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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第16章 国王マークスチュアート、魔族領を歩く

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06 ネブノーとの戦い

 四至将ネブノーとの戦いにおいて、俺はネブノーが繰り出す独自魔法をすべて退けて見せた。


 3つ目の魔法を凌ぐときに、道案内の女の子ターナを抱き寄せる形となってしまったが、これは不可抗力ということで許してもらうことにする。


一方、すべての魔法を破られたネブノーは、カタカタと全身の骨を震わせていた。


「屈辱屈辱、我ガ魔法ガコウモ容易ク破ラレルトハ!」


「こちらも技を繰り出しているゆえ簡単に破ったわけでもないぞ?」


「黙レ黙レ! コウナレバロゼディクス様ニイタダイタコノ力デ!」


 ネブノーは気になる言葉を叫ぶと、いきなり着ているローブを脱ぎ捨てた。


 不気味なローブなしのネブノーは完全にただのスケルトンで、中ボス感が一気に消える。


 だが次の瞬間、その姿が変化した。なんとスケルトンに肉や皮や眼球や髪の毛が生えてきて、普通の人間に近い姿に変貌したのだ。


 俺はその姿を見て、細い目を見開いてしまった。変身したネブノーの姿は、白い髪、赤い瞳の、少年のような顔立ちの美形魔導師。以前『ソウルバーストボム』によって亡き者にされたインテクルース王国の宮廷魔導師、レギン・レギルに瓜二つだったからだ。


「貴殿は……まさかレギル殿なのか?」


「否、そして否。我はネブノー、ロゼディクス様に使える四至将である」


「元は人間だったということではないのか」


「否、重ねて否。我は生まれついてのアンデッド。この姿はあくまでロゼディクス様にいただいた姿である」


 喋り方が流暢になっているだけでなく、声もレギルにそっくりだ。一体どういうことなのだろうか。


 その答えは、レギルの顔でにやりと笑ったネブノーによって解決された。


「ロゼディクス様のお話では、この世に強い未練を残した、強い魔力を持つ者の姿になるということであった。貴様の知るレギルとやらがそうであったということであろう」


「……なるほど、そういうことか」


 俺は内心ほっと胸をなでおろした。まさかレギルがロゼディクスと関係があったとか、そういう新しい設定をこのタイミングで持って来られても困るのだ。


 俺がふうと溜息を吐いていると、ネブノーはそれをどう勘違いしたのか、「くくく……っ」と笑い始めた。


「察するにこの姿がずいぶんと恐ろしいようだな。だが諦めよ。ロゼディクス様を愚弄した貴様には死あるのみ」


 目玉の付いた杖を大きく振り上げると、ネブノーは高らかに笑いながら魔法を行使した。


刮目かつもく、刮目せよ! これぞ新たなる我が秘奥、『闇星やみぼし饗宴きょうえん』!」


 俺が聞いたことのない魔法名が宣言されると、いきなり周囲が暗くなった。


 頭上に圧を感じて見上げると、なんと上空200メートルくらいのところに、巨大な岩が複数浮いていた。それぞれの直径は10メートルくらいあるだろうか。暗くなったのはその岩の影のせいらしい。


 しかもその岩は表面に黒いオーラをまとっていてかなり殺意の高い見た目をしていた。その岩は数秒間空中に停まっていたが、徐々に加速をしながら落下を開始した。それ自体重力を無視したような動きだが、同じく物理法則完全無視で、なぜか斜めに俺の方へ向かって落ちてくる。


