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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第17章 国王マークスチュアート、魔王城へ行く

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02 まずは塞都市ベロニアへ

 無事合流を果たした俺たちは、翌朝、ジスタリの町長のところへ出発の挨拶に行った。


 町長はもちろんコボルドで、毛深くて目がどこにあるかわからない、いかにも長老っぽい見た目をしていた。ちなみにゲーム通りの容姿である。


「おお、ようやくフォルシーナ様たちの待ち人が到着なさったのですな!」


 町長は玄関口で、大袈裟に両腕を広げるポーズを取った。


「初にお目にかかる。フォルシーナの父にして、神聖インテクルース王国の王、マークスチュアートだ。私の連れが貴殿らの町に大変世話になったようだ。礼を言う」


「世話などとんでもありません! むしろ命を助けていただいたのはこちらのほうなのです。フォルシーナ様たちがいらっしゃらなければ、この町はいったいどうなっていたことか」


「話は聞いている。ところでモンスターの群れが現れるのは、このあたりでは珍しいことなのだろうか?」

 

「もちろんです。2、3匹ならよく現れますが、さすがに数十匹という数は聞いたことがありません。実は魔宰相様が無理な召還を行っていて、それで凶暴な野良のモンスターも増えているのではないかという噂もありまして……」


 おっと、それはゲームでは聞いたことがない情報だ。


 今このリアル世界でもそうだが、ゲームでも魔族領を旅していると、度々「最近モンスターが増えた」「モンスターがやたらと強くなった」みたいなセリフが出てくるのだ。ところが最後までその裏は明かされず、単に「世界の滅びが近いからモンスターが増えた」くらいの感覚で流されてしまう。


 だが「無理なモンスター召喚の余波」というなら、それはそれで納得できなくもない。そしてラッキーなことにその噂は、魔宰相ロゼディクスを倒すことのいい大義名分になる。


「なるほど、それは看過できぬ噂だな。私は魔王殿と講和を結ぼうと思っているのだが、魔王殿と魔宰相殿は対立していると聞いている。とすると、多くの意味で魔宰相殿は止めねばならぬようだ」


「よろしくお願いいたします。魔族で争いを望んでいるものなど多くはおりませぬ。魔王様をどうかお助けくだされ」


 深々と礼をする町長の姿は、ゲームで見たよりも数段上の切実さがあった。


 そりゃ戦なんて誰もやりたくないよなあ、と思いながら、町長はじめ町の住人たちに見送られて、ジスタリの町を後にした。


 向かうは北北西、魔都ザハーンの手前にある要塞都市ベロニアだ。


 ゲーム通りなら、そこで最後の四至将ネクライガとの戦いになるはずだ。少し面倒なイベントもあるのだが、攻略に必須のアイテム『不死破りの髑髏』はすでに手に入れているので特に問題はないだろう。


 ジスタリの町を出てしばらくはのんびりとしたものだった。石畳の街道をひたすら北へと上っていく。


 遠くには雪で白くなった雄大な山脈が見えている。魔族が『果ての白』と呼ぶ、まさにこの大陸の北の果てだが、魔都ザハーンはそこよりはかなり南にある。


 未知の左右は森や川や平原や耕作地がかわるがわるに現れる。この辺りは人族の国とまったく変わらない。


「お父様、ジスタリの町でも感じていましたが、魔族領というのも穏やかな土地なのですね」


 とフォルシーナが口にしたが、そんな感想も自然に生じてくるだろう。


「そうだな。このあたりの風景からは、あの苛烈な10万の軍の姿など想像もできん」


「ええ本当に……。特に困っているようにも見えないのに、なぜ魔族は昔から南下しようとするのでしょう?」


「ミルラエルザに聞いたのだが、十年に一度くらいの頻度で魔族領は寒波に襲われるのだそうだ。その度ごとに食料危機に見舞われることがあり、潜在的に南下の意識が高いそうだ。特に魔都ザハーンが北にあるゆえ、位の高い者ほどその考えが強いとか」


「なるほど……」


 これはゲームでも語られていることだが、実際にミルラエルザに聞いても同じ答えが返ってきた。


 だったら食料備蓄しとけよ、などと思うところでもあるが、残念ながら魔族の半分くらいは「なかったら奪え」みたいな世紀末思考らしくそれが難しいのだとか。


 道中はモンスターが何度か出現するが、多くても5、6匹程度で、俺たちの相手にはならない。ちなみに出てくるのは『ダイビングビートル』という、空から急降下してくるドリル付きカブトムシや、『アサルトシュレッダー』という、四本カマの大型カマキリといった虫型モンスターがメインである。


 1日目は結局何事もなく、夕方から街道の外れで野営をする。


『モバイルフォートレス』にてゆっくりと休み、翌日も早朝に出発する。


 微妙に数が増えてくるモンスターを倒しながら街道を行くこと4時間。街道の先に、厳めしい城壁に囲まれた大都市『要塞都市ベロニア』が見えてきた。


 なお、ここに至るまで、街道を歩く魔族は複数の馬車と、それを守る武装した20人以上の魔族で構成された隊商らしき集団と何度かすれ違った以外、一切見かけなかった。


 考えてみれば、Aランクモンスターが出てくる街道なんて魔族だろうが気軽に歩けるはずがない。ゲームだと後半フィールドなんだからザコモンスターが強くて当たり前みたいに考えていたが、リアル世界で考えれば明らかに異常事態である。


 ともかく要塞都市ベロニアだ。灰色の城壁は20メートルくらいの高さはあり、正面の城門はわずかに開かれているものの、体格のいいオーガの衛兵が30人くらい立っていて、ものものしい雰囲気を醸し出している。


 人族である俺たちがそのまま入れるのかという感じだが、将軍リンもそれに気付いたようだ。


「陛下、あの町に我々はそのまま入ることができるのでしょうか? 非常に厳重な守りを敷いているように見えますが」


「無論正面から入ろうとすれば戦いになろうな。ベロニアを守るのは四至将ネクライガであり、城門を守っているオーガ族はその配下だ。人族と見れば襲い掛かってくるだろう」


「ではどうされますか。陛下なら正面から突破しても容易に制圧できると思いますが」


「あの規模の都市であれば魔族兵だけでも数百いる。戦いとなれば当然彼らはモンスターを召喚するであろうし、そうなれば市民にも被害が出る。それだけは避けねばならぬ」


「確かに」


「都市の右に森がある。そちらに入って町に近づき、少し様子を見ることにしよう」


 いかにも今思いついたみたいな感じで言ったが、もちろん最初からそのつもりの行動である。ゲーム通りならそれで上手くいくはずだ。

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