ、水辺の工事の際には必ずこういったお供え等をするのがしきたりだ。
進藤がここに来た理由はこの湖から水をアイリスの家まで持っていく工事をするために来たのであった。それにあたり工事の前に水神様にお供えをすることが今日の目的だった。
・・・極力この環境を壊さないように努力しますのでどうかよろしくお願いします。
心の中で祈願して目を開ける進藤。
「よし・・・これでひとまずは良いかな。さてと今日はこれで帰ろうかな・・・ん?」
何か違和感に気づいた進藤。水際で何か音がした。
魚でも跳ねたかな・・・?そう思い湖を覗き込む進藤。なにやら水中に影が見える。
「なんだ?・・・あれ?影がどんどん大きくなっていく・・・・?え?」
「・・・ぷはぁー!!」
「おわぁー!!」
突然水の中から顔が出てきた。あまりの出来事に驚き進藤は叫び声をあげた。
「・・・よっと。久しぶりの地上だなぁ!」
湖の中から突然現れたのは若い女性だった。地上に上がり体をほぐすように背伸びをしている。
透き通るような水色の長い髪に大きな青い瞳。肌も白くスラっと伸びた手足、まるでモデルのような体型だ。白い袖の無いローブを着ている。青い髪から水が滴っている。濡れた髪をかき上げるその様に進藤は腰を抜かしつつ見とれていた。まさに水も滴るいい女とはこの状態を指すのだろう。
「・・・女!?なんで湖の中から!?」
「あら?君が私を呼び出した本人かな?」
腰を抜かして座り込んでいる進藤に女が話しかけた。
「・・・?呼び出した?俺が?」
訳が分からない進藤はキョトンとしている。
「だってほら・・・あれ君が用意したんでしょ?」
そう言って女は湖のほとりに並べたワインとパンを指差した。
「確かにあれは俺が用意したものだけど・・・」
「供え物をして神に祈りを捧げる・・・まさに儀式じゃないの。私に何か用事があったんじゃないの?この湖の女神サラスに!」
突然湖の中から姿を現した女は自らを女神サラスと名乗った。進藤の頭の中はさらにパニックになってしまう。
「・・・へ?女神?」
「そう女神よ!あれ?なにその感じ?・・・まさか知らなかったの?」
進藤は肯定するように顔を上下に振った。
「嘘・・・せっかく久しぶりに熱心な祈りを感じて出て来たって言うのにまさかお呼びじゃなかったなんて」
なにやら肩を落とし落ち込んでいる様子の湖の女神サラス。
「本当に女神なのか・・・?」
「なによ?まさか信じてないわけ?あんなに熱心に祈りを捧げていた人間とは思えないわね。それじゃあこれならどう?」
そういうと湖の水がうねりをあげはじめた。次第に水は渦を巻きながら水柱を作っていく。どうやらサラスが水を操作しているようだった。とても普通の人間には無理な芸当だ。
「・・・マジか」
「どう?これでわかった?」
彼女の言うことはどうやら本当らしい。こんなものを見せられたら信じるしかない。
進藤はこの日初めて女神という存在と出会ってしまったのだった。




