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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第14章 国王マークスチュアート、隣国で顔を売る

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07 首相代理リヴィヨン

 ベランゴル民主国の首都で、宮殿に案内された俺たち。


 フェルディナン王から謝罪を受けた後、俺たちはそれぞれ宿泊する部屋に案内された。


 夕食の時間となり、俺とフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザの四人は、フェルディナン王との会食の場に案内された。


 なおメイドのミアールは使用人という立場なので、その場には入れない。


 王家らしく高級な設えの食堂で俺たちを迎えてくれたのは、フェルディナン王ともう一人、男性用の貴族服を着た若い女性だった。


「マークスチュアート国王陛下、こちらは私の孫のリヴィヨンと申します。この度マークスチュアート国王陛下のおかげで牢から出されることができました」


「初めましてマークスチュアート国王陛下。フェルディナンドの孫のリヴィヨン・マルゼルヴェールと申します。陛下のお陰様をもちまして、不当な扱いから脱することができました。感謝申し上げます」


 そう言いながら片手を胸に当てて一礼するリヴィヨン嬢は、ヴァミリオラと同じくらいの年齢の非常な美人であった。


 ただその金の髪は、長めの前髪を片側に寄せてはいるものの、襟足を短くしているという、貴族の女性としては珍しいものである。服装も男性用を着ているところから、もしかしたら彼女は男装の麗人というものなのかもしれない。もっともその体つきは明らかに女性的なので、彼女の性別を間違える者はいないだろう。


 と、それはいいのだが、俺には彼女を救った記憶が全くない。しかも今の話を聞いてなぜかフォルシーナの視線に冷気がこもり始めたので、俺は慌てて言葉を返した。


「済まぬが私にはリヴィヨン殿を助けた記憶はない。それどころか貴公とは初対面であると思うのだが、いったいいかなるいいで私に助けられたなどと言うのであろうか」


「失礼いたしました。実は首相アルバッハによって多くの人間が政治犯として投獄をされていたのですが、陛下がパリヨー将軍にお伝えになった言葉によってすべて解放されたのです。そして私もその投獄された政治犯の一人であったのです」


 その話を聞いて思い出した。


 確かアラムンドがベランゴル民主国の内情を報告してきた時に、首相アルバッハには『リヴィヨン・マイワール』という右腕がいて、アルバッハはそれを排除して投獄したと言っていた。しかも俺自身、そっちに恩を売ろうとか考えていたのである。


「もしや貴公は首相アルバッハの右腕と言われていた人物であろうか。姓は違うようだが」


「ご存じでいらっしゃいましたか。私は早くから王家から離れ、姓を変えて市井に交じっていたのです。アルバッハを盟友と思い、彼を助けてきたのですが……」


「権力の座について変節したか。ままあることですな」


「その通りです。もはや彼はただ保身と蓄財にのみ腐心し、権力を濫用する愚かな独裁者になり果てました。陛下の御威光でそれを正す機会が得られたことを、私は感謝しております」


「それは結構なことだ。隣国の政治が正しく行われることは、こちらにとっても益のあること。私もそれを求めてパリヨー将軍に話をしたのだが、意味があったのなら重畳ちょうじょうと言うよりほかはない」


 俺は首相を下ろさないなら議員全員縛り首だ、と脅しをかけたにすぎないが、それが結局、政治犯――反首相派の解放につながったのだろう。ならばリヴィヨン嬢が俺を恩人とする意味もわからなくはない。


 とりあえず挨拶はそこまでとなり、全員が席について会食が始まった。


 そこで気になったのはテーブルの上に並ぶ料理である。他国の王、しかも戦勝国の王を迎えるにしてはやや質素なものであった。フォルシーナは最初わずかに眉を(ひそ)めていたが、それも仕方ないレベルのものである。


 当然それはフェルディナン王も理解しているらしく、


「不十分なもてなししかできないことをお許しください。事前の準備ができていないこともあるのですが、現在首都の食材が買い占められておりまして、十分な食材が用意できない状態にあるのです」


 とまた頭を下げてきた。


「買い占めというのは穏やかでありませんな。仕手してが誰かはわかっているのですかな」


「首相派と、首相派とつながりが深い商人たちのようです」


「ふむ……。我々は北の開拓地を通ってきたのですが、そちらも食料がなくて酷い様子でしたな。作物もほぼ全滅をしており、しかも中央からなんの助けもないとか」


「それは私の不徳の致すところなのですが……」


 と暗い顔をするフェルディナン王だが、それをリヴィヨン嬢がやんわりと遮った。


「陛下の言葉をすべてアルバッハが握り潰しているのですから仕方ありませんよ。開拓の成果だけかすめ取ろうとして、その開拓民にまで追い出されているような男ですから」


「しかし今のマークスチュアート国王陛下の話では、開拓民はやはり困窮しているのだろう。なにもせぬわけには……」


「陛下が私的に助けようにも、今はその物資すらない状況。まずはアルバッハをどうにかしないと話は進みません」


 う~ん、お飾りの王家とはいえ、ここでこんな話が出てくるくらいだからベランゴル民主国の内情は相当に酷いようだな。まあそもそも半分は俺が引き起こしたような事態でもあるし、もともとこれをなんとかするつもりでベランゴルまでやってきたのである。


「北の開拓地については私の方で多少援助はしておいたので、すぐに飢えることはないでしょう。それよりこの状況では、ベランゴル民主国代表との会談は不可能なのではありませんかな」


「おお、マークスチュアート国王陛下はなんと慈悲深い。感謝の言葉もございませぬ」


 フェルディナン王はそう言ってまた頭を下げた。


 リヴィヨン嬢も同じく礼をしつつ、申し訳なさそうな顔を俺に見せた。


「マークスチュアート国王陛下とは、私が代表者としてお話をさせていただくことになっております。今後速やかにアルバッハを首相の座から下ろしますので、それで何卒なにとぞ海容かいよういただければと考えております」


「なるほど。ではゆくゆくはリヴィヨン殿がこの国の首相におなりになるのかな」


「あくまで暫定的ではありますが、そのように動いております。ただし王家の血族は議員として活動できる年限に限りがありますので、長くはその地位にはいないでしょう。もとよりそれが前提で私が臨時の首相となるのですが」


 彼女はまだ20代半ばに見えるのだが、国王の孫娘ということで当面の神輿にされているということか。一時的とはいえ民主主義の国がお飾りの王家の一員を政治のトップに据えるのはどうかという気もするが、恐らくは議員間で話がまとまらずに、仕方なく誰でも納得できるというギリギリの線でそうなったのだろう。


 さて、明日の会談で賠償の話をするにしても、この様子だとベランゴル民主国が再度まとまるまでにまだしばらくの時間がかかりそうだ。


 しかし北の開拓地に早急に救援を送ってもらうためにも、そして俺やフォルシーナが安心して魔族領へ行けるようになるためにも、この国には早急に安定をしてもう必要がある。


 いざとなったら戦勝国の王というズルい立場(チート)を利用することも考えなければならないが、さて、どんな話になるだろうか。

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