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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第14章 国王マークスチュアート、隣国で顔を売る

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06 ベランゴル民主国 首都到着

 北の開拓地からさらに南下すること3日。


 ようやく街道の先にベランゴル民主国の首都が見えてきた。


 この世界のお約束として城塞都市であるが、その規模は神聖インテクルース第四の都市であるローテローザ公爵領の領都ロザリンデよりやや大きいくらいだ。それがそのまま神聖インテクルース王国とベランゴル民主国の国力の差である。


 旅の途中で通った小さな村の様子や、街道の人の行き来を見る限り、ベランゴル国民の生活そのものは普通に営めているようだ。神聖インテクルース王国に比べれば華やかさは一段以上落ちるが、それは単純にもとからの国力の差なので仕方ない。


「お父様、あと少しで到着ですね」


 馬車に同乗しているフォルシーナが、窓から顔を出して首都を確認し、それから席に座り直してそう言った。


「そうだな。『転移魔法』があるゆえ帰りは一瞬だが、行くまではどうしても時間がかかる」


「あのドラゴンに乗って来られれば早かったかもしれませんね」


「エルゴジーラは誇り高い幻獣の一体だ。さすがに小間使いにするわけにはいかぬ。それにお前とゆっくりと馬車で過ごすのも、これはこれでとても良いものだ」


「それは私もです、お父様」


 赤くなった頬を両手で押さえるのはフォルシーナの好感度アップ動作である。今回の旅でも何度となく見た仕草だが、もと中ボスである俺にとって好感度はいくら稼いでも稼ぎ過ぎということはない。現実は、ゲームと違って好感度に上限などないからな。


 フォルシーナは指の間から俺の方をチラチラと見て、それから姿勢を正すと、今度は少し眉を寄せて不満そうな顔をした。


「しかしお父様、お父様が首都の近くまでいらっしゃったにもかかわらず、ベランゴル民主国で迎えも寄越さないというのはどのような了見なのでしょうか」


「うむ、それは私も少し気になった。先触れは出してあるのだがな」


「もしやお父様を蔑ろにしているということでしょうか。であれば、やはりこの国の代表者たちは皆処罰しなければなりません」


「多分だが、今ベランゴルの政府はそれどころではないのだろう。私が含ませた毒が効いているであろうしな」


 パリヨー将軍が俺の言った通りのこと、すなわち「今の首相を下ろさぬなら議員全員縛り首だ」という言葉をそのまま伝えたなら、政府も議会も荒れに荒れるはずなのだ。ただその毒が効きすぎて、マトモな政府機能すら麻痺してしまっているならそれはそれで大事おおごとではある。しかも北の開拓地の様子を見るとその可能性は高い。


 首都の城門に到着したのは午後の3時ごろだった。


 しかも検問の衛兵がこちらが来ることを認識していなかったようで、入る時に足止めを食ってしまった。


 幸い知名度抜群の聖女オルティアナが、


「こちらは神聖インテクルース王国のマークスチュアート国王陛下です。今すぐ上の方に取り次いでください」


 と言ってくれたので事なきを得た。

 

 衛兵たちは驚いてすぐにその場の責任者に取り次いだのだが、結局政府のお偉いさんがすっとんで来るまで30分くらいかかった。


 ベランゴル民主国の旗がはためく馬車から下りてきたのは、あの宣戦布告に来た高等院議員のソリトン・ワリャール氏と、なんとパリヨー将軍だった。


「大変申し訳ございませんマークスチュアート国王陛下! 連絡の行き違いがあり、陛下到着の期日を誤っておりました!」


 ワリャール氏は完全に土下座の体勢であるが、多分彼は外交の責任者なので仕方ない。この世界の常識から言えば、彼はこの時点で首を斬られても文句は言えない状況である。


 一方同じく土下座をしているパリヨー将軍はいささか気の毒である。彼はこういったことには関係がない役職のはずなのだ。


 なお、ベランゴルの強者である将軍が土下座しているので、周囲は一気に騒然となった。それはそうだ、この国の力の象徴である人間が土下座するというのは、これ以上ない上下関係の表れとなるからだ。


「ふむ。ここまで行政が正しく為されていないということは、ベランゴル民主国政府は相当に大変な状況にあるということかね、ワリャール議員」


「は……ははっ! 恥ずかしながらご賢察の通りでございます。現在行政府が正常に動いていないに等しいのです。我々革新派が首相を交代させよと求めているのですが、首相派が強く抵抗しておりまして……」


「なるほど。ということは、私の言葉は正しく伝えられたということだな、パリヨー将軍」


 水を向けると、パリヨー将軍は恐る恐るといった感じに顔を上げた。パッと見は眠たそうな目をした平凡な青年であるが、魔導師としても将軍としても優れた人間である。


「はい、首相を交代せねば議員の地位どころか命も危ういと伝えてあります。こちらのワリャール議員もそれを伝えることに尽力をしております」


「ふっ。ならば出迎えが遅れたのはむしろ喜ぶべきことなのかもしれんな。違うかな、パリヨー将軍」


「そうお考えいただければありがたく存じます」


 再び頭を下げるパリヨー将軍。しれっとワリャール議員のフォローを入れるあたり抜け目がないが、それくらいの腹芸は当然できる男であろう。


「事情は理解した。貴公らが出迎えに来たということは革新派が私をもてなしてくれるということでよろしいのだな」


「ははっ、もちろんでございます」


 その後、パリヨー将軍とワリャール議員を乗せた馬車の後をついていく形で、俺たちはまず宿泊先へと案内されることになった。


 この時点で聖女オルティアナが乗る馬車は首都の教会へと向かっていった。たださすがに一人というわけにはいかないので、クーラリアとアルファラを護衛につけた。なおアルファラについては、余計な騒ぎにならないようにフードをかぶってもらってエルフとは知られないようにしている。


 一方俺とフォルシーナ、マリアンロッテ、アミュエリザ、ミアールの宿泊先だが、案内されたのは首都の中央付近にある宮殿であった。


 ベランゴル民主国は民主国と名乗っているが、少し前までは王制国家であった。国内で強い民主化運動が起き、時の王が実権を議会に譲ったという形で政治制度があらたまったという経緯がある。ゆえにその王家は形の上では残っていて、俺のような他国の王をもてなすのはその王家の役割となるのである。


 しかし俺たちが着いた時にはまだ宮殿内はバタバタとしていて、俺たちの訪問の日程が正確に伝わっていないことがそこでも見て取れた。


 迎えに出てくれたのは好々爺といった雰囲気のご老体で、彼が現在の王ということになるらしい。彼は俺たちを迎えるや否や頭を下げ、平謝りに謝ってきた。


「この度は大変なご無礼をし申し上げました、マークスチュアート国王陛下。我々の不手際の段、申し開きようもございませぬ。急ぎ手配の上、誠心誠意お迎えをさせていただきますゆえ、どうかごゆるりとお過ごしくださいますようお願い申し上げます」


「頭をお上げになられよ、フェルディナン王。国王自らの謝罪となれば受け入れぬわけにもいきませぬし、此度の落ち度は現政府にこそあるもの。王や王家を責める気持ちはありませぬ」


「感謝いたします、マークスチュアート国王陛下」


 そう言って、顔を上げるフェルディナン王。


 他国の王が「陛下」なんて呼ぶ自体、完全にへりくだっている状態である。しかも自分の倍くらいの年齢のご老体にそんな風に呼ばれたら、さすがに俺も尻の据わりが悪くなってしまう。 

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