守を望む霊
「……なんというか……すまぬな」
「べっ、別に寂しいなんて思ってないんだから……っ」
岩戸守は傲慢な守り神である。
かつて自分を使い潰した主が遺した宝物を主の子孫に渡すのが嫌で、無理難題を突き付けて追い返すつもりであった。
しかし、先程目の前でおちょくられて激昂した時、その後の流れが岩戸守の考えを少し変えた。
だからこうして、その時少し好感度の上がった側ー……紫暮のあとをふよふよとついてきて話しかけている。
「……あなたこそっ……守る場所は、もう、いいんですか?」
「結界術はきちんと張っておるからそこまで困らぬ」
意地になっている時でなければ、岩戸守は案外と冷静で、責任感が強く、そこそこ呪力も強く、大抵の悪霊なら追い払える。
「……のう、お前を守ってやろうか」
「え゛ッ!?」
「あの二人、護衛も兼ねておったのじゃろ?」
「い、いや、いいです…ッ…」
「そうか。残念じゃの」
しかし、岩戸守はその後もちょくちょく紫暮を守った。
紫暮に庇われたことが、尊厳を重んじられたことが、記憶に残っていた。
紫暮に向けられる刃の切れ味を悪くし、襲い掛かる魔手の暴力性や性欲を吸い取った。
岩戸守はそれをただの『食欲』を満たしているだけだ、と言う。
日瑞のことはおちょくられて未だに腹が立っているため姿を見せない。
自分がこうして致命的な部分だけ助けてやってる間に、この阿呆な元師弟が仲直りすればいいと思った。
その時はまだ来ないが。




