07 ターナとの別れ
「マ、マークスチュアートさん……!?」
ネブノーの爆発を見届けてもとの街道へと『転移魔法』で戻ると、青い顔をしたターナが駆け寄ってきた。
「心配はない、ターナ殿。全て終わった」
「終わった……。そ、その、いったいなにが起きたのでしょうか!? それにマークスチュアートさんはなにをしたのですか!?」
「うむ、順を追って説明しよう」
俺はターナを落ち着かせ、近くにあった岩に座らせた。
「まず、先ほどのネブノー殿に起きた現象だが、あれはあらかじめかけられていた、『ソウルバーストボム』という魔法が発動したのだ」
「『ソウルバーストボム』……ですか?」
「そうだ。かけられた者の魔力を暴走させ爆発を引きおこす、極めて悪辣かつ非道な魔法だ」
「魔力を暴走させて……爆発……!?」
目を丸くし、顔をさらに青ざめさせるターナ。若い彼女にはショックな話だろう。
「そうだ。あのままでは我々はもちろん、この周囲一帯が壊滅していただろう。そこで私はネブノーとともに無人の地へと転移し、そこでネブノーの爆発を見届け、そしてまた転移で戻ってきたのだ」
「て、転移……、それって……伝説の『転移魔法』ですか……?」
「そうだ」
「それに、マークスチュアートさんは……さっき『ディスペルオール』も使っていました……よね?」
「うむ。我が配下には『叡智の魔女』エメリウノがいてな。彼女から譲り受けたのだ」
『ディスペルオール』を知っているならエメリウノのことも知っているだろうと思ってそう言ったのだが、果たしてターナは岩から転げ落ちそうになっていた。
「そそ、そんな……。マークスチュアートさんは……もう、神話の世界の住人じゃ……」
「王などやっているが、見ての通りただの人間だ」
「いえいえいえ、そんなこと……ありませんよ!?」
ターナはしばらく俺の顔を凝視していたが、急にハッとした顔になった。
「と、ところで、さっきの『ソウルバーストボム』ですが……誰がネブノーさんにかけたのでしょうか?」
「あの感じでは魔宰相ロゼディクス殿がかけたと見て間違いなかろうな。実は砦で対したネファリス殿も同じであった」
「ネファリスさんも爆発を……。あっ、『千剣山脈』の爆発……」
「そうだ。以前爆発はネファリス殿の魔法だと言ったが、それが真相なのだ。魔宰相ロゼディクス殿は余程非情な策士と見える。魔王殿が彼の申し出を受け入れぬのは正解と言えような」
俺の言葉を聞いたターナは、視線を外して虚空を見つめはじめた。
なにか考え事を始めたようなのだが、「……それじゃ……あの話は……本当のこと……」と、ぶつぶつと独り言を始めた。
そしていきなり立ち上がると、
「も……戻らなくちゃ……!」
と、拳を握りながら、自分に言い聞かせるように声を出した。
「どうした、ターナ殿?」
声をかけると、ターナは決然とした態度で俺に目を向けた。
「す、済みません、急用ができてしまいました……。僕はここで……家に戻らないと……なりません。あの、ジスタリの町は、この街道を……真っすぐ行って、大きな岩がある分かれ道を右に進めば……あと2刻くらいで……着きますので……っ」
「そうか。それだけわかれば十分だ。ターナ殿には世話になったな」
「い、いえ、こんな中途半端な……形でごめんなさい……」
「なんの、ここまで案内いただけただけで十分だ。ターナ殿とは錬金術の話ができて道中飽きることもなかった。そうだ、礼にこれを受け取って欲しい」
俺はマジックバッグからいつもの好感度アップアイテム『エクストラポーション』を取り出すと、ターナに手渡した。
「こ、これは……っ!?」
「私が錬成した『エクストラポーション』だ。『精霊水』を使っているゆえ効果は保証する。研究するのもよいが、いざという時に役立てて欲しい」
彼女とはいろいろ話をしたが、非常に有能な錬金術師かつ魔法使いであるのは間違いなかった。そういう才能が不意の事故などで失われてしまうのは、この後魔族領と講和を結ぶことを考えても看過できない。好感度アップをしておけば俺のところに来てくれるかもしれないし。
「あ、あ、ありがとうございます……! た、大切にいたします……!」
ターナは大きくお辞儀をすると、
「で、では、失礼します……!」
と言って、踵を返して来た道を走って引き返していった。
その後姿を見送ってから、俺は街道を一人で歩き始めた。あと2刻なら日が傾く前にフォルシーナたちと合流できるだろう。
「いや、この感じだと、さっさと魔王城に行ってケリをつけないと面倒なことになりそうだな」
俺はそう思い直して、全力で走り出した。
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