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娘に断罪される悪役公爵(37)に転生してました ~悪役ムーブをやめたのになぜか娘が『氷の令嬢』化する件~  作者: 次佐 駆人
第10章 国王マークスチュアート、エルフの里を探訪す

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15 地下遺跡 最奥部

 原作ゲーム通りの展開で入った地下遺跡。


 そこで遭遇したアンデッドモンスター出現というイレギュラーに俺が眉を寄せていると、聖女オルティアナが心配そうに顔を覗き込んできた。いつもの距離感バグで抱き着かんばかりに近づけてくるので、俺は上半身をのけぞらせてしまう。


「陛下、いかがされましたか?」


「う、うむ。なかなか強力なアンデッドが出現すると思ってな。この先気を付けて進まねばと考えていただけだ」 


「アンデッドなら私も力になれます。いつでもおっしゃってください」


「聖女殿の力、頼りにさせてもらおう」


 まあ確かに現聖女と次期聖女が揃っているパーティなので、アンデッドはむしろ飛んで火にいる夏の虫状態ではある。


 悩んでいても仕方がないので先に進むことにする。


 その後はゴーレム系と霊体系のアンデッドが交互にザコとしてでてくるようになったが、基本的にフォルシーナたちが倒していき、彼女らを休ませたいときには俺とヴァミリオラ、オルティアナの大人組が対応した。


 そしてついにダンジョンの最奥部近く、出現したのは『デススペクタープラス』というデススペクターの上位種8体だ。見た目はデススペクターのローブが赤色になっただけだが、ステータスが一回り強力になる。


 直前でフォルシーナたちは『ドラゴンゴーレム』という上位ザコと戦って体力を消耗していたので、大人組で対応する。


「『ホーリーブロウ』!」


 聖なる光をまとった聖女オルティアナ必殺の右拳が、デススペクタープラスの頬にえぐるようにして叩きつけられると、その一撃でデススペクターは錐もみ状態に吹き飛び、そのまま消滅した。


「『インフェルノ』」


 ヴァミリオラの突き出す杖、その先端の水晶がまばゆい光を放ち、デススペクタープラス2体が一瞬にして炎に包まれて消えていく。


「『ライトニングレイン』」


 俺の雷属性魔法によって残り5体も雷に打たれて消滅する。『魔の源泉(チート)』と中ボス専用魔法の組み合わせはあまりに強力で、ザコとはいえAランクのアンデッドをまとめて瞬殺である。


「国王陛下の魔法は素晴らしいですね!」


「これくらいはな」


 適当に返事をして振り返ると、オルティアナが両手を胸の前で合わせ、目を輝かせてこちらを見ていた。


 その横で呆れ顔のヴァミリオラが、溜息をたっぷりと吐き出した。


「まったく、デタラメなまでの魔力と魔法ね。雷属性魔法は使いこなすのが一番難しいと言われているのに」


「貴殿の火魔法も強力ではないか。デススペクタープラスは相当に高位のアンデッドなのだが」


「貴方を見ていると今の自分に満足なんてできないもの。アミュエリザに負けないためにも鍛錬も続けてはいるわ」


「結構なことだ。貴殿も聖女殿もまだまだ成長はするであろう。今回の旅で一層力を得ているであろうしな」


 フォルシーナたちも大人組の戦いを見てまだまだと気合を入れ直しているようだ。彼女らは主人公パーティの代わりとして頑張ってもらわなければならないので、その心意気は大切である。


 俺は彼女らから目を離し、ダンジョンの奥に目を移す。


 目の前にあるのは一面の岩壁、この地下空間の端である。ただ石畳の通りが延びる先には、岩壁にぽっかりと開いた穴があり、その奥から濃い魔力が漂ってくる。その穴の中に強大な『なにか』がいるしるしである。


