破を叫ぶ師
自分の体をホイホイ貸すなんて、怖くねえか?
危なくねえか?
そう訊くと、師匠はこう言った。
「大丈夫だよ!皆分かってくれるから!
それに、大抵の霊より私のほうが霊力強いしッ!」
「守護霊とかじゃなくて師匠自身が強いって?……」
そうは見えねえな、という言葉を飲み込んだが、師匠には伝わってしまっていたようで、また拗ねられた。
でも、そんなに霊相手なら強いってんなら、護衛も守護も要らねえのかもしれねえ。
降ろした相手がどう暴走しようと完璧に管理できるってんならまあいいか。
ポンコツ紫暮の言葉を真に受け、そんなことを思った俺が馬鹿だった。
師匠はまんまと強い霊……多分神格に近い奴に体を乗っ取られた。
「赤子を贄に寄越すのじゃ。
さすれば、主らの望む通り、この村のかつての村長が隠した秘宝の封印を解いてやろう。
断れば、この女の命はないがのう」
ざわざわと村人たちがざわめく中、師匠が到底浮かべないような気味の悪い笑みを浮かべたそいつーーー秘宝の守り神。
ーーー即座に、俺は言い返した。
「なるほどなるほど。それでは、赤子を贄に捧げましょう」
村人がぎょっとして俺を見る。
にっこり笑って返してやる。
翌日俺は、種籾、草の苗、虫やら蛙やらの孵化しかけの卵、雛鳥等を持ち込み、捧げた。
「ええい、ふざけるでないッ!誰がこんなものを寄越せと言ったか!」
「どれも命あるものの赤子にございますれば」
「呪い殺されたいかッ!妾が求めるのは人間の赤子じゃッ!!」
「なるほどなるほど」
俺は赤子の塚を案内した。
「ここにおりますれば」
「舐めておるのか貴様ッ!!!」
自称神が激怒した瞬間、師匠の体が憑依から解放され、反動でぶっ倒れた。
「お、師匠。
感謝してくれよ、なんとかしたからよ」
介抱しつつ笑うと、紫暮は真っ赤な顔をして立ち上がった。
「あんたっ……! 何、やってるのッ!
そんな嘘で誤魔化して、神様を愚弄してっ! 私たちが霊媒師としてやっていくってことは、誠実に向き合うことなのっ!」
「誠実にやっても被害者無用に増やすんじゃどうしようもねえだろ?」
「うるさいッ!!!破門だよっ!!」
「姉さん、自分も日瑞寄りの考えです」
「凍塚も、破門ッ!!!」
「とばっちりすぎねえか」
ま、確かにもう少し神様とやらの権威を保ってやるような説得の仕方はすべきだったかな。
あんまりにむかついたもんでね。
「破ァッ!門ッ!お前なんかもうッ、弟子じゃないッ!
好きにすればいいッ!
凍塚もどうせッ、日瑞の方を選ぶんでしょッ!?
嫌いッ!嫌い嫌い嫌いッ!
もう知らないッ!!」
師匠…いや、紫暮の足は飛脚でも降ろしたのかというくらい速く、見失ってしまった。
凍塚と目を見合わせる。
「……後でどうせ戻ってくる……よな?」
「どうだろう……」
ま、いいか。
どうにかしよう。
折角偽霊媒師の振る舞いは学べたんだ、参考にしてーーー
偽霊媒師でも、始めるか。
……俺達を破門した癖にチラチラとたまに顔を出してくる紫暮と再会するのは、この少し後になる。