「あ~、これってよくある隕石魔法か」


 つい『俺』の地の言葉が出てしまったが、まあそういうことなのだろう。ゲームだと派手なエフェクトがカッコいい隕石魔法だが、リアルだと意味不明なことこの上ない。


「圧倒圧倒、まさに圧倒的な力! 形も残さす消し飛ぶがよい!」


 ネブノーは相変わらず高笑いをしているが、頭蓋骨を持っていく話を忘れているようだ。


「マママ、マークスチュアートさん……っ、逃げないと……っ!」


 さっきまで赤い顔をしていたターナが、今度は青い顔で叫んできた。まあそりゃ驚くよねこんな魔法。


「ターナ殿、落ちつかれよ。『ディスペルオール』」


 ここでとっておきのチートを披露する。剣先から放射された黒い波動が空に広がっていくと、その波動にかき消されるようにすべての隕石は消え去った。


「……はい?」


 ターナが大きな目をさらに大きくし、口をぽっかり開けて固まる。


 もちろんネブノーも同様に空を見上げたまま凍り付いているが、レギルの姿なので俺としては少し複雑な心境になる。もしレギルの魂がここにいたら、同じ展開を経験させられて気がおかしくなってしまうのではないだろうか。


「不能不能、まさに理解不能! なぜ我の魔法が消えるのか!?」


「私がそうしたからだ、ネブノー」


「ふざけるな、それ以上ふざけるな! そのようなことあるはずがない!」


「ならばもう一度試してみたまえ」


「言わせておけば、言わせておけば!」


 その後ネブノーはさらに2回『闇星の饗宴』を放ったが、どちらも同じ結果に終わった。そして『闇星の饗宴』3発で力尽きたのか、ネブノーはもとのスケルトンの姿に戻って、膝をガクリとついてしまった。


「アリエヌ、アリエヌ、我ガ最奥ガ……」


「これが現実だネブノーよ。さて、では終わりにしてやろう」


 残念ながらネブノーもまた、ネファリスと同じく生かしてはおけない相手である。特に完全にアンデッドであるネブノーは、もともと生者とは相容れない存在だ。


 俺は『シグルドの聖剣』に魔力を込めると、


「さらばだ。『無明冥王……」


 と必殺技の構えを取る。


 だがその時、ネブノーの肋骨の間、本来なら心臓がある辺りから、凄まじい量の魔力がいきなり吹き出した。


「コ、コレハ……ッ!? ロゼディクス様……!?」


 カタカタと口を鳴らすネブノー。


 どうやらネブノーも、ネファリスと同じく『ソウルバーストボム』を仕込まれていたようだ。


 異様な状況にターナが目を見開いて「なにが……起きたの……!?」とうろたえる。


「やはりか。ターナ殿、少し失礼する」


 もちろんこれは予想済みなので、今回は冷静に対応する。


 俺はネブノーとともに『転移魔法』で転移。行き先は、前にレギン・レギルを送り出した『地獄獅子の墓場』と呼ばれる旧戦場跡だ。


 瘴気吹き出す荒れ地の真ん中にネブノーだけを残し、俺は『地獄獅子の墓場』の端へと転移して様子を見守る。


 5秒ほどで、遠くに凄まじい閃光が発生した。それはまるで地上に小さな太陽が生まれたような程の輝きで、遅れて衝撃に近いくらいの爆発音と、そして実際の衝撃波が俺の全身を叩いた。


「魔導師系中ボスの魔力を暴走させての爆発だもんなあ……」


 前世地球にあった戦略兵器なみの爆発に、俺は身震いを抑えきれなかった。ゲームでも『ソウルバーストボム』関係のイベントはトップクラスに胸糞悪いものだったが、リアルではそれにプラスして底知れない恐怖まで感じさせる。


 恐らく、ロゼディクスがネファリス、ネブノー両方にこれを仕込んだのは俺を倒すためだろう。『ソウルバーストボム』の発動にトリガーがあるとして、両方に共通するのは戦いに負けそうになったこと、そして俺が近くにいたことの2点である。もちろんロゼディクスが俺を排除しようとするは当然で、真正面から戦っても勝ち目が薄いのだから策を弄するのは当たり前だ。だがそのやり方として忠誠を誓った部下に『ソウルバーストボム』を使うのはあまりに冷酷を極めている。


 ロゼディクスはもちろんゲームでも野心溢れる非情な魔族として描かれていた。だが、ここまで非道な行いはしていなかった。これもリアルならではの違いだろうが、背後に『鬼』がいることも忘れてはいけない。


 俺はふう、と息を大きく吐き出して、ターナの元へと転移した。

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