4章幕間5 守る力
レオーネ
「魔核発生の可能性あり…か、魔物出没の報も多いし一体何が起こっていると言うのだ」
冒険者ギルドから届いた報せは一度魔核の脅威を味わった身として聞き流せるものではなかった。
魔物の対処は軍でも当然行っており、毎回これで最後だろうか? という疑問を抱きつつも任務をこなしている。
だが…魔核が再度発生したとなればどれだけ魔物を退治したとしてもあまり大きな意味を持たないはずだ。
大元となる魔核を封印、もしくはミルス村と同様の処理を行わなければまたあの時と同じような惨劇が起こってしまうだろう。
……そもそもミルス村での対処は本当に正しかったのか? 確かに魔核自体は消滅したがこの魔物出没はあれが原因だったりしないか?
魔物が頻出する現状についそんな事を考えてしまうがもちろんただの憶測でしかない。
封印すれば消え去るという訳ではないし、可能性は低いだろうがあの魔核が通常とは異なるモノだったという事もありえる。
もし魔核が発生していたら今度は『真実の木』による封印処理をする事になるのだろうが…。
「どうしたレオーネ、やけに難しい顔をしているじゃないか?」
「あっ! た、隊長!」
資料に集中していた為かすぐ近くまで来ていたガーネリフ隊長に気付かなかった。
「お前もいい歳なんだ、そんな顔をしていたら男が逃げていくぞ」
「ぐっ、これでも一応気にしているのですからそういう事は言わないでください」
「ははっ、すまんすまん」
軽口を叩きつつ私の正面の席に腰をおろす隊長。
その表情は一見すると笑っているようにも見えるのだが…。
そうだ、私よりも隊長の方がよほど心を痛めているはずだ。
内心の不安や悩みを隠しきれないのだろう。
普段から少し怖い顔をしているというのに今の表情は子供が見たらトラウマになりそうな程に険しいものだ。
「隊長…あまり無理は…」
「…そうもいかんだろう。
先日の騒ぎでまたあいつ、ララが解決に一役買ったらしい。
私たちの不手際を民間人に解決してもらうなど不甲斐ないにも程がある」
「それは…」
その報告は私も受けている。
目下最大の問題であるコビを含む数名の行方不明者…その1人と思われる遺体が発見された事件。
同時に小型魔導兵器の残骸と起爆前の大型魔導兵器の一部が回収出来たのだがその大型魔導兵器の起爆を止めたのがあいつだと言うのだ。
感謝はしている、まったく進展のなかった捜査が一気に動き出したのだ。
死者が出たことは悔やまれるが魔導兵器の回収に目撃者も多い謎の黒い生き物、捜査の足掛かりとなるだろう情報を多数入手できた。
…だが、やはり危ないことに首を突っ込むのは褒められたことではないと思う。
我々の主な任務はもちろん民間人を守る事なのだが守られる側が自ら危険に近づくのであればそれは難しくなる。
命を懸けてまでそんな奴を助けてやる必要はないという意見もあるし守られる側にも命を守る努力をして欲しく思う。
「…隊長、それでも私たちは、我々は街を守るのに必要な力です。
今はまだ動けませんが必ずその時はきます!」
脅威に対し後手に回ってしまうのは軍に限らず大規模な組織の性質とも言える。
どれだけ情報収集に力を入れようともそれが伝わるまでには時間が掛かるし大人数を動かすとなると準備も少々ではない。
それが遅れとなり先手を取れない事がほとんどなのだ…が、
「ふっ、言われるまでもない。
我々は街を守る力だ、例えコビの奴が敵だったとしても躊躇いはしないし遠慮してやる気もない。
このレオンリバーを害そうと言うのであれば完膚なきまで叩きのめしてやるだけだ」
その組織が動いた時の力は強大だ。
数の暴力という言葉があるがまさにその通り。
1000を超える兵は100や200程度の野盗であれば飲み込む程であり、魔物という脅威に対しても引けを取らない強大な力を持っている。
その力は扱いさえ間違えなければ必ずや街を守る要となるはずだ。