 マリアンロッテが眉を厳しく寄せながら俺の元に歩いてくる。


「陛下、あの穴の奥から、とてもよこしまな気配を感じます。アンデッドのものと思われますが、今までとは桁が違う強さです」


「うむ、どうやら気をつけねばならぬようだ。アンデッドが相手ならばマリアンロッテ嬢と聖女殿の力が重要になる。頼りにさせてもらおう」


「は、はいっ! 必ず陛下のお役に立ちます」


「お任せください」


 頬を染めて拳を握るマリアンロッテとオルティアナにうなずいてみせてから、俺は皆の方を振り返った。


「恐らくあの穴の奥にこのダンジョンの主がいると思われる。ただどうやらそれとは別のアンデッドの気配もあるようだ。各自常に戦えるようにしておくように」


「はいお父様」


「はい陛下」


「はいよご主人様」


「言われるまでもなく」


 全員の返事を確認し、俺はイベントが待ち構えているはずの穴へと足を踏み出した。




 穴の中は狭い洞窟になっていた。


 その通路自体がすでにイベント出現空間の一部のためか、ザコモンスターの気配は一切ない。


 通路はかなり長く、出口は遠くに明るく見えるのだが、そこまで200メートルくらいはありそうだ。


「お父様、通路の空気が暖かくなっているような気がするのですが」


「そうだな、私もそう感じる」


 フォルシーナの言う通り、通路を進むにつれ奥の光は近づいてくるが、それに比例して周囲の気温が上がっていくのが感じられた。地下に来ているのでもともとは肌寒いくらいであったのだが、今は汗をかいてもおかしくない程度に暖かい。とはいえ、それはゲーム通りなので俺としては驚きはない。


 程なくして出口までたどり着く。出口の近くにはモンスターの気配はなし。


 俺はそのまま出口の外へと出た。


 そこは非常に広い空間になっていた。岩壁に囲まれた地下というロケーションは変わらないが、幅奥行き300メートル、高さ50メートルは超えるであろう空間である。


 しかも驚くことに、その空間の奥がわ半分ほどの地面は溶岩になっていた。白く赤く光る溶けた岩が、わずかにうねりながら流れているのが見える。


 もちろんこんな閉鎖空間に溶岩など流れていたらサウナどころの騒ぎではない暑さのはずだが、不思議とそこまでではない。それはここがやはりここがダンジョンの中だからであろうか。


 そしてその溶岩プールの手前に、犬の姿をした、岩でできたゴーレムが立っていた。大きさはトラくらいはあるだろうか。


 さらに注目すべきは、その犬ゴーレムが口にくわえている弓であった。銀色に輝く、精緻な装飾の施されたその短弓は、間違いなくイベントアイテムにしてエルフの秘宝、『破邪の弓』である。


 気になるのは、その犬ゴーレムが正面ではなく、なぜか向かって左のほうに身体を向けていることなのだが――。


「むっ!? あれこそは我らの秘宝『破邪の弓』。やはりあのモンスターが奪っていったのか!」


 アルファラがいち早く反応して前に出ようとする。しかしそれを、マリアンロッテが鋭く制止した。


「待ってアルファラ、様子が変よ。あそこを見て」


 マリアンロッテが指さすのは犬ゴーレムの左方、まさに犬ゴーレムが鼻先を向けている方向であった。


 見ていると、何もないはずのその空間に、じんわりと浮かび上がってくる人影があった。


 いや、それを人影と呼んでいいのかどうか。


 異様に手足が細く長いその『なにか』は、わずかに地面から浮き上がって存在していた。全身はミイラのように干からびていて、その骸骨一歩手前の頭部には、炯々《けいけい》と赤く光る四つの目と、額から天に伸びる二本の赤くねじくれたツノがある。


 その姿は半透明であり、霊体系モンスターの特徴を備えていることがわかる。見るからに高位の霊体系アンデッドモンスター。そして俺はもちろんその姿に強烈な見覚えがあった。


「これほど邪な気配を持ったモンスターがいるなんて……。陛下、あの奇妙なアンデッドは危険だと思います」


 マリアンロッテがやや青ざめた顔を俺に向けてくる。その向こうでは聖女オルティアナも同じ様子でアンデッドモンスターを睨んでいる。


 もちろんフォルシーナたちもその異様な気配を感じてか、それぞれの武器を自然に構えてしまっていた。


「……お父様、これはどのような状況なのでしょうか?」


「雰囲気からするとあの2体は対立しているようだ。そして私の記憶が正しければ、犬の姿をしたゴーレムはイヴリシアと同じ精霊だろう。確か地の精霊があのような姿をしていたはずだ」


「精霊様……ですか?」


「そういえばイヴリシア様がおっしゃっていました。地の精霊様は地下にいらっしゃって、その姿は獣の姿をしていると」


 と答えたのはマリアンロッテだ。彼女は水の精霊イヴリシアと仲が良く、他の精霊の話を聞いたとも言っていた。


 その話を聞いて、フォルシーナがなにかに気づいたようにハッとしてこちらの顔を向けた。


「それではその精霊様に対するあのアンデッドは、まさか……」


「そうだ。イヴリシアを狙っていたアンデッドと同じだろう。あるいはあの者がアンデッドを使役していた張本人なのかもしれぬ」


 と少しボカして言ったが、俺はあの奇妙なアンデッドがまさにその張本人であることを知っている。ただあれは本体ではなく、本体から分離した霊体であるはずだが。

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