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4章幕間2 開発 1回目

 んー、これはもうちょっと出力を上げられそうだな。



 時刻はもう深夜と呼べる時間になっているが僕は未だに作業をしている。



 つい先ほどまではピッセルさんも一緒だった。

 頑張り屋な彼女は毎日欠かすことなく魔導技術に勉強に励んでおり今日も仕事の後で疲れているだろうに遅い時間まで頑張っていた。

 しかし、本人のやる気に水を差すようで悪いがいつも程々の所で止めるように指示を出している。

 彼女がいくら頑張り屋だと言っても魔力が尽きてしまえば意識を保てなくなるし、そんなぎりぎりの状態では身に付くものも付かなくなるので限界を迎える前に休んで貰うようにしているのだ。



 そして1人になった僕は自分の作業を再開する。

 いま僕が作っているのは雷石を使った魔道具…まあ魔導武具と言えるだろう小型のナイフの様な代物だ。

 刀身の根本の部分、柄の内部に核と回路を仕込んであり、魔力を通す事によって刀身部分に電気が流れるようになっている。

 刀身はブラックさんの工房を借りて作った物で雷石はシアさんの治療の時に使った物のお返しとしてレノンさんから渡された物だ。


 用途としては護身具のような使い方を想定している。


 短い物なので武器を持った相手にはあまり有効と言えないし、相手の体に直接当てないと効果が薄いので一般人ならまだしも冒険者や軍人等を相手にしたら簡単に弾かれてしまうだろう。

 だが油断している相手、こちらが弱者だと侮っているような手合いであれば十分に有効な攻撃手段となるし、軽くて扱いやすい物なので僕が扱う武器としてはこれくらいが最適のはずだ。



 何故僕がこんな物を作っているのかと疑問に思われるかもしれないがそれについては大した理由ではない。

 先日の事もあるしルプラさんとの件もそうなのだが、想定外の事が起こった時に何も出来ない自分をどうにかするべく僕の得意分野で色々とやってみようと思ったのだ。

 一応並行して体を鍛えたりもしているのだが、僕が少し頑張った程度では少し体格が良いだけの人にも勝てないのでメインはやはりこちらになるだろう。



 作った魔道具はこれで10個目くらいになった。

武器以外にもいくつか思い付いた物を作ってみたのだが使い道があるかは…正直分からない所だ。


 だが、きっと無意味ではないと思う。

 何かの役に立つかもしれないし窮地を脱する切り札になってくれる可能性だって無くはない。


 このナイフだってそうだ。

 これを持って正面から突っ込んだ所で返り討ちにあうのは目に見えているが、相手の背後や隙を付けば僕でも有効な攻撃手段となる。


 要は使い方次第なのだ。

 その為にももっと色々な物を作ってみようと思う。

 その手段の幅が、引き出しの多さが、きっと僕の力になってくれるから。

 



 ―――――――――――――――――――――――




 こんな感じで良いかな。


 動作の確認をしながら雷石ナイフの回路を修正していたのだがようやく想定していた出力まで上げる事が出来た。

 さらなる改良の余地はあるのだが現時点では時間的な余裕がないし掛かる費用を捻出する事も出来ないのでこれで完成品とする事にしておいた。


 続きは余裕が出来たらだな…さてと、


 平時なら休む時間になったのだが、雷石ナイフを棚にしまった僕はベッドには向かわず部屋の隅に置いてある木箱を引っ張りだした。

 その中には回路用の木板が多数敷き詰められておりその半分くらいには同じ型の回路が刻まれている。

 残りの半分はまだ手が加えられておらず現時点ではただの木板なのだが、その中の1枚を取り出して同じ回路を刻んでいく作業を開始した。


 1箱の中身は全部で100枚なので残り50枚。

 このうち10枚に同じ回路を刻むのがこれからやる作業になるのだが…。


 難しくはないけど…やっぱり疲れるなこれ。


 回路を刻む為にはにはどうしても魔力を消耗するのだが、これだけの数をこなそうと思ったら無駄な消耗は抑えていかないといけない。

 その為には工具に流す魔力を絞ったりも大事なのだが何よりもミスをしない事が求められる。

 ミスをしたらそれ自体が無駄な消耗になるし修正をするためさらに消耗が増えるからだ。


 これが思ったよりもきつかった。

 難しい回路ではないのだが、単純で単調な回路を何回も刻んでいく作業はどうしても眠気を誘う。

 そのせいもあって50個を仕上げるまでにも数回ミスを出しており修正作業をする羽目になっていた。



 ん、1つ目完成っと。



 この仕事は職人ギルドから紹介されたものだ。


 この回路はレオンリバー内の街灯に使う物なのだが、まだまだ発展途上のレオンリバーには街灯の灯っていない地区も多くすでに設置がなされている場所の物も定期的に交換されている。

 その為、通常の依頼とは別枠で受けられる仕事として多くの魔工技師が暇を見つけてはこなしているものだと聞いた。


 ただ報酬はあまり良いものではない。

 初心者からベテランまで幅広い人がこなせる仕事として重宝されているが要は内職のようなものだからだ。

 1箱100枚の回路をこなしてようやく銀貨3枚となるのだが、空いた時間や睡眠時間を削って進めても1日で作れる数はせいぜい10枚程度。

 ひと月だと300枚で銀貨9枚となるが…正直労力に見合った報酬とは言えないと思う。



 まあそれでもやるしかないんだけどね…2個目完成っと。



 ならばなぜこの仕事を受けたのかだが…。


 2個目の回路を箱に収め3個目の木板を取り出した僕は、確認の為引き出しに入れておいた1枚の用紙を取り出した。

 それは契約書の様なものであり、購入した商品とその代金、支払方法等が明記されたものだ。


 金貨10枚か…やっぱり高すぎる買い物だったな。


 先日購入した物…と言っても前金を支払っただけなのだが、それの支払いの為にどうしてもお金が必要になったからだ。



 職人ギルドを通してローンを組んだのだが月の支払いは最低でも金貨1枚。

 事情を鑑みて通常の依頼を1件多く受けられるように取り計らって貰えたがそれだけでは当然金貨1枚には足りなかった。

 そこで紹介されたのがこの仕事。

 1件分の依頼と合わせれば金貨1枚に届くので他に手段の無い僕はこれに縋るしかなかったのだ。



 まあ今回だけだしな…よし、続きをやるか!



 契約書を引き出しにしまい3つ目の回路を刻み始める。


 少々高すぎる買い物だったが購入した事は後悔していない。

 これだけ高価な物を買うのは今回限りだろうし、前金を除けば半年くらいの頑張りで支払いは終わるはずだ。


 それに…もしかしたらこれが最後になるかもしれないなと考えると、少しの寂しさを感じつつも頑張ろうという気も出て来るのだった。

今日はもう1つ投稿します。

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