16章 → 17章
―― 魔族領 魔都ザハーン 魔王城 魔王執務室
「魔王様、ロゼディクスに王位を譲るなど、本気でおっしゃっているのですか!?」
「ごめんミルラエルザ……、でも、これは必要なことなんだ。皆を救うためにはそれが一番なんだ……」
「しかしそれでは、先代様から引き継がれてきた魔王様の悲願はどうなるのですか。人族との融和、それが魔族のためだと魔王様もずっとおっしゃっていたではありませんか」
「その考えは変わらないよ……。でも、ロゼディクスの力も本物なんだ……。今僕がここで彼に下らないと……多くの民が犠牲になってしまう」
「しかし今こちらに向かっているマークスチュアート王の力も紛れもなく本物です。『シグルドの聖剣』を持つ彼は、ロゼディクスですら足元にも及ばない戦士です」
「それは……」
「くふふッ、それは聞き捨てなりませんねえ、ミルラエルザ殿」
「……ッ! ロゼディクス……様……」
「くふッ、さすがに本人を前にすれば様付けはしますか。まだ正常な判断力が残っているのは結構なことです」
「なぜここに……?」
「なぜと言われても、ワタシは魔宰相ですよ? 城にいることに不都合などないでしょう。それより魔王様、先ほどのお話は本当でしょうか?」
「……王位を譲る話は……本当だよ」
「くふッ、ひゃははッ! それも大変結構なことでございます。ようやく魔王様もワタシの崇高な考えを理解してくださったのですね」
「……そんなんじゃない……。ただ、民を救いたいというだけ……」
「いえいえ、ですからワタシの崇高の考えを理解してくださったということでしょう。いいのです、ワタシの考えを理解できる者は少ない。魔王様がその一人であったことを今は喜ぶばかりですよ、ええ」
「だけど……人族の王は……どうするつもりなの?」
「人族の王? ああ、マークなんとかという羽虫ですか? そのようなもの、とうの昔にこの地上から消えておりますよ。新たに四至将に任命したネファリスがよくやってくれたようでして、くふふッ」
「あの人族の王がネファリスごときに倒せるとは思えません。その情報は確かなのでしょうか?」
「おやおやおや、ミルラエルザ殿は随分と人族の肩を持つようだ。ですが貴女も感じたでしょう、あの『天剣山脈』の爆発を」
「まさか……!?」
「そうです、あれはネファリスの魔法なのですよ。ワタシが教えた、取って置きの、ねえ」
「……」
「くふふッ、そういうわけですから魔王様、安心してワタシに王位をお譲りください。ああもちろん、今後も魔王様のお力はあてにさせていただきますよ。ワタシに最も近い場所でそのお力を振るっていただきましょう」
「……ロゼディクス様、それは……っ!?」
「おや? 別に驚くようなことではないでしょうミルラエルザ殿。王位を譲るというのはそういうことですよ? もちろんミルラエルザ殿にも一層の協力をいただきますから覚悟はしておいてください。サキュバスクイーンのお手並み、たっぷりと拝見させていただくつもりですので」
「ロゼディクス卿……戯れはその程度にして欲しい。とにかく、僕との約束は守ってもらう。それだけは……」
「ええ、ええ、それはもちろんです。ワタシは義理堅い男ですからね。魔王様との約束は必ず守りますよ、くふッ、くふふッ」




